チューリップの色も本数も キャンディを贈る意味なんて知らない 知らないよ
ふたりだけの時間を じゃましないでね
慎ましやかな幸せは あと少しで終わります 最後の薬を半分こするとき 精いっぱいのかわいいを 君にだけ見せてあげるよ
拘束力のない束縛を言い訳に 君の体で飢えを満たす 最後のひとかけを食べるまで 空虚さに目を背けながらも
「心中しようね」 なんて軽々しく言う 君の声を聞きたくないから 君の大嫌いな曲で構成した プレイリストで耳を清める
君と教科書を並べる夕焼け 完全下校のチャイムを無視して 永遠の放課後 無人の廊下 乙女の和毛にそっと触れる
深夜のシャワーは 私を恐ろしく孤独にさせる 43度の水道水が 凍てつくコールタールに変わる
◇登場人物◇ ・私 ・ちきち ・豆腐(絹ごし) 今冬は鍋を一度も食べていないことに気づいた。春が来る前に寄せ鍋を食べよう。ちきちと一緒に台所に立った。 私は冷蔵庫からせっせと具材を取り出し、ちきちは携帯電話ですいすいとレシピを調べる。つゆの分量はどうだろうかと覗いてみると、パックに入った豆腐が携帯電話の下敷きになっていた。なんとまあ、わざわざ豆腐の上にモノを置くとは…。案の定、 「オモイ…ニガオモイ」 と豆腐がか細く訴えていた。ちきちは, 「大丈夫,君ならできるよ