銀ソーダさんの公開制作を見る

銀ソーダさんが大きな作品を公開制作されているとの情報を聞き、トレザイールに伺ったのである。
銀ソーダさんの抽象画は筆運びの美しさが魅力の一つだと考える。その筆運びがリアルに見れる公開制作は贅沢そのものと言っても良い。
今回製作されるものは10月12日から旧福岡県公会堂貴賓館にて行われる個展で展示される予定の作品である。キャンバスをロールのまま使用した大型の作品である。
白いキャンバス生地に水を多めに溶いた絵の具で淡く描かれている。私は作業を見ている中でそれがすっかり筆を洗う水かと思っていた。しかしそれを画面に散りばめるように垂らす。部分的に溜まりができ、それを更に筆で伸ばす。その時に絵の具は綺麗な弧を描き、それはそのまま銀ソーダさんの腕の動きとリンクし、作品の命の一つとなる。
溜まりはまだ乾いていない。時間の経過とともにこの溜まりも変化していくだろう。
そして違う場所に銀ソーダさんは移動して今度はシャープな線を描く。
静かな空間に銀ソーダさんの筆と画布の掠れる音だけが響く。それがとても神聖な作業に思えてくる。
ただの画布に少しずつ命が蓄積されていく。そうして作品は完成していくのだろう。
この言葉は賛美である事を前もって書いておくが、ものづくりの作り手の凄いところは作家が作家以上の作品をその手で、脳で作り出すところにあると思っている。
今回の公開制作ではその「凄いもの」が銀ソーダさんの手によって産まれていく様をマジマジと見ることができるのだ。
お邪魔にならない程度に皆さんに見てもらいたい。
絵を描かない方も。そして描かれる方も。
公開制作は10月3日まで。