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ブログより再録その1 須賀しのぶ「革命前夜」

 10年余り投稿を続けた「ウェブリブログ」が閉鎖されるのを機に始めた、このnote。ブログに投稿した記事の中から、投稿から間をおいても、しばしば閲覧されている記事をさかのぼってピックアップし、再録していくことにしました。
 時候の挨拶的なものなどは適宜カットして載せます。

 まず一本目は、今年の6月4日に投稿した「1989年の出来事」と題した記事を。

 以下再録

 6月4日は、1989年に中国・北京で起きた民主化運動の弾圧事件、天安門事件から、ちょうど33年です。

 我が家では、プライベートな諸事情により、1988年を「魔の88年」と呼びならわしているのですが、1989年は、世界的に大きな出来事が相次いだ年でした。
 1月に昭和天皇が亡くなったのを皮切りに
 6月は天安門事件
 8月には、ハンガリーで汎ヨーロッパ・ピクニック
 そして11月、東西冷戦の象徴だった「ベルリンの壁」崩壊

 先日読み終えた、須賀しのぶさんの小説「革命前夜」は、その1989年、冷戦下の東ドイツを舞台にしています。
 上記の出来事も、すべて主人公に関わってきます。

須賀しのぶ 革命前夜 文庫本の表紙

 音楽の父バッハに憧れる故に、バブル期の浮かれた日本を後に、あえて東ドイツに音楽留学したピアニスト眞山柊史が、シュタージ(国家保安省)とその協力者が暗躍する一方、多くの人々が「西」に闇雲に憧れる東ドイツ社会の中で、個性的な学生仲間たちや様々な立場の市民と触れ合い、揉まれながら成長していく物語です。
 歴史、音楽、青春、ミステリーの各要素が絶妙に絡み合い、特に怒涛の展開を見せる後半、すっかり引き込まれました。

 読み終えて、強く印象に残ったのは、人物造形の深さです。それぞれに強い個性を持つ登場人物たちが、善悪を簡単に判断できない、多面的な人間として描かれ、複雑な心模様に、翻弄されつつ強く惹かれます。
 単純なハッピーエンドではありませんが、ラストシーンには、胸をなでおろしました。

 それにしても、1989年は激動の年でした。2022年も、きっと大きな節目の年となるでしょう。
 多くの人の叡智、理知の結集によって、少しでも、プラスの方向に行けるといいのですが…。

 以上再録終わり。

 読書は、結果的に「イマイチだったな」と思うことが多くても、沢山沢山読んでみてこそ、心に響く一冊に出会えるものです。
 これからも、「この一冊」との邂逅を楽しみに、マイペースで読書に励みたいと思っています。


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