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【体外受精】採卵準備 (培養士)

採卵を行う前に十分に準備を行ってから採卵を行います。
※実施する施設により違いがあります。あくまでも私の経験の紹介となるのでご了承ください。

準備

卵子は温度やpH、光によってダメージを受けます。
また、菌やゴミによってもダメージを負います。
なるべくダメージを減らすために使う器具、培養液等は前もって準備しておきます。また、採卵の情報なども前もって確認し、必要があれば医師へ聞きに行くことも多いです。
卵子や精子へのダメージを極力減らすために一つ一つの準備の意義を理解して準備を行っています。

培養液の準備

温度のダメージ

卵子は温度でダメージを負います。温度のダメージを与えないために培養液は前もって37度くらいに温めます。特に卵子の紡錘体は温度に弱いので温度の維持はかなり注意して行われます。

精子は逆に温度が高いと良くないといわれていますが、逆に低すぎてもよくないです。37度で保存するよりも室温で保存するほうが良いというデータもあります。

pHのダメージ

培養環境はなるべく体内に近い環境を目指して培養が行われます。
培養を行う培養庫は大気よりも二酸化炭素が高い状態になっています。

培養庫で使う培養液

二酸化炭素の濃度が高いとpHが変化します。
そのため培養庫の中で使う培養液は培養庫内でpHが変化することを前提に設計されています。
しかし、すぐにが変わるわけではありません。培養庫で培養する培養液は、卵子を培養する前にpHを安定させるため培養庫の中に最低でも数時間入れる必要があります。朝に用意する場合もありますが、前日に用意することも多いです。

大気化で使う培養液

大気下で至適pHになるように調整されています。この場合は培養庫に入れずに加温してします。
卵子で使う場合は生体に近い温度にしてから使用します。
精子で使う場合は施設によっても違いますが、室温にしている施設や室温よりも高いが、37度よりも低く設定している施設もあります。

使用する器具の準備

使用する作業台(クリンベンチ)顕微鏡は当日に消毒を行います。
滅菌のかけられる器具などは前日のうちに洗って滅菌をかけます。

卵胞液を回収したスピッツを立てておくスピッツ立て等も前日に滅菌を行い、当日は使用前に加温しておきます。
※卵胞液が入ったスピッツを立てた時に、卵胞液が冷えないようにするためです。

培養では他の患者さんの検体が混じらないように使い捨て(ディスポーサブル)なプラスチック製のものやガラス製のものを使うことも多いです。

  • 卵子を探すシャーレ

  • 卵胞液を入れておくスピッツ

  • 精子処理のためのスピッツ

  • 卵子を移動するためのピペット

  • 精子の処理の時に使うピペット

などなど多くの器具が使い捨てのものを使います。

器具は購入時にすでに滅菌済のものも多いです。しかし滅菌されていないものもあるのでその場合は前もって滅菌しておきます。

患者さんの情報の確認

採卵を受ける患者さんの状況もチェックします。

  • エストロゲンなどのホルモンの値

  • 卵胞の数や大きさ

  • 採卵周期で使用したお薬の種類

  • アンチミュラー管ホルモンの数値

  • 過去の体外受精の成績

  • 過去のタイミング法や人工授精の結果の確認

  • 男性側の過去の精子の状態

  • 医師からコメント

  • 感染症の有無

などなど患者さん一人一人で状況や状態が違います。なるべく一番良い結果が出せるように十分に調べてから作業を行っています。

最後に

読んでくださりありがとうございます。少しでもお役に立てたら幸いです。

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