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【10回連載小説】タケルとスミカ(5)

【やっとタケルの番だ!タケルの3ターン目】
止めてくれよ、マジで!
ホントさ、ホント。ホントに俺とスミカは、何でもないのー!
 
確かにさあ、学校に来る時も一緒だし、授業も一緒だから、いっつも、一緒にいるイメージになっちゃうんだけどさあ。違うんだよ、違うの。
ホント、俺ら、何もないんだから。
 
スミカ、幼稚園の時から一緒だぜえ。どうして、俺がアイツ、口説くの?
コンパでさあ、酔っ払っちゃってとか? ラブホに行くような雰囲気にするとか?
そんなのできねえよ。第一、そんなん、スミカのお母さんにバレたら、スゲエ事になっちゃう。
もう、今、そんな話しただけで、想像できちゃったよ。おおー、こわ。
 
アイツさあ、確かに、俺と一緒で、いつも何か世話女房みたいで、俺が何もできねえ人だと思っちゃってんだけどさあ。それは、仕方ないのよ。確かに、俺って、スポーツは何でも得意だけど、普通の事、苦手な事、多いんだよなあ。
 
服なんかもさあ、シャツとか、あんじゃん、ワイシャツみたいなシャツ。あれ、ボタンの位置、間違えてたり、平気でするもんな。何か、左の襟が変だなあとか。
 
大体、服、選ぶのだって、苦手だし。高校の時は、学生服か、ユニフォームか、ジャージだったからね。
髪も、ずっと坊主だったから、伸ばしても、どうしていいか、分かんなかった。
 
そうそう、髪延ばし始めた時、最初の美容室、スミカと行ったのよ。スミカのいつも行ってる店に。
でさあ、スミカが、スタイリストさんと、勝手にスタイルブック見ながら、俺の髪型、相談してるんだよ。俺の髪だよ。おかしくない?でさあ、染めるって言うから、それは止めてくれって、言ったんだよ。何かさあ、髪の色、染めるの抵抗感あるんだよなあ。でもね、髪型は結局、スミカが選んだヤツにしてもらった。面倒臭いからね。
 
服も、初めて、セレクトショップ行ったのも、スミカと一緒だった。
冬でね、ダウンが欲しかったんだよ。
そん時もさあ、スミカが勝手に店員と話して、カッコいいダウン、持ってきた。
着てみるとさあ、ホント、カッコいいの。でね、値札見たら、15万もすんだ。ビックリしてさあ。
俺、そん時、ダウン買うからって、3万円、持ってた。到底、足りないし、電子マネーもそこまではなかったし、カッコ悪いけど、その店、出てね。慌てて、ファストファッションの店に行ったよ。
ダウンが8千円ぐらいで、買えた。色とか、形は、スミカが選んだんだけどね。そうそう、俺が冬に着てる辛子色のダウン。あれ、そうよ。スミカの見立て。
着ると分かるんだけど、やっぱ15万のヤツは、カッコよかったよ。
でもねえ、その辛子色のヤツは、何か、俺、似合うんだよねえ。
 
スミカはさあ、俺の着るもの、大体、一緒に行って、選んでるよ。で、大体、俺は気に入ってる。
スミカにさあ、何で、俺が似合うヤツ、分かるんだよ?って、訊いたら、アイツさあ、いつも、一緒にいるんだから、何が似合うとか、分かんない方がおかしいよって、言うんだ。俺は、スミカが、何着たらいいかなんて、全く分かんないのにね。スゲエヤツだよ、スミカは…
 

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