システムコーチング_A社事例
<実施概要>
・3ヶ月間の間に計3回(1日/3時間/3時間)のセッションを実施
・担当コーチ:西中孝幸・大橋徹
【企業概要】
事業内容:HR領域
創業:10年以上
組織規模:約10名
ーシステムコーチングを受けようと思われた理由や経緯について教えて下さい。
西中さんにシステムコーチングのセッションを打診頂いたのは、ちょうど2023年の夏頃でした。ちょうどその頃、私達の会社は幹部メンバーが3名退職し、業績もそれまで4期連続で黒字を記録していたところからの急落、数ヶ月連続の赤字という状態でした。創業からの歩みを考えても今までの経験則が全く通用しない状態で、私もスタッフも先行きに不安を抱えていました。
とはいえ、立ち止まってはいられません。そんな状況だからこそ、組織体制を今一度見直す機会と捉え、社内合宿の実施など全体の士気を上げていくための施策を検討していました。
そんな折に、西中さんからお話を頂きました。それまでシステムコーチングの事は知りませんでしたが、タイミングもぴったりでしたし、ぜひお願いしようと思いました。
ー全3回のシステムコーチングを受けてみて、率直なご感想を教えてください。
セッションを通じて、無意識のオブラートが少しずつ剥がされていき、本音と向き合えていったように思います。場面によっては、ある意味、自分自身がむき出しになっていくような感覚を覚えました(笑)。セッションを通じて組織全体を俯瞰できたことで、今までにない新鮮な気づきを多々頂きました。
セッションの中でユニークだったのが、、チームの雰囲気をコーチのお二方が言葉にしてくれるのですが、そこからの様々な気付きを得られました。誰かが発言した後、たとえばチームの雰囲気が明るくなるのか、逆に空気感が重たくなるのか。特定の誰かが話すと、決まって同じような空気感の変化が生じやすい。そういった、いわば組織の「クセ」を初めて認識できたのです。
チームの雰囲気や空気感を客観視できるようになると、これまで社員を鼓舞するために発していたつもりの言葉が、チームに思わぬ影響を及ぼしていたことにも気づけました。伝わっていると思っていたメッセージが時に上手く届いておらず、チームの雰囲気を重たくしてしまっていたことが分かったのです。
私は経営者として、これまで会社のビジョンを大切にしてきました。だからこそ、ビジョンを社員に伝えていくことが自分の重要な役割と考え、社内会議をはじめ、様々な場で発信を徹底してきたつもりです。
一方で、社内のオペレーション構築や進捗管理といったCOO的なマネジメント業務は不得手で、その部分を別の幹部メンバーがずっと担ってくれていました。そのメンバーが今回退職したことで、日々の業務に混乱が生じ、そこから上手く立て直しを図れていませんでした。
そんなときだからこそ、より熱心にビジョンを訴えるようにしていたのですが、客観的に見れば空回りしていたのだと、セッションを通じて知りました。
経営者はビジョンを語り、オペレーション部分は社員に権限を渡して任せるというのが経営者の役割だと思っていました。そして、そんな理想形を自分なりにつくれていると思っていました。ですが、実際のところ、そういった役割分担は明確になっておらず、各メンバーが空気を読んで補ってくれていただけで、十分に上手くいっていたとは言い難い状況だったのです。
自分ができないこと、苦手とすることを認めるのは怖いものです。本当の意味で「助けてほしい」と声をあげることは、経営者としてあるまじきことだという感覚がありましたし、そういった弱さを周囲に伝えないようにしていました。
でも、そういった心の内側にある壁を、今こそ越えるべきだとセッションを通じて覚悟が決まりました。社員たちと気兼ねなく話したり、助けを求めたりできる関係性を作っていく必要があると痛感したからです。
社内の共通言語をつくり、コミュニケーションを活性化する意味でも、チームの変容を促す「エッジモデル(※)」の考え方をセッション内で学べたのは非常に良かったと思います。
(※)エッジモデル…プロセスワークの概念。今の状態を1次、未来もしくは今とは異なる状態を2次と捉える。2次の状態に到達するためには、そわそわとした様子や愛想笑い、茶化してごまかすといった反応でいつもなら隠している様々な感情(モヤモヤや不安、恐れ、違和感)と向き合い、エッジを越えていく必要がある。
エッジの概念を社内全員が学んだことで、「その人にとって抵抗を感じる話題=エッジトーク」という認識を共有でき、言いにくい話でもお互いに切り出しやすくなりました。聞き手からしても、「エッジを越えて発言しようとしてくれるんだ」という思いから、相手の話を受け止めやすくなりました。
チームミーティングとかでも、これまで遠慮から発言を控えていたメンバーが徐々に声を上げてくれるようになり、今までとは違ったフィードバックを得られるようになりました。
私自身も、これまで経営者として口に出すことをためらっていた「助けてほしい」「手伝って欲しい」という思いを、エッジトークとして少しずつ周りに伝えられるようになってきました。
私は20代の頃に、経営者たるもの完璧であり、弱音を吐かないものだという理想を当時働いていた会社の社長から教わったことがあります。そのため、自分の弱い部分をさらけ出してしまうと、周りはついてきてくれなくなるのでは、と思っていました
ですが、実際エッジトークをはじめてみると、助けを求めれば皆、大抵協力的になってくれましたし、社内のコミュニケーション自体もどんどん活性化していきました。時に意見がぶつかることはありますが、建設的な方向性で言い合えたり、言い過ぎたと思ったら後から個別で謝ったりできるようになったと思います。
初回セッションを終えた後くらいから、具体的な数値目標についてチームメンバー全員で話し合いました。結果、その目標にコミットできない社員が2名ほど離脱してしまったのですが、組織としては良い方向に向かい出したと思います。
実際、数値目標を明確にした上で全員が動き始めた結果、翌月の8月には黒字転換。その後はずっと黒字をキープし、結果的に決算も黒字で着地できました。幹部メンバーが抜け、赤字が続いていたので、今期は赤字になると予想していたので、うれしい驚きでした。
おそらくセッションを経て組織全体の空気感が柔らかくなり、お互い協力しあえるようになったことで、数字もついてきたのだろうと考えています。
私はこれまで営業は自分中心でやってきました。会社の売上を担っている自負を持っていたのです。ですが、今回、重要なメンバーが離脱したことによって、自分が売上を全て抱えこむ体制に限界を感じました。思い切って「皆に任せる」体制へと移行しようと決めました。営業も別のメンバーに任せ、サーヴァントリーダーシップを目指すことにしたのです。
正直、自分の役割がなくなってしまったようで寂しい思いはありましたが、結果、社員は奮起し、会社も伸びていきました。システムコーチングを受けていなかったら、会社の状態も改善しないまま、ひとりで悩みを抱え込み、体を壊してしまっていたかもしれません。
私は社長として、組織をさらに成長させていきたいですし、個人が一人ひとり自分の意志で動き、気持ちよく働ける職場を整えていきたいと考えます。そのためにも、今回の件に限らず、さらにエッジを越えていく必要があります。
西中さんと大橋さんに頂いたエッジの絵を、今でもトイレや机に貼って、毎日見ていますよ。パソコンのモニターにも、「エッジを超えろ」「遠慮しない」「助けをもらう」「(社員との)壁を作らない」というメッセージを書いた付箋を貼っています。
3回のセッションを経て改めて思うのは、第三者の方がいなかったら、社内のメンバーとここまで踏み込んだ話はできなかっただろうということです。システムコーチングを受けたことが自身のリーダーシップの見直しと権限委譲の強化が進み、結果、業績のV字回復に繋がったことは間違いない事実です。
ーシステムコーチングをオススメするとしたら、どんな企業に向いていると思いますか。
10人の壁を越えられないくらいの規模感で、かつ営業力のある社長が売上を牽引してきたものの、成長が頭打ちになっている会社には間違いなくオススメできると思います。創業社長にはパワーがありますが、ひとりの力には限界があります。ある一定のフェーズからは、ワンマンからチームに転換していかなければならないのです。
ですが、そんな時に壁として立ちはだかってくるのが、社長のプライド、そしてこだわりです。そんな壁を乗り越えていくために、システムコーチングは有用な切り口だと思います。社員と社長の関係性を今一度見直し、組織化していくタイミングにぴったりですね。
弊社でもぜひ次に30~50人の壁にぶつかったタイミングで、ぜひまたセッションを受けたいです。組織の悩みは尽きることがありません。チーム構築に迷いが生じたときは、ぜひご相談させてください。次はぜひ、1年後にはお願いしたいと思っています。
西中:
システムコーチングは決して万能ではありませんし、組織の問題を全て解決できるものでもありません。ただ、きっかけを与えるものであることも間違いないと思っているので、今回、受講されたご感想やその後の経過を伺えてとても嬉しく思います。またいつでもお声がけください。
【大橋コーチプロフィール】
CRR Global認定 Organization & Relationship System Certified Coach
米国NLP協会認定 Master Practitioner
本当の仕事ワークショップ 認定リーダー
5〜23歳まで米国カリフォルニアで育つ。大学卒業後、日本ヒューレット・パッカード株式会社に入社し、Sierとしてはたらく。その後、組織人事コンサルティング領域(人材採用コンサルティング会社、人材開発・組織開発コンサルティング会社)で、新規事業開発、コンサルタント、営業企画経験を経て、独立。
現在は、「つながりと創造性を取り戻す」ことをライフミッションとして握り、営利企業を対象とした、組織開発、リーダーシップ開発、“組織開発的な”人材開発に従事。働く人々が本来の自分とつながり、組織内でつながり、組織本来の創造性を取り戻し熱量を帯びていくプロセスの設計とファシリテーションを行う。
【西中コーチプロフィール】
CRR Global認定 Organization & Relationship System Certified Coach
新卒でジャフコグループに入社。VC投資、ファンドレイズ、M&A、投資先支援といった幅広い業務を経験。シード・アーリーステージの投資先を中心に、30社以上の投資先支援に関与。主に営業、事業開発、業務提携支援、採用支援を通じて投資先に貢献。
2008年からスタートアップと大企業とのビジネスマッチングに従事し、日本におけるオープンイノベーションの創出に携わる。投資先の採用支援においては、これまでにエグゼクティブクラスを中心に500名以上と面談を実施。投資先のコアメンバー採用において多数の採用支援実績あり。2023年からシステムコーチングの手法を用いて、成長フェーズのスタートアップを中心に組織創りの支援に従事。
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