僕と彼女の滅亡計画
酒を呑み、猫を撫でながら思うのは、なんとも上手くいかないこの人生と世界のことだ。
給料は上がらない。女性との縁もない。猫はかわいい。思わず呟いていた。
「いっそ世界を滅ぼす力か、彼女が欲しい」
膝の上の猫は神妙な顔をしている。「何を言っているんだ」と思っているのだろう。仮に言葉を理解できたとしても「何を言っているんだ」という顔をしている。
まあ、願うくらいでは何も変わらない。神様なんていないのだから。
ピンポーン
夜8時。こんな夜中に呼び鈴が鳴る。どこの誰だ。
ピンポーン ピンポーン
流石に連打されては近所迷惑だ。ろくな相手ではないだろう。酒はまだ一缶目。判断が鈍ることはない。勧誘なら即お帰り願おう。神様なんていない。ドア越しに声をかける。
「誰?」
「神様だよ」
よし、警察を呼ぼう。
「世界を滅ぼす力か、かわいい彼女をやろう」
「かわいい彼女で」
判断は鈍ってない。ちょっと酔っているだけだ。
「正直者め。では両方だ」
【つづく】