クッキングインテリジェンス&アザーズ 2023/07/30

 今やっているゲームに「マックストリュフ」というアイテムがあり、料理に使うと体力が上限以上に回復する。馬に乗ってフィールド探索してる最中に見かけたらわざわざおりて採集するほどには強力で貴重なものだ。その効果が発揮されるのは料理に使った時であって、単体で焼いてもあまり意味がない。もったいなないので焼きマックストリュフを作ることはないが、このゲームには確かに「焼きマックストリュフ」というアイテム区分が存在している。

 ゲーム中にはゴブリンのような敵キャラクターが群れて巣を作っていることがある。縄張りに入ると弓兵がこちらに気づき、角笛でもって戦闘体制に入るよう呼びかける。先ほどまで地べたで寝転んだり踊ったりしていたゴブリンたちは「!」とこちらを睨み、すぐさま武器をとり襲いかかってくる。多勢に無勢だが相手は強くない。ほどなくして制圧すると、あとに残るのは彼らが持っていた矛や盾、彼らの角や骨、誰もいなくなった焚き火、食べるつもりで焼かれていた肉や魚や野菜。そのなかに焼きマックストリュフは転がっていた。
 ゴブリンたちは料理しないと真価を発揮しない食材をただ焼いて食べているのだ。彼らの文明や知能のレベルは人類に劣っているということが、焼きマックストリュフひとつで物語られているのだ。これほど心憎い描写はない。なんの役にも立たないかのように思えた焼きマックストリュフがここに配置されていることの意味たるや。ゲームデザイナーの深慮が垣間見えた気がして、夜中にひとり、とても嬉しくなった。



以下、とりとめのない箇条書き。

・とある歌ってみた動画に本家アーティストの方がコメントを残していて、そこに群がる有象無象の1人が「本人巡礼済み」と書いているのをみた。どうせ巡回の間違いだろうが、無学であるからといってこの無礼を許していいのか。無学だとしても、巡礼の礼の字になにか権力勾配の気配を感じ取ることができないものだろうか。私にはどうしても、そのコメントを残した人が、考えもせずに投稿ボタンを押したように思えてならないのだ。

・セクシーなポケモンは何かを議論するのも良いが、できることなら、このポケモンはどこがセクシーかを議論できるような価値観を持ちたい。大酒を飲みながらオモチャンウェーブレングス回をみたら、コイルのセクシャルな部分を探ろうとする姿勢に妙な感動を覚え、このようなことを思った。セクシー/セクシーじゃないの二極判断よりも、空想してでもセクシーを見出そうとする方が、なんとなく豊かに思える。

・バイトの昼休み、休憩室の狭苦しい机でスープ春雨をなるべく無音で食べながら相対性理論を聴いていると、急に自分を嫌いになってくることがある。この行為自体にもともと汚れたイメージがあって忌避するのではなく、ふと思いついた途端、それが陳腐な行為であるような気がしてくるのだ。誰かから「あーそういうタイプね笑」と思われていたら、記号的な何かだと思われていたらどうしよう。こういうタイミングで「何者かでありたい」というみっともない願いが顕在化する。さらに自分が嫌になる。

・教授に褒められた。2週間前にボコボコにダメ出しされまくった論文をかなり大幅に修正してもう一度見てもらったら「とても良くなりました。この短期間に一人でこれだけできるなら全然書き上げられますね、安心しました」とのことだった。前回見せたものがあまりに稚拙だったから、その振れ幅ゆえの褒めでもあるのだろうけど、嬉しかった。侮りからくる含みも感じられるが、まあよい。

・近所のドラッグストアにやたら声のデカい学生バイトが入って、生活にいらぬストレスが加わっている。よぼよぼのおばあさんに対して「アプリはありますかぁ!?」と叫んでいるのは不快だし、普通に怖い。「ないですね!?」と追い打ちをかけていてマジかこいつと思った。レジの仕事は何度も経験があるので大変さもわかるけど。

・昔は気温が30℃もあれば半袖半ズボン以外ありえなかったけど、最近は半袖長ズボン、場合によっては長袖長ズボンで過ごすこともある。暑さに強くなったわけでもないのに不思議だ。あとズボンって久しぶりに言ったな。勢いのある音だ。

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