夏目漱石「三四郎」① 主人公がフラれる話

1、主人公がヒロインにフラれる

夏目漱石「三四郎」
明治41年(1908年)発表

この「三四郎」が一体どんな話なのかといえば、
・主人公がヒロインにフラれる話
である。

一行であるが、これがこの話の最大の特徴である。
ヒロイン側になにか事情があって仕方なく交際できないとか離れなければならない、とかではない。
単純にフラれるのである。

「坊っちゃん」の記事でもふれたが、基本的にお話の男性主人公というのは、
異性にモテてるか、少なくともヒロイン女性にはモテてる設定である。
しかし「三四郎」の主人公・三四郎は、全くモテないわけではなさそうだが、
ヒロインに普通にフラれてしまうのである。

2、「モテない男」あるある

しかもそのフラれっぷりが、モテない男あるあるなのである。

三四郎が告白に至る過程、あるいは「三四郎」のあらすじを乱暴に示すと下記の流れである

・俺、東大に合格して田舎から東京に来たぞ! もう田舎娘の相手なんかしないで、都会の美女と仲良くなって結婚するぞー!
・でも女ってよくわからないから怖いなあ、、、
・うわ、むっちゃ美人とすれ違った! さすが東京、、、
・え? この間の美人が知り合いの知り合いっぽい。 これはチャンス!
・お、この美人もなんか俺に気がある感じだぞ。これはくっつくしかない!
・美人のことで頭がいっぱいだけど、いまいち向こうが俺を好きなのかどうかよくわからないなあ、、、 こうなると田舎の母さんみたいに、俺に愛情注いでくれる人のありがたみがわかるな、、
・なんか美人との仲が冷えてきてるっぽい、、どうにかしないと、、、
そうだ! 告白しよう! 思い切って告白すればいい方向に変わる!!
・つ、ついに、ついに思い切って、思い切って告白したぞ!!!
・え? 美人から反応がない? あれ??? 聞こえなかった??
・と、とりあえずもう一回告白!!
・え? た、ため息つかれた、、、、、、
・友達から聞きました。美人さんは結婚するそうです。僕の知らない男と。ああ、少し前には美人と仲良くできてた時期もあったなあ、、、
・僕が帰省してる間に結婚式あったそうです。
・ストレイシープ(迷える子羊)、ストレイシープ、、、、、、


以上、モテない男あるあるの宝庫である。

・田舎者だからこそ都会的な美人との恋愛、結婚を強く夢見る
・女性、特に美人からちょっと仲良くされるとすぐ好きになってしまう
・頭の中が片思いしている女のことでいっぱい
・自分が愛情注いでる女が自分に優しくしてくれない現実に打ちひしがれて、自分に無償の愛を注いでくれた母親のありがたみがわかる
・告白が、恋愛漫画の最終回にあるような「互いに両想いであることの確認」では全くない。むしろ逆の、女性との関係がいまいちになったので、「自分が愛を告白すれば愛し返してもらえるのでは、、、」との一縷の希望にすがった、決死のバンザイ突撃
・思い切って告白したのに、女性からは完全スルー・ノーリアクションで流されてしまう。聞かなかったことにされてしまう。
・自分の一世一代の告白が流されてしまったことに動揺・混乱し、思わずもう一回同じ言葉で告白してしまう
・見事に否定的な反応される
・好きだった女の恋愛、結婚事情を本人からではなく、知人がらみの又聞きで事後的に知る
・完全にフラれた後も、その女のことで頭がいっぱい。女がそこそこ仲良くしてくれた時期の回想にひたる
・ああ、俺は可哀想な迷える子羊だ、、、、

なお、モテない男を馬鹿にして列挙しているのではない。
私は異性に思い切って告白して、自分としては一世一代の行動だったつもりが、
笑顔で流されてしまったことがある
三四郎は私だ


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