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夏目漱石「三四郎」考察

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夏目漱石「三四郎」考察です。女に征服された男
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#モテない男

夏目漱石「三四郎」⑦ 女に征服された男(1)

1、女はずるい
夏目漱石が「三四郎」の前に書いた「坊っちゃん」には、次の一節がある。

元来女のような性分で、ずるいから、仲がよくなかった。

(「坊っちゃん」・「一」)
(※ 著作権切れにより引用自由です)

これは坊っちゃんが少年時代の回想をしつつ、自身の兄について評した言葉である。
「女のような性分で、ずるい」― 私がこれを書いてる令和6年はおろか、平成時代でも現役の男性作家がこんなフレーズ

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夏目漱石「三四郎」⑥ 女は絶対的な他者である

1、謎のヒロイン・里見美禰子
夏目漱石作品の特徴に

・ヒロイン女性が内心でなにを考えていたのか不明なまま話が終わる

との点がある。
ヒロイン女性の内面に、小説の語り手は一切入り込まないのである。
小説の語り手が主人公男性にせよ客観描写であるにせよ、主人公の内面、主人公がなにを見てどう思ったのかについてはしっかりと描写されるが、ヒロイン女性の内心については、不明なのである。

かつ、それが終盤で

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夏目漱石「三四郎」⑤ モテない男達、美しく(3)

1、ヒロインからなにも告げられない主人公繰り返すが、「三四郎」の主人公・三四郎は、女にフラれた男である。

・ヒロイン・里見美禰子に思い切って告白するも、聞かなかったことにされ、溜息をつかれてしまう。
・さらに美禰子は三四郎にはなにも告げずに、三四郎の知らない男と婚約している。
・三四郎はそれを知人から伝えられる。

この後段、
・結婚等の重大事項を片思いしてる女性本人からは告げられずに、事後的に

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夏目漱石「三四郎」④ モテない男達、美しく(2)

1、フラれた主人公・三四郎前回も書いたように、「三四郎」の最大の特徴は、

・モテない男達を、美しく描いている

ここにある。
前回は広田先生についての描写にふれた。

今回は主人公・三四郎についてふれる。

再言するが、主人公・三四郎は女にあっさりフラれた男である。
しかもそのフラれ方が、「モテない男あるある」なのである。以下説明

・好きになった女と一時期は仲良い感じだったが、最近なんか冷えた

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夏目漱石「三四郎」③ モテない男達、美しく(1)

1、モテない男達を美しく描く夏目漱石「三四郎」の、他の物語にない最大の特徴は、

「モテない男達を、美しく描いた」

これである。
笑われ役でも憎まれ役でも、最初から異常者のような設定でモテない男を描いたのではない。
真面目なお話で、モテない男達を美しく描いたのだ。

その場面は二つ。
一つは、広田先生の回想
もう一つは、三四郎の回想+末尾 である。

まずは広田先生を語ります。

2、二十年も美

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