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Rats desert a sinking ship.      小さきものの声に耳を澄まさないと、 警鐘を聞き逃すことになる。


都市農村問題を考えるとき、おのずと「レジリエンス」という概念が浮かびます。

一般的には「しなやかな強さ、回復する力、復元力」などと訳されます。

つまり、災害が起きるのは避けられない、だけどそこから立ち直る力、という意味を含みます。

政府はこれを「国土強靭化(ナショナルレジリエンス)」と名付けて、基本計画を策定しました。

とっても優れたことが書かれてあるのですが、
なにかちょっと現実味に欠ける。
農林業をはじめ第1次産業の役割がほとんど盛り込まれていないのである。おもに国土交通省の事業として考えられています。

国土を守るのは、国土交通省じゃないんです。
その地域、その地域で、営みが続くことが、最大の防御なんですよね。

国境付近の離島で漁業が営まれるのが、最もわかりやすい事例です。
漁船が、その海域を往来することが、いろんな抑止力になるのです。
「人目がある」という「見張り」です。
この境界ぜんぶに堤防を張り巡らすことはできません。
また巡視艇ですべてを網羅することもできません。

離島の漁業は最大の防衛力です。
同じように、いま、過疎の農山村の水源が外国資本に売られています。
これから人口爆発の地球上でもっとも不足が予想されるのは「水」「水源」なんですね。

命の、食料の、すべてをつくる源です。

中山間地の農業は、大型機械も入れないし、維持が困難、価値がないと見捨てられていく一方で、
外国資本が、豊かな日本の水資源を狙っているのです。
別荘建設や、太陽光発電や、
いろんなたくみな方法で忍び寄っています。

昨日のテレビ、ケンミンショー最高におもしろかったー。
農村にスーツ姿の男が歩いていたら、怪しいと思え。危険な人物だ。
と、全国の農村、あちこちの村民が共通して恐れている。

なぜですかとの問いに、
「太陽光発電のセールスに来る人だから」と答えた、農家のじいちゃん。

スタジオは爆笑して関していたけれど、
これ、ものすごい日本の真実を表していました。

業者が大枚をちらつかせて、農山村の奥地に入ってきているのです。


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どんなに条件不利地といわれようとも、そこできっちり田植えがされ、
農家が見回りをし、野菜でも畜産でも、
農産物を作る営みが続くことが、最大の「抑止力」です。
中山間地で農業をつづける意義は、食料生産だけではありません。
ほんとうの意味で、日本列島という国土の生命線を守っているのです。

いま、人間のウィルスで脅かされているけれども、
ほんの数か月前までは、「豚コレラ(CSF)」という伝染病が(海外から持ち込まれ)、日本中の里山のイノシシに感染し、
養豚農家の農場にも伝染し、何万頭もの豚が殺処分されてました。
国も大きな予算を投資してイノシシにワクチンをまく取り組みが農村で進んでいました。一般のニュースではまず取り上げられませんが。

警告は始まっていたのです。
農山村から。
動物の世界ではすでに見えないウィルスが侵入していたのです。

Rats desert a sinking ship.

小さきものの声に耳を澄まさないと、警鐘を聞き逃すことになる。

今年の年頭に、都市と農村のあり方を占うコラムを書きました。

強い農村とは何か。
国は地方創生戦略における東京一極集中の是正策として、関係人口を掲げている。
若者の田園回帰や定年帰農は、“ふるさと難民”とも称されるが、そもそも、なぜ人は「ふるさと」を求めるのか。
都市には多様な主体の受け皿、居場所がないからである。
農に潜在する力には「包摂」がある。
都市と農の補完関係を考えると、農村だけ、都市だけの繁栄はあり得ない。

都市という子を生んだのが農村であるならば、子の帰る場所として、親は元気に長生きするしかない。
自立できない子に、白いご飯と味噌汁、畳や布団で迎える。
そんな「懐」であり続ければ、子は学んだ技術を、開発したロボットを、
外国の友達を、あらゆる主体と成果を親元へ持ち帰るだろう。
都市と農村は家族なのだ。

国連のSDGs(持続可能な開発目標)の17番目は、
「パートナーシップで目標を達成する」である。
気候変動による災害対策においても、多様で分散した生産や、
小さな拠点が求められるが、これはJA、共同組合にしか担えない。

2020東京五輪ホストタウンとして、150以上の国と地域の人々をもてなす自治体は460を超える。
すでに460通りの心の外交が地方から始まっているのだ。
こうしたローカルな友好関係こそ、国にレジリエンス(負けない強さ)をもたらす。


1月1日付、日本農業新聞でした。

そのときはまだ、2020年、東京オリンピック・パラリンピックが開催されると信じて疑わなかったわけですが、その一方で、

それを支える地方(農山漁村)は、この1年でどうなっていくのか。
あるいはどのように、持続していくべきかを考えていました。

強い農村とはなにか。
日本じゅうの農村歩きをしていると、東京にいるだけではわからないことが見えてきます。
「都市農村交流」、「都市と農村問題」といっているうちは、その両者は分断されている。
都市と農村は、じつは、同じ根っこでつながっている。
NHKの朝ドラ「ひよっこ」は、都市の一極集中と今の人口問題が根底にある、と思ってわたしは見ていました。
「都市という子を生み出したのは農村」であり、農村は子どもの「帰る場所」である。

そういえば去年はどれぐらい全国を訪ね歩いたのか、調べてみました。
暇なので~。

北海道から鹿児島まで
出張90日
28都道県
80市町村(およそ)と1カ国(米・NY)

一番多かった県は、
福島 9日(会津、飯舘村ツアー、新白河の家畜改良センター)
静岡 8日(県のむらづくり調査と季刊誌むらのおと取材、講演など)
青森 6日(飼料米の牧場でストーブ列車!農福連携ほか講演会)
兵庫 5日(講演会や取材、食のシンポジウムなど)
北海道 5日(放牧の取材で清水町、足寄町、広尾町ほか放牧酪農)
熊本 4日(酪農科学会の参加と、熊本牧場の監事監査など)
香川 3日(まんのう町で水源の里シンポジウム)
岡山3
東京(八丈)3
岩手2
新潟2
山形2
宮城2
長野2
群馬2
茨城2
埼玉2
愛知2
奈良2
和歌山2
鳥取2
愛媛2
福岡2
大分2
宮崎2
ほか
2019年を振り返って気づくのは、地方の仕事に加えて、学会や学術の場への参加が相次いだこと。
JICAで農村国際貢献のシンポジウム(5月)
国連大学で生物多様性シンポジウム(5月)
酪農科学会 (8月)
棚田学会  (8月、12月)(学会会員)
日本学術会議で水産シンポジウム(12月)
世界の国連をはじめまさかこんなアカデミックな場で、発言の機会が巡ってくるとは想像していなかったので意外でありおもしろいなと思った。

いずれも声をかけてくださったのは、友人知人である。
仕事も、人生も、結局は、友達の影響が大きいと思った。

また19年の特徴として、千葉で予定されていた講演が2件、台風被害で
中止・キャンセルになった。
ちなみに、18年も台風による講演中止(神戸)は1件。

自然災害とどうつきあうか。
わたし自身の仕事の仕方にも関わる。
というわけで、2020年、じぶんはどんな1年を過ごしたいのか。
友達を大切にすること。
多様な発信の場を持つこと。

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