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刀自来る浅蜊の管のちぢこまる/大野朱香


大野朱香さんの第4句集から

この句集には平成10年から18年までの655句が収められています。

刀自来る浅蜊の管のちぢこまる
季語〈浅蜊(春)〉

「刀自」というのは

(トヌシ(戸主)の約。「刀自」は万葉仮名)
①家事をつかさどる女性。とうじ。
②主に年輩の女性を敬意を添えて呼ぶ語。

広辞苑第六 電子辞書版
一部抜粋

だそうです。
台所で砂抜きをしている浅蜊を見ている作者。そこに、この家の家事をつかさどる女性(姑か?)がやって来た。
途端に浅蜊の管が引っ込んだ・・・というのです。
厨での浅蜊の様子を詠んだ句は他にもあると思います。

雛祭浅蜊は管を足にして/高澤良一

鍋の浅蜊管出して語り合う深夜/夏石番矢

妻不在浅蜊舌出す台所/山本一双

この句の面白みは、「主婦」とか「はは」などとは言わず「刀自」と表現したところと「ちぢこまる」だと思います。
浅蜊がちょっとした物音ですぐに管を引っ込めるのは、よく見る景だと思いますが、この句では、威風堂々たる厨の主の姿がしっかりと見えてきます。
それを察して管が「ちぢこまる」浅蜊に、作者の姿も反映されているような気がするのは私だけでしょうか。

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