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2022年度火の鳥NIPPONメンバー その2(OH編②)

こんにちは。ぱんだ(https://twitter.com/vball_panda)です。

先日、「2022年度火の鳥NIPPONメンバー その1」なる記事を書きました。
一連の記事では今年度の代表合宿招集メンバー(会見参加メンバー)を順番に紹介していこうと思っており、本記事は第2弾です。

本当は23人まとめて紹介したかったのですが、1人目の古賀選手の時点で文字数が膨大になったことと、私の執筆モチベが保てないことから、数回に分けて投稿することにします。

アウトサイドヒッター(OH)/オポジット(OP)

#10 井上愛里沙

1995/5/8生(27歳) 京都府出身
身長178cm・最高到達点304cm
西舞鶴高校→筑波大学→久光スプリングス
コートネーム:ショウマ

【代表歴】
シニア代表:2014年~2018年、2020年~
U-23代表:2015年・2016年
ユニバ代表:2015年・2017年・2019年
ジュニア代表:2013年

【国際大会受賞歴】
U-23:世界U-23選手権 2ndベストアウトサイドヒッター(2015年)

【国内大会受賞歴】
大学:インカレ 敢闘選手賞・ベストスコアラー(2017年)
皇后杯:MVP(2021年)
Vリーグ:MVP・ベスト6・日本記録賞得点王(2021/22)

【今季の成績】
総得点:584点(5位)
アタック決定率:38.5%(28位)
アタック決定本数/set:4.70(5位)
ブロック決定本数/set:0.39(16位)
サーブ効果率:11.1%(5位)
サーブレシーブ成功率:57.8%(22位)

長年にわたり次世代エースと期待され、今季遂に覚醒したOH。

中学時代は就実中で全国大会に出場。一躍その名を轟かせるも、高校は地元の西舞鶴高に進学。表舞台から姿を消したかに思われた。
しかし、春高・IHに出場せずとも世間は井上を忘れることはなかった。2013年には唯一の現役高校生として世界ジュニアに出場し、大会終盤にはスタメンに定着。銀メダル獲得に貢献した。

文武両道の井上は、高校卒業後もVリーグではなく大学進学を選択。筑波大学では1年時から試合に出場し、格の違いを見せつける活躍。同時に日本代表にも選出され、モントルー、WGPと着実にステップアップを果たした。

2018年に久光に入団、内定後すぐにスタメン出場を果たし鮮烈なデビューを飾る。しかしその後は、代表選手を数多く擁する久光の厚い選手層に阻まれ、なかなか出場機会に恵まれなかった。
同じく代表でも、期待の大きさとは裏腹にほとんどチャンスを与えられず、目立った活躍を残せなかった。
2019/20シーズン、ようやくスタメンに定着するもチームは7位に転落。翌シーズンも中心選手として全試合に出場、中盤からは本来のOHではなくサーブレシーブ免除のOPで起用という奇策も、久光は近年最低の8位に沈んだ。

……思えばこの雌伏の時は、全て今年の覚醒のためにあったのかもしれない。
2021/22シーズン、本来の適正ポジションであるOHに復帰すると開幕から大暴れ。シーズン中盤からは石井選手の復調と中川選手の台頭によりサーブレシーブの負担も軽くなり、さらに得点を量産した。
終わってみれば皇后杯とVリーグの両大会でMVPを獲得。数字的にも584得点(日本人トップ、総得点の日本記録を更新)、アタック決定率38.5%、セットあたり得点4.70(いずれもキャリアハイ)という大車輪の活躍を見せた。

井上選手の武器は、アタックの引き出しの多さ。高い打点からインナーに打ち抜いたかと思えば、ブロックを利用した巧みなブロックアウト。そしてコート中心に落とす軟打。難しいトスは無理に打ちに行かず、リバウンドを取って攻め直すクレバーさも光る。
もちろん、アタックだけでなく総合的な能力も優れた選手だ。日本人OHで最上位につけたブロック、全体5位の数字を残したサーブ。苦手とみられていたサーブレシーブに関しても、今年は上達の兆しが見られた。

彼女は今、日本で最も波に乗っている選手と言っても良いだろう。
国内では最高の成績を残した。次は世界での活躍を期待したい。


#13 金田修佳

1996/6/6生(25歳) 大阪府出身
身長177cm・最高到達点290cm
大阪国際滝井高校→岡山シーガルズ
コートネーム:シュウカ

【代表歴】
初選出。

【国内大会受賞歴】
高校:春高 ベスト6(2015年)
Vリーグ:敢闘賞・ベスト6(2019/20)

【今季の成績】
総得点:453点(10位)
アタック決定率:34.5%(41位)
アタック決定本数/set:3.94(8位)
ブロック決定本数/set:0.17(46位)
サーブ効果率:5.5%(60位)
サーブレシーブ成功率:61.5%(10位)

確かな実力と実績を持ちながらも今まで脚光を浴びることはなかったが、ようやく今年代表に初招集されたOH。

中学時代は大阪国際大和田中で全国優勝を果たし、高校は名門・大阪国際滝井に進学。高校では苦手だったというレシーブの強化に取り組み、安定したプレーでチームを牽引。3年時にはチームを春高準優勝に導き、ベスト6に選出された。
2015年、岡山シーガルズに入団すると、内定選手ながら試合に出場。翌2015/16シーズンには開幕スタメンを勝ち取った。その後は派手な実績こそないものの、年々上達するアタックとサーブレシーブを武器に、次第にチームの中で存在感を高めていった。

彼女の才能が開花したのは2019/20シーズン。
入れ替わりの激しい岡山シーガルズにおいて、レフト対角を組む佐々木萌選手とともに不動のスタメンとして君臨し得点を量産。セットあたり得点4.90という記録は、今季総得点の日本記録を樹立した井上選手をも上回る驚異的なハイペースである。守ってはサーブレシーブ成功率65.1%とこちらもキャリアハイの記録。攻守にわたり抜群の働きを見せ、チームを過去最高タイの2位に押し上げた。
この活躍をもってしてもなお、彼女が代表に召集されることはなかったが、その後も安定したプレーは健在。総得点、サーブレシーブ成功率ランキングでは常に上位につけ、遂に今年、代表入りを果たした。

彼女の武器は、驚異的な肩の柔軟性と視野の広さが生み出す変幻自在のアタックである。コートの隅に足の長いスパイクを決めたかと思えば、相手の意表を突くフェイント。ブロックアウトやプッシュなどの技術も卓越しており、Vリーグのライバルたちが「嫌な選手」と口を揃える。

上手さが光る独特のプレースタイルで、確固たる地位を築いた彼女。
その技術が世界にも通用するのか、非常に興味深い。


#14 オクム大庭冬美ハウィ

1998/6/27生(23歳) 福岡県出身
身長178cm・最高到達点314cm
博多女子高校→日立Astemoリヴァーレ
コートネーム:ハウィ

【代表歴】
ジュニア代表:2016年

【国内大会受賞歴】
Vリーグ:サマーリーグ フレッシュスター賞(2018)

【今季の成績】
総得点:447点(13位)
アタック決定率:38.8%(26位)
アタック決定本数/set:4.51(7位)
ブロック決定本数/set:0.20(42位)
サーブ効果率:5.1%(62位)

ケニア人の父と日本人の母の間に生まれ、両親ともに元バレー選手というサラブレッド。日本人離れした高い身体能力を持つ点取り屋。

高校は母の出身校である博多女子高校に入学。全国出場経験こそないものの、彼女の高いポテンシャルは当時から注目を集めていた。
在学中の2016年には東京五輪に向けた強化選手であるTeam COREのメンバーに選ばれ、同年、日本代表としてアジアジュニア選手権に出場した。

2017年に日立に入団。高卒新人ながら開幕戦でデビューを飾り、翌年のサマーリーグではフレッシュスター賞を獲得。若きアタッカーの将来が期待された。
しかし、(理由は不明だが)2018/19シーズンは1試合もベンチ入りすることなく、翌2019/20シーズンも僅か16セットの出場にとどまるなど、入団から数年は苦しんだ。

ようやく長いトンネルを脱したのは2020/21シーズン。
4年目にして初の開幕スタメンを勝ち取ると、シーズン途中は怪我によりベンチから外れるも、終盤に復帰。その後は高い得点能力を発揮し、規定出場数には満たないもののセットあたり得点5.13という高い数字を残した。
そして万全のコンディションで迎えた今季、開幕戦から31得点と大暴れ。総得点で後続を大きく引き離して日本人トップに立つ活躍を見せるも、またもや試合中のアクシデントにより戦線を離脱した。幸いこちらは重傷ではなくシーズン中盤には再びコートへ。復帰直後は様子を見ながらの起用となったが、終盤には再びエースとして得点を量産。終わってみれば447得点(日本人6位)、セットあたり得点4.51(日本人2位)という数字を残し、存在感を示した。

彼女の武器は高い身体能力から繰り出される、粗削りながらも破壊力抜群のスパイク。レフトからもライトからも、そしてフロントからもバックからも関係なく、高さとパワーを備えた力強いアタックを打ち込む。
リーグ全体を見渡しても、打力で圧倒できる唯一の日本人サイドではないだろうか。

今季は代表初選出ながら、日立の大先輩・江畑幸子さんと同じ背番号である#14を託された。
江畑さんを超える点取り屋としての活躍を期待したい。


#15 林琴奈

1999/11/13生(22歳) 京都府出身
身長173cm・最高到達点292cm
金蘭会高校→JTマーヴェラス
コートネーム:リン

【代表歴】
シニア代表:2020年~
*四大大会出場歴:五輪1回(2021年)
ユース代表:2015年

【国内大会受賞歴】
高校:春高 MVP・ベスト6(2018年)
黒鷲旗:若鷲賞・ベスト6(2018年)
Vリーグ:レシーブ賞(2020/21)

【今季の成績】
総得点:286点(34位)
アタック決定率:40.1%(19位)
アタック決定本数/set:3.13(19位)
ブロック決定本数/set:0.23(33位)
サーブ効果率:7.8%(40位)
サーブレシーブ成功率:67.3%(2位)

攻守に高い安定感を発揮し、常にチームの大黒柱として働くOH。

中高ともに名門・金蘭会の出身。高校では1年時からレギュラーで出場し、ユース代表にも選出。3年時は主将を務め、唯一の3年生レギュラーとして下級生中心のチームを統率。最後の春高を圧倒的な強さで制した。
西川有喜・宮部愛芽世・水杉玲奈選手など世代別代表がずらりと名を連ねるスター軍団の中にあっても林の存在は特別であり、池条監督をして「来年は林が抜けてどうしよう、と思うぐらいの存在」と言わしめた。

2018年にJTに入団すると、内定選手にしてVリーグファイナルに出場という快挙を成し遂げる。翌2018/19シーズンも高卒1年目ながら全試合に出場し、アタック決定率38.6%、サーブレシーブ成功率60.7%の好成績。続く2019/20シーズンには完全にレギュラーの地位を不動のものとし、JTの優勝に貢献。まさに非の打ちどころのない、順風満帆なキャリアを歩んできた。

2020年、Vリーグでの活躍が認められ、初のシニア代表に選出される。コロナにより実戦の機会こそなかったが、代表合宿に参加し紅白戦にも出場するなど、確実に存在感を高めていく。この年はVリーグの方でもレシーブ賞を獲得し、JTの2連覇に貢献。引退した新鍋理沙さんも「後継者」として林の名を挙げるなど、空白となった日本代表のOP候補の一人として有力視された。

2021年の東京五輪。林は代表メンバーの12人に選出され全試合に出場した。
とはいえ先発はわずか1試合。この年の代表はVNLから固定スタメンが続き、林にアピールの機会は訪れなかった。そしてチームも予選敗退。
不完全燃焼のまま、林の初めての五輪は終わった。

そして迎えた今季。開幕直後こそ温存しながらの起用となったが、リーグ中盤にはスタメンに復帰。終わってみれば、アタック決定率39.3%(日本人OH3位)、サーブレシーブ成功率67.3%(全体2位、OH1位)といずれもキャリアハイ。チームは3連覇を目前で逃したものの、相変わらずの活躍を見せた。

彼女の武器は、攻守ともにレベルの高いオールラウンドぶりだ。
攻撃では高さこそないものの、巧みなブロックアウトなど技術の高さを見せ、バックアタックもそつなくこなす。守っては抜群の安定感を誇るサーブレシーブに加え、リベロ並みの守備範囲をもつディグも光る。(実際に世界ユースでは、負傷した鏡原選手に代わりリベロを務めた。)
その隙の無さから、対戦したVリーグの選手たちも「安定感がすごい」「何でもできる」と口を揃える。

国内では最強のオールラウンダーとして不動の地位を築いた彼女。
日本代表の未来は、彼女をどれだけ生かせるかに懸かっている。


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