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「記憶の海」鑑賞

今私は福岡市東区箱崎にある大學湯にいる。
銀ソーダさんの個展「記憶の海」の鑑賞である。
今まで何度となくいろんな作家の皆様の鑑賞日記を書かせていただいたが、今、会場にいる状態で書くのは初である。
大學湯自体は何度となくオープンハウスなどのイベントで行っている。いつもはのんびりとした空間で今でこそ銭湯としての機能は失われているが、コミュニティスペースとしてほっこりとした気分にさせてくれる。何時間でもいたくなる。
それが今、この個展という会場と化した大學湯は銀ソーダさんのインスタレーション(空間芸術)に支配されている。脱衣場と言わず、浴場と言わず、素材も様々な帯が天井から垂れ下がっていたり、くしゃくしゃになっていたりする。いつもは開けた空間も青のジャングルと化しているようだ。
大學湯の壁面には銀ソーダさんの描かれた壁画がある。いつもはそれが入るとすぐに目につくのだが、それが帯によって見えたり見えなかったりする。青の向こうに青がある。壁画はいつもよりも奥行きを感じさせる。
きっと時間によっても見え方が変わるのだろう。窓から入る陽の光で表情を変えるのも大學湯の醍醐味である。
今、目の前で不織布が揺れている。
それだけで会場が、いや、作品が生きているように感じてくる。
銀ソーダさんと大學湯と青という色は最高の組み合わせである。
それはこの大學湯が銭湯として機能して、銀ソーダさんが利用していた頃からの運命だとも思えるのである。
12月11日まで。

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