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エリザベス女王の国葬に思うこと ブログより再録:恵まれているならば…(追記あり)

この9月8日に96歳で逝去されたエリザベス女王の国葬が昨日行われましたね。リアルタイムでは、NHK地上波のニュース番組で見守り、今日、改めて録画していたNHKBSの中継を見ました。
荘厳でありつつ、幅広い層からの敬愛の念が溢れる、美しい儀式。棺の上のお花や、選曲、最後のバグパイプ演奏(音がだんだん遠ざかっていく演出が心憎かったですね)など、女王が生前示した意向が色々反映されていたそうです。国葬として行うにふさわしい、衷心からのお弔いの行事だったと感じます。
国葬を中継するBBCの、式の間、ナレーションを一切挟まず映像だけを粛々と流し続けた姿勢も印象に残りました。ナレーションに解説、感想と、てんこ盛りの日本とは大違いですね。

女王の逝去にまつわるニュースの中では、バルモラル城に始まり、エディンバラのホリールード宮殿、セント・ジャイルズ大聖堂、ロンドンのウェストミンスター宮殿、ウェストミンスター寺院、バッキンガム宮殿、ウィンザー城(礼拝堂の内部の美しさに目を見張りました)と、王室に所縁の深い場所がいろいろ映りました。かれこれ20年以上前にイギリスを縦断旅行した際に訪れた場所も沢山含まれていて、懐かしく感慨深かったです。

エリザベス女王というと、イギリス連邦の君主として厳格に伝統を継承する一面と、「開かれた王室」を心掛けて、国民の心情に寄り添い、ユーモアや機知に富むお茶目な姿も公にする一面と、両方あるのが魅力的でした。前者では、21歳の時の「生涯奉仕宣言」、後者ではロンドン・オリンピック開会式でのボンド・ガール(中東だったかどこかの要人は、本当に女王がヘリで降下したのだと思っていた方もいたとか)、今年のプラチナ・ジュビリーでのくまのパディントンとの共演などが、とりわけ印象深く、国葬関連番組で何度も流されたのも納得です。

イギリス王室のあり方を見るにつけ、「ノブレス・オブリージュ」という言葉が頭に浮かびます。
「ノブレス・オブリージュ」とは、19世紀にフランスで生まれた言葉で、「noblesse(貴族)」と「obliger(義務を負わせる)」からきているそうです。身分の高い者、権力や財力を持つ者には、それに応じて果たすべき社会的責任と義務があるという、欧米社会の基本的な道徳観です。
「上級国民」のやりたい放題が目に余る日本にも、是非根付いてほしい!

さて、ノブレス・オブリージュ繋がりで、ブログからの再録シリーズを。

10年余り投稿を続けた「ウェブリブログ」が閉鎖されるのを機に始めた、このnote。ブログに投稿した記事の中から、投稿から間をおいても、しばしば閲覧されている記事をさかのぼってピックアップし、再録しています。今日は、2022年4月20日付の投稿「恵まれているならば…」をご紹介します。

以下、ブログより再録

是枝裕和監督が、今年の早稲田大学の入学式で学生たちに贈った祝辞を、先日、目にし、心を揺さぶられました。
一部ご紹介します。

教員として早稲田の学生と話していて一番感じるのは、世の中にあまり不満がないということです。(中略)
あえて挑発的に言いますが、あなたに不満や怒りがもし無いのだとしたら…
それはあなたたちがとても恵まれているからです。
いかに恵まれているか、を自覚して下さい。(中略)
恵まれている。それは確かにあなたが勝ち取った権利かもしれない。
しかし、それは、私たち大人が出した問いに、上手に答えられたに過ぎないと、明日からは考えて、問いを出した私たちを否定しなさい。私たちの脅威になりなさい。
決して、今の社会に順応するだけの、器用さを手に入れるだけのために、人と会ったり本を読んだり、この大学に通わないでほしい。
あなた方のエネルギーだけが、この世界を変えることが出来るのだから。
(中略)良い敵になって下さい。
みなさん、ご入学おめでとう。

大人の敵 にならんと奮い立つには、とうに遅すぎる年齢の私ですが、特に
「恵まれている。それは確かにあなたが勝ち取った権利かもしれない。しかし、それは、私たち大人が出した問いに、上手に答えられたに過ぎない」
との指摘が的を射すぎていて、近頃半分眠っている魂に響きました。
確かに、色んな意味で、子どもの時から今現在に至るまで「恵まれて」きました。
さて、これからどうしたものか?

とはいえ、権力は何も持たない一市民のこと、ノブレス・オブリージュ とまではいかないながら、馬齢を重ねてきて、私にも 天命の様なもの はあるはず。
そう、論語にあるように、五十にして天命を知る です。

コロナ禍に戦争、様々な格差や分断、内外とも問題山積の状況ですが、自分ができることについて、いよいよ真剣に向き合わないといけないのかな。
とりあえず、是枝監督の言葉をご紹介することからスタート!


以上、再録終わり。
今年春の自分の投稿ですが、「恵まれているならば…」と是枝監督の言葉を改めて噛み締めている秋です。


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