雲は友/岸本尚毅句集
コロナ禍前にふらんす堂主催による岸本尚毅さんの句会に参加していたことがあったので、自分としては、岸本尚毅さんの著書はかなり(あくまでも自分なりに😅)購入していたつもりだったのですが、
改めて自分の本棚を探してみたら、持っている句集は、こちらの2冊だけでした。
所謂「句集」は持っていなかった💦💦💦💦
岸本尚毅さんは、俳句を齧っている人ならば知らない人はいないくらいに活躍中の俳人ですが、その実力については、童子主宰の辻桃子先生や副主宰の如月真菜先生も、折に触れて結社誌などに書かれています。
やはり、写生を基本として、淡々と17音を詠んでいるところが、うちの結社の方向性と似ているのかもしれません。
句集「雲は友」の裏表紙には、「雲」を読み込んだ15句が並んでいます。
装丁も「雲」のイメージ。(表紙の絵は、初めカリフラワーかと思ってしまった😅)
以前、NHK全国俳句大会の「選者の先生方への質問コーナー」で、「俳句ができない時にはどうするか?」という質問に、確か「とりあえず外に出ます。」と答えていらっしゃったような記憶が💦💦💦(うろ覚え)
この句集に収められている句の数数からはそんな岸本さんの句への対し方が伺えます。
それと同時に、私が強く感じたのは、「ヌーボーとした句が多いなあ」ということです。
岸本尚毅さんは、著書「高浜虚子 俳句の力」の中で虚子の理想を「単純なる事棒の如き句、重々しき事石の如き句、・・・ボーッとした句、ヌーッとした句、ふぬけた句、まぬけた句」(『ホトトギス』明治36年10月)であると虚子の言葉を借りて述べています。虚子のファンであることを公言し、虚子の研究を重ねている岸本尚毅さん。その句から、何となく虚子の香りを感じ取ってしまいました。
句集の中から面白いと思った句をご紹介します。
初空やどこかにゐさう樹木希林
すててこの志村を真似て遊びけり
樹木希林さん、志村けんさんがお亡くなりになった時に詠んだ句と想像しました。
岸本さんは、お笑いが結構好きで、芸人さんの名前などもよくご存知ですよね。
また、映画なども良くご覧になっていたように思います。樹木希林さんと志村けんさんのイメージを上手く句に詠み込んでいて、さすがだなあ、と思います。
蟬を喰ひ蜻蛉を喰うて寺の猫
バンザイをさせて小さき子猫かな
眠りつつ舌なめづりをして子猫
猫の句も結構ありました。岸本尚毅さん、猫を飼っていらっしゃるのでしょうか?猫好きとしては嬉しい限り。孫句と犬猫の句は難しいと言いますが、鋭い観察眼と猫への愛情がしっかりと両立していますね。
なめくぢを超えゆく蟻や梅雨菌
空蟬のかんばせ左右ずれてをり
榾といふ榾の炎のつながれる
先日、辻桃子主宰に「写生は焦点を絞って観察する」と教わりました。正に、良くこんなところを見ているなあと思わされた句。
床の間に石置いてある日永かな
帽の上蟷螂の居る男かな
寒林を来て顔ほどのメロンパン
私が「ヌーボーとした句」と書いたのは、こんな句の数数です。どの句も事実ではあるのかもしれませんが、「だから何?」とも言われてしまいそうです。でも、このぼんやりとした雰囲気が、何とも魅力的です。
他にも、素敵な句がたくさんありました。
未読の方は、ぜひご一読ください。
俳筋力のない私ですので、未熟な感想はお許しを。
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