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②払ったお金と費用は違う?

「財務会計知識を高めよう!よし、簿記を勉強しよう!」と思い本を開くと全く面白くない仕訳が延々と続き興味・関心・意欲がゼロに。そんな人って多い気がします。この勉強って何の役に立つんや!と感じるような部分を全て吹っ飛ばし、「最低限」知って損はしない入り口レベルの知識を共有します。

#2 払ったお金と費用は違う? ~資産計上と減価償却~

社会人になり、「資産計上」「減価償却」「CAPEX/OPEX」という言葉が聞こえてきて思考停止した経験はないでしょうか?私が社会人1年目の時はCAPEXは初期費用でOPEXは月額費用のこと?のような曖昧な理解をしてしまいました。今回は減価償却について書いていきます。

減価償却とは?

建物や機械設備、車両などの長期間にわたり使用し、かつ時の経過とともに劣化するような資産を購入した場合、購入した年度に一括で費用として扱うのではなく、毎年一定額や一定割合で分割して費用計上する方法を取ります。これを減価償却と呼び、毎年減価償却した分の経費となる金額を減価償却費と呼びます。時の経過とともに劣化という条件があるため、建物や車両は減価償却の対象となりますが、劣化しないと考えられる土地は減価償却の対象とはなりません。

減価償却を行う理由

会計の原則として、「費用収益対応の原則」という考え方があります。これは、企業の業績を正しくとらえるために、「費用」と「収益」はそれぞれが深く関わりあっていなければならないというものです。例えば荷物を配送する物流事業を行っており、新しくトラックを500万円で購入する場合を考えます。トラックを5年使うことが出来るとすると、今後5年間の物流事業の売上はこのトラックがあることで生むことが出来る収益です。減価償却という考えがない場合、トラックを購入した年度に費用が500万円計上されて大赤字、翌年度以降はトラック代金の費用がかからないため黒字のように見えてしまい、会社の業績が昨年度と比べて伸びているのか落ちているのか正しく判断することが出来ません。そこで、トラックを使う5年間で500万円を分割し毎年100万円を費用として計上することで、正しく企業の業績を見ることが出来るようになります。

減価償却の計算方法

毎年費用計上する減価償却金額の計算方法は、以下の通り表されます。

減価償却費 =取得原価 ÷  耐用年数

取得原価とはその資産を取得した金額、耐用年数はその資産の材質・構造・用途・使用環境などを考慮した上で経済的に使用可能と見なせる年数のような考え方です。耐用年数は、例えばトラックであれば5年、鉄筋コンクリート造りの建物は47年といったように、その資産ごとに法律で細かく定められてます。また、毎年同じ金額を減価償却費として計上する「定額法」、前年までの計上済減価償却費を除いた未償却残高に一定割合を掛けて計上する「定率法」等の方法があり、上記の式は定額法を表しています。このあたりは、経理部門の人がきっちりやってくれるため、普通のサラリーマンは概念だけ理解しておけば問題ないです。

減価償却費のメリット

企業の目線で言うと、少しでも利益を多く見せ投資家や債権者にいい数字を見せたいという想いがある一方で、少しでも支払う税金を少なくしたいという想いもあります。減価償却費を費用として毎年計上することにより、数年間にわたって費用が多くなり、すなわち利益を抑えることができ、法人税の節約につながります。1980年代にアメリカに誕生したレーガン政権は大幅な減税政策を行ったことで有名ですが、企業に対する減税政策として「減価償却期間の短縮」を行いました。減価償却期間が短くなると、取得原価を短い年数で割るため1年あたりに計上する減価償却費が大きくなり、結果として利益が小さくなる、すなわち支払う法人税が少なくなり減税となる、ということです。第一次安倍政権でも減価償却費を大きくする、似たような政策が行われています。

数字で語るために

減価償却費は現金の流出を伴わない費用です。別の回で説明する、損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の差が生まれる大きな要因の一つであり、また「赤字なのに潰れない」会社が存在する理由の一つでもあります。今既に行っている事業、これから始めようと思っている新規事業どちらの話をする場合も、減価償却の考えを理解することで、損益計算書上でどのような結果か、キャッシュ・フロー上でどのような結果かを、「数字で語る」ことが出来るようになります。 


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