~ある小説家崩れの日記より~

近頃、とある小説大賞が話題だ。
なんでも、長編小説の冒頭400文字を応募するのだという。
面白い。
400字。ツイート三回分といったところか。常日頃ツイッターに没頭していればたいした数字では内容にも思える。
されど400字。しかもその文字数で書くのは「長編小説の冒頭」。言い換えれば、話のツカミということだろう。
これは難題だ。
物語の冒頭とは、大げさに言えばその物語の全てを決めると言っても良い。それをわずか400字でだ。その中で、物語の方向性だとか登場人物だとかの説明を無理なく詰め込まないとならない。
しかも「続きを読みたくなるような」冒頭だ。
企画した野郎は無論サディストだろう。
それでも一種の物書きとしてはまたとない魅力的な案件だ。
腕試しだな。おう、やってやろうじゃないか。
早速つけっぱなしのパソコンを睨みキーボードに指を置く。賞品のコロナは俺のものだ。

…翌日。
…案の定なにも出ない。どうする。

【続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?