Re:リゾバ日記 前編(2022/12/26 - 31)

 今日は久しぶりの休みなので、久しぶりにリゾバ日記を書く。4日目にして疲労の蓄積量がとんでもないことになってしまったので、ボロボロの心身を癒すべく街へと下りた。モツ煮込みと生ビールを摂って英気を養いながらこれを書いている。

豊かさの象徴

< 12/26  1日目  出発日>
 朝4時半に起きて、頭が働き始めるより先に部屋の電気をつけた。こうでもしないと目が覚めない。顔を洗って、歯を磨いて、身支度をして、冷蔵庫にひとつ余っていたりんごを食べて、ゴミを捨てて、家を出た。昨晩のうちにスーツケースの荷造りを終えていたため、今朝は充電器などを突っ込むだけで出発できた。暗くて寒い道をゴロゴロ曳きながら駅に向かう。最近手袋を使うようになったので手が痛くならない。画期的なアイテムだ。 
 夜明けから朝方くらいのことを歌った曲を聴きながら歩けば、早朝の眠気や嫌気も美化できる。電車と徒歩を駆使して新大阪の駅に到着し、さてここからは新幹線、ビールでも買って旅(移動)を豊かにするかと歩き回っていたのだが、やけに乗り換え時間あるなぁと調べ直したら最も効率の良い乗り換えよりも1時間ほど早かった。おかげさまで余裕を持った旅ができるぞと一瞬で切り替え、再びウロウロと徘徊した。私がスポーツ選手なら優秀だ。スポーツってメンタルが大事らしいから。

 車窓には次第に雪が見えはじめて、あるトンネルを抜けた段階でしっかりめの降雪が始まった。目的地の最低気温はマイナス9℃らしいが、車内があたたかすぎることもあってむしろ楽しみに感じる。キリン一番搾りのロング缶を片手に富士山を探す私は、おそらく傍目にも浮かれて見えたことだろうと思う。ちなみに富士山を通らない路線だった。

 数ヶ月前、「二度とリゾバしない」と宣言した。北海道の奥地、登山客しか来ないような宿で一ヶ月働いた末、それはもうウンザリして逃げるように脱北したわけだが、辛苦を忘れた頃にどデカいお給料が振り込まれたのがやみつきになってしまい、気がつけば年末の帰省をやめて再びリゾバに応募していた。

 勤務先の最寄駅からは送迎があって、葛折りの山道をハイエース寄りのマイクロバスでのぼっていった。民家が少なくなっていくにつれて不安が募るこの感じこそリゾバ初日の絶望感だ。私は既にこの感覚を知っている。
 到着するや否やスーツ・メガネ・オールバックの責任者然とした責任者が現れて、我々就労者をテキパキと案内していった。初日はそのガイダンスだけで終わり、これから二週間ほど滞在する社員寮へと帰った。Wi-Fi、冷蔵庫、お風呂、洗濯機、乾燥機などの設備はひととおり揃っているし、前回リゾバの反省を活かしてお酒や娯楽を持ち込んでいるので、今回は心が軽い。荷を解き、食堂で焼き魚を食べ、シャワーを浴び、お酒を飲み、寝た。

< 12/27   2日目 >
 勤務が始まった。7:30から13:30という早めのシフトだが、私は朝強いタイプなのでむしろありがたい。仕事内容はホテルのビュッフェ会場のサービス・管理といった感じで、ホテルの宴会場勤務を経験している身としては馴染みあるものだった。他の従業員は社交的でスマートで、それぞれ尊敬できるところがある人たちだった。部下の失態に責任を持つことができる上司は素晴らしい。「明日からは6:30出勤でお願いね」という不穏な通達を背に受けながら、勤務初日をつつがなく終えて帰寮した。

< 12/28   3日目 >
 言われたとおり早朝から出勤し、お昼までしっかり働いた。時給1600円ということもあって精が出る。年末に近づくにつれて客が増え、三が日までは殺人的な忙しさを覚悟しなければならないという。今日ですら結構忙しかったけどな。「夜は16:00にまた出てきて」と言われ、一旦は寮に帰った。適当に過ごしていたらすぐ再出勤の時間になったので職場に向かったが、このときはまだ24:00まで勤務することになるとは思っていなかった。

< 12/29   4日目 >
 昨日の激務を経て、体も私も悲鳴を上げている。

 昨日の勤務時間は7:30〜12:30、16:00〜24:00と13.5時間にものぼる。残業代や深夜手当が出るとはいえ過酷な仕事だ。この激務を2日連続で行おうとしたとき人間はどうなるのかというと、まず歩くのが遅くなる。体も心も疲弊して、次の一歩をスムーズに踏み出せない。投げ出すように足を動かすのが一番楽だがお客様のいる会場内でそんな態度を取るわけにもいかず、表では力んだ姿勢、裏ではグデッとした姿勢という二面性を駆使して働くことになる。使用済みの皿を下げる。会場を出る。ふらふら歩く。厨房で新しい料理をもらう。キリッとする。会場に運び入れる。グラスが少なくなっていることを確認する。会場を出る。ふらふら歩く。この日もまた24:00ごろまで働いて、泥のように眠った。5連勤とかすることになったらどうなっちゃうんだろう。本当に泥になるんじゃないか。
 基本的に「お金が欲しい」よりも「日々を楽しく過ごしたい」が上にくるので一日の半分以上を労働に費やすなんてことはまずしないし、よっぽどのことがなければ疲れる前に休むんだけど、いま貯金が2万円くらいしかないから必死で働かざるを得ない。先月ヨーロッパ旅行をしたぶんのツケが回ってきた。クレカの引き落としをツケだと思っている時点できっと金銭管理が甘いのだろうが、どうしても「来月報いを受ければ済む、今月はその分遊べる」という感覚でクレカを使ってしまう。こんな人間にも10万円の利用枠を設けてくれるんだからMasterCardはすごい。
 ちなみにヨーロッパ旅行は月ごとの決済額を調整したらどうにかなった。ウィーンのレストランでクレカ上限を迎えてあわや無銭飲食かという危機に陥ったので、胸を張ってどうにかなったとは言い難いが、実際どうにかなったし、どうにかなったと言わせてもらう。

< 12/30   5日目 お休み >
 規則上、一週間に一日は休まなければならないようで、今日は早起きする必要がなかった。とはいえこのところ毎朝5時半には起きていたため、9時には目が覚めた。部屋の掃除をしたりやるべきことをやったりしているうちに10時になったので、食堂でポークカレーを食べて、年末バイト用お出かけバスに乗り込んだ。街まで下ろしてくれて、夜には寮まで連れ帰ってくれるバスだ。
 時間があったので長野県松本市まで出た。買い物をしたり居酒屋に行ったりカフェに行ったりして楽しく過ごした。松本は小学時代に家族で来たことがある。松本城、旧開智学校、善光寺という渋すぎる観光地のせいであまり楽しめなかった覚えがあるのだが、再訪してみるとなかなか良い街並みだ。わざとらしいくらいに「古き良き」をやっているのがまた良い。白と黒の蔵みたいな家屋が立ち並ぶ商店街をぶらぶらと散策した。

 この日記を書き始めた時にはモツ煮込みを食べていたのだが、今はもう帰りの電車に乗っている。楽しい一日はとても早い。

 明日は大晦日、明後日は元日、どちらも朝から晩まで働き詰めの予定だ。おそらく疲れ果てて日記更新などできないだろうから、これが年内最後のnote更新となる。本年はお世話になりました。みなさま良い年末をお過ごしください。

# 年末だしいいねした人に一言 のやつ好きだからやりたいんだけど、まっとうする元気がないので誰かやってください。

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