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かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #10

「ピザは3枚、チキンナゲットは15ピース、ケーキは…俺が引き取りに行く」

世間はすっかりクリスマスモードになっているその日、私は夫とクリスマスイブの打ち合わせをしていた。

ちなみに、夫は相変わらず無職。

9月から新しい仕事を探すと言っていた夫だったが、12月になっても面接すら受けていない。

私と長女がA君の推しゴトに夢中で、ずっと機嫌が良いのをいいことに、サボっていたのか、はたまた根っから働く気が無いのか…。

しかし、それももう、私にはどうでも良かった。

「A君のそばにいられれば、私は楽しく生きていける」

すでに『夫の推し』を完全に引退した私は、夫への期待も怒りも消えていた。

だから「うちに子供が3人いることを考えたら、お前のナゲットの注文数じゃ足りないだろ」と叱られても、全くムッとしない。

「あぁ、ごめんね、追加しとくね~」

こんなふうに『食費を支払っている私』が、『生活費を入れない夫』に素直に謝れるのも、理由があった。

それは、赤のフレンチネイル。

専属のネイリストさんに「推しの色にしたい」とリクエストするのは気が引けたので、「クリスマスカラーにしたい」と伝えてA君の担当カラー(赤)にしてもらった。

赤のネイルは少し派手な印象があるので、営業という仕事柄、私は今まで避けていた。

しかし脳内がA君で真っ赤に染まっている私に、もう冷静なジャッジはできない。

完成した赤い指先を見れば、それだけで気持ちが上がる。

昔から口調がキツイ夫に注意されると、私はたびたびヘコんでいた。

しかし今はもう、1ミリも傷つくことはない。

夫からお叱りを受けたその3秒後には

「せっかくだから、足の爪も赤にしよ。じゃあ100均に行かなきゃ!」

と考えていたのである。

そして、夫に叱られてナゲットの数量を書き直しながら、その下に『赤マニキュア』と書き足した。

#11 に続く

※実在する推しA君の正体はこちら

みなさまの「いいね」が励みになります♡(*‘ω‘ *) ライター:あやはる 

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