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大寒の大根

「籐の籠」を左腕に引っ掛けて歩く、夕ご飯の買い出しだ「大寒」の日の暮れるのは早い
いつもよりちょいと早めにお出かけだ
市場について左並びの豆腐屋で「厚揚げにガンモ」そして隣のネリもん屋で「ゴボ天とヒラ天とちくわ」あっそうそう「コンニャク」も忘れちゃいけない、スーと奥に目をやると「八百屋でダミ声の銀次」がこちらに目配せしながら唸るように「奥さーん!大根が安いよ〜!今日は特別だよ!」って店に誘導してきた。誘われるまま「じゃ大根ちょーだい」「愛よ〜!100万円のお預かり〜はい50万円のお釣りね〜」銀次はゴムで吊るされた籠をジャリジャラ鳴らしながらダミ声をかぶせるようにいった「毎度おおきに〜」大きく2回うなずく様なそぶりをして口をモゴモゴさせながら大根を新聞紙に包んで籠に入れた、絹代はそそくさと市場を後にした、西に向かって歩くと夕陽が眩しく、目を細めながら空いた右手をかざして日を遮りながら歩いた、さぁ支度支度「そうよおでんよ」いつものように"鯨のお出汁と真昆布鰹節みりんしょうゆ"で「絹代特製おでん」の出来上がり「大根さん、よー染みてはるわよ」と独り言を言った、そして割烹着をちょいと腕まくりしてアルミのチロリに2合「菊正宗」を入れた。一升瓶の蓋をポンと手の平で納めておでんを器にもってる間に「熱燗の出来上がり」コップに湯気を立てながら注ぐ、無理して買った黒檀の仏前に「特製おでんと熱めにつけたコップ酒」を置いた、絹代は線香に火をつけ簡略化した般若心経を唱えた「ぎゃてい、ぎゃてい、はらぎゃてい、はらそうぎゃてい、ぼじそわかはんにゃしんぎょう〜」そう今日は"染み染み大根でいっぱいやるのが大好きだった「竜二」の命日"だ「あんたぁ"幼馴染の銀次さん"も覚えててくれたわよ!大根を籠に入れる時小さな声で"やつに宜しく"と言ったのよ!私泣き崩れそうになってその場に長く居られなくてそそくさと帰ってきたのよ」と絹代は涙声で呟いた。そして「あっ」と大声をあげた!ごめんなさい「カラシ買うの忘れちゃったわ」〜終わり


〜短編小説「大寒の大根」〜全ての登場人物はフィクションです。"ミスターポチ著"おおきに〜😎✨

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