「奇跡の社会科学」(中野剛志著、PHP新書)バーク②

ヤクルト1000を見つけ次第買い込んでいます。
ぽんニャンです🐱

バーク編②です😃

バークの保守思想は現代でも通用する。
イギリスの経済学者ジョン・ケイが著した「想定外ーなぜ物事は思わぬところでうまくいくのか?」という本でよくわかる。

ケイは、バークの保守思想を「周り道の」アプローチと呼ぶ。
ラディカルな「ゼロベースの改革」を「直接的な」アプローチと呼んでいる。

アメリカの山火事を例にとると、国立公園管理局は、山火事による森林破壊を防ぐことを目標にし、どんな小さな火災も消化してきた。
(「直接的な」アプローチによる失敗)
しかし、山火事は治らない。
調査の結果「山火事の撲滅」から「山火事のコントロール」へ目的を変更する。
しかし、16年後アメリカ史上最大の山火事(イエローストーン国立公園)が発生する。
それ以降、ベテランの林務官にどの火災を消火するかを委ねるよう、ガイドラインを変更した。
(「周り道の」アプローチによる成功)

この「直接的な」アプローチが失敗したのは、森林は人間の頭脳が及ばないほどに複雑なものであるのだったからだろう。
問題が複雑だからこそ、森林管理の経験を積み、ガイドラインを改定していく他はない。まさに「周り道な」アプローチが有効だということ。

また、都市やコミュニティも計画という「直接的」アプローチよりも、歴史の積み重ねという「周り道の」アプローチでできる。
前者はブラジリアやキャンベラで、機能性を重視しているが、退屈な都市。
後者はパリなど。京都や奈良も当てはまる。

ケイは「周り道」の効用を、社会科学者のチャールズ・リンドブロムの理論から得ています。
それは公共政策は「インクリメンタリズム(漸変主義)」のアプローチにより決定するというもの。

直接的でラディカルなアプローチより、既存のものを改善していくインクリメンタリズムが優れているのは、現実社会が極めて複雑であるから。
何か新しいことを始めるにしても、わかっていることから始めたほうがいい。
しかもその方がスピーディーかつ根本的に問題解決できると、リンドブロムは言う。

白紙の状態から利害調整などを行うより、まずは動き出して改善や調整をしていくほうが手っ取り早い。そして、既存の政策の改定を繰り返せば、大きな改定に繋がる。
まさに、千里の道も一歩から。ローマは一日にして成らず。

逆にラディカルなアプローチは、様々な検討や利害関係の調整を一気に行わなければならない。

様々な可能性を検討せず、強引なアプローチをすれば、独裁的な権力を生み出して大失敗する。
それがフランス革命であることをエドマンド・バークは見抜いていた。

バークが説いた「保守」とは、「システムを維持しつつ、同時に改革を進めていくやり方」のこと。
それを20世紀にリンドブロムが「インクリメンタリズム」と呼び、21世紀にケイが「周り道の」アプローチと呼んだ。

フランス革命、ロシア革命、文化大革命などが生んだのが独裁であった。
独裁の反対は自由。
既得権益などにとらわれながらも、時間をかけて少しずつ改善していくことが、自由への条件である。


都市の話は短いですが考えさせられます。
観光地になっている都市というのは、長い年月をかけて少しずつ変わっていった町です。
奈良や京都に代表されます。
しかし、変わらないものもあります。守られていくべきものは守り、変えていくべきものは変える。

ひょっとしたら介護保険を変えていくときも、ラディカルに変えず、まずは変えれるところから変えていく方が近道なのかもしれませんね。

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