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【10回連載小説】タケルとスミカ(4)

【スミカの2ターン目】
ええ?羨ましいって?
そんなん言われても、私ら、ずっとだからねえ、幼馴染みなの。
だから、スゴイ仲がいいとか、言われても、全然、ピンと来ないんだよねえ。
 
いいよ、代わってあげるよ。幼馴染みの役。
いや、代わってくれたら、私、楽なんだけどなあ、実際のとこ。
 
アイツ、スゴイウザいよ。ホントに。バカだし、単純だし、無神経だし。
 
イケメン?
そうかなあ?私は、あんまり、そんな風に思わないけど…
 
確かに、背は高いよね。182㎝、あるんだ。体重はねえ、70㎏。
何で、知ってんの?って、言われても、何でだろうねえ?アイツの事は大体知ってる。
 
アイツ、AB型で双子座なんだよ。だから、スゲエ、二重人格。
バカと真面目が、ゴッチャになってるヤツなの。
 
イケメンとは、思わないなあ…
イケメンってさあ、もうちょっと、雰囲気、あるじゃん。
アイツみたいに、あっけらかんとはしてないじゃん。
アイツ、デリカシーもないし、TPOとかも、あんま、分からない人だからねえ。
こないだだって、最悪だよ。地下鉄に乗っててさあ、私が、タケルが授業に出れなかった時のノートをさあ、コピーしてあげたんだよ。そしたら、アイツさあ、「ありがとう!だから、俺、お前の事、大好きなんだよ!」って、言うの、でっかい声で。私さあ、スゴイハズくて、顔、真っ赤になっちゃって、大変だったのよ。
だって、そうじゃない?周りの人が、全員、私たちが付き合ってるって、思われたりするじゃない。ヤバって、なってね。ホント、アイツ、無神経でキライなんだ。
 
 
【続けてスミカの3ターン目】
なんで、いつも、一緒なのって?
一緒に大学入って、一緒の学部だからじゃない?
だって、家だって、3軒隣だよ、うちら。
しかも、私ん家の方が、2軒分だけ駅に近い。
 
だって、いつも一緒だったからねえ、ホント。
幼稚園から高校まで、ずっと通学路、一緒だよ。マジ。
家から出て、同じとこへ行くのに、別々なんて、そっちの方がおかしくない?
まるで、仲悪いみたいじゃん。
うちら、仲が悪かった事なんて、1ミリもないからね。
 
高校で、タケルが野球部の早朝練習をやってた時は、キツかったなあ。
私も朝早く起きて…前の晩、どんなに遅くまで勉強していても…
 
そうそう、アイツが5時に学校へ行く時も、私は一緒に行ってた。
何で?って、言われてもねえ。
確かに、私は普通に8時ごろ着けばよかったんだけどね。
でも、私も、早朝学習をやってたから…
それに、一緒に行くのが、うちらの当たり前だったから… 
まあ、アイツが5時なら、私も5時、って、感じ。それだけ!
 
 
【さらに続けてスミカの4ターン目・連続!】
ユミちゃん、あんた、タケルの事、気になってんの?
ええーーー、好きなのお?!
止めた方がいいよ。絶対!私が保証する。
あんなのダメよ。ユミちゃんぐらい、いい女なら、あんなのもったいないって、マジで!
 
アイツはさあ、ちゃらんぽらんだしね。
明るいスケベだし、何も考えてないで生きてる希少動物なの。
シーラカンスみたいなもん?
あんなの、相手にしちゃあ、ユミちゃん、もったいないって、ホント、マジで。
 
アイツは、私が相手してるぐらいがちょうどいいんだよ。
でもね、言っとくけど、私、彼女じゃないからね。ただの幼馴染み。
 
あれねえ、先の展望がないヤツだよ。
ユミちゃんみたいにお金かかる女は、きっと、ヤツがついて来れなくなるよ。
だって、アイツ、お金、稼ぎそうにないもん。
 
ね、そう思うでしょう? でしょう、でしょうーーー!
 
アイツは、ホント、現実的じゃないんだよね。いつも、ちょっと浮いててさ。
フラフラしてるもんねえ。
 
だからねえ、私が、下でひもを引っ張ってやってんのよ。
どっかに飛んでかないようにね。
 
分かった? 止めとくの? 決定?決定! そう。 ああ、よかった。
ホント、止めてよかったと思うよ。
あんた、ラッキーだよ。
ホント、そう思う。

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