見出し画像

人にも牛にも環境にもよいヘルシーな食、「喜ばれる」食料生産を広めるには

先日「自然放牧」の番組を見て、感じたことを書き出したら、長くなり過ぎて読みづらくなったので、解説をここに分けました。


自然放牧、林間放牧とは



自然放牧、林間放牧という牛の飼い方がある。
一般的な放牧が、草地の管理をより綿密に行うことに対し、草地もあれば森もある場所に牛を放つため、より粗放的な飼い方だと筆者は考える。

アグロフォレストリーという、
いま世界で注目されている農業と林業を合わせた方法と共通している。

牛舎は不要、牧草を食べてくれれば飼料を買わずに済む。(低コスト、地域資源循環)
牛舎の掃除も要らない、牛を飼うと大量に出る「糞の始末」が環境問題にもなるのだが、
広い土地に牛を放てば、糞は分解されて土に還り、そこにまた牧草が生えて、牛が食べるので、一石何鳥もメリットがある。

アニマルウェルフェアとは?


牛が自由に歩き回ったり、自分の意思で草を食べたり休んだり行動できる飼い方を、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理(家畜の快適性に配慮した飼養管理)と呼びます。

「アニマルウェルフェア」(家畜福祉)を簡単に説明すると、
牛・豚・鶏など、いずれは畜産物として食料にするための動物(=家畜)であっても、
生きている(飼われている)間は、苦しまずに快適にその動物らしく過ごさせる飼い方(飼養管理)を示すものです。

具体的には、

「水やエサに不自由することなく、健康で、快適な環境下で過ごし、
その動物に本来備わっている生態(動物特有の行動)が発揮できる状態」を
重視しています。

(OIE(国際獣疫事務局)により定義)。

日本国内よりも肉食文化の盛んな欧米で広まっている考えで、このお肉はどういう飼い方で育ったかを問うものです。

放牧の意義や理由は何か


ここでいう(牛の)放牧というのは、牛を飼う農法の一種である。
大別すると、舎飼い(牛舎で飼うこと)と放牧(まきばに放つ)の2つに分かれる。
農水省や農業関係の説明では、
両方ともぞれそれメリットどデメリットがあるという書き方が多く、
日本で放牧が少ないのは、土地が狭いため、という理由が圧倒的に多い。

でも、本当にそうなのでしょうか。
日本中、耕作放棄地が増えていて、農地が荒廃している風景を見かける。
人の力ではもう管理できずに放置されている。米を作っても高く売れないのに、労力ばかりかかるとペイできないと離農してしまうことが多い。
ならば、、、

人間で耕せないなら、牛で耕してもらうことはできないか。


というのが、放牧を進めたいと思うシンプルな意見だ。

放牧のメリットは、 農業にも環境にも人にも、ある。
家畜(動物)にも、経済(生産者)にも、食料生産(国全体)にも有効である。
牛乳が余って困っている酪農業界にも、(放牧(牧草主体)は購入した飼料を与える飼い方よりも乳量が少ない=全体の乳量が抑えられる)
肉牛が高値で売れなくて困っている畜産農家にも、
飼料代が高騰し過ぎて経営難に陥っている畜産業界全体にも(放牧は自分の放牧地で牧草を育てるからあまり購入飼料が少ない)
メリットが多いと考えているのだが、
どうやら国の農業政策を見ていると、「農業の近代化」ばかりに力を入れ、
小規模農業や、放牧、家族経営、小さな地域内の資源循環を増やそうと言う動きが感じられない。

スマート農業や大型化、無人化で農業ができる仕組みを推進した挙句、本当に農村に人がいなくなったらどうなるのだろう。


クマやイノシシ、シカが走り回る地域を選ぶか、草原に牛が放たれている風景を選ぶか。


今よりもっと鳥獣害が横行し、人間以外の生き物の楽園になり、土地は、国土は荒廃するのは時間の問題だ。

にも関わらず、国内では、土地が狭いことを理由に、放牧は増やせないという論調が大半を占めている。

すべての畜産農家を放牧にする必要はまったくない。
8割は今のままの牛舎飼いでもよいので、いま1割に満たない放牧を、2割にすることから始めることはできないか。
わたしはそう考えている。
酪農(搾乳)と肉牛生産は、同じ牛の農家でも大きく異なるが、両方あわせても、いま放牧を取り入れているのは、1割もいないのが現状。

「喜ばれる」農業を増やすためには


結論。
放牧に代表される、土地の資源を活かした環境にも健康にもいい農業。
もっと増えればいいのにと思うけれど、
農業サイドから理想を言っても、物事は動かせない。
ならば、突破口はどこか??


よく、マーケットインって言いますね。
生産という川上から考えるのではなく、消費という出口から考える。
消費者とは、つまり視聴者である。
自然放牧(を肯定的に紹介)を取りあげる番組が地上波で放送され、
タレントや、有名な文化人が、こういう牛の飼い方いいよね、
家族の暮らし、いいね、こういうお肉食べてみたい~、とコメントして、
肯定することから、農業農村問題の改革を始めるしか、ないのかもしれないなと思った。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?