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日本を原(たず)ねて 心の健康 ストレス解消 【白隠えかく(白隠禅師)】

11白隠慧鶴(1685~1768)
 
 白隠は臨済禅の中興の祖といわれ、禅宗の一つであり、禅宗は老子(紀元前571?~紀元前471?)の影響を受けたと岡倉天心は言い、老子がとなえた主義、無為自然より見たい。
 
 まっさきに読む禅の本 秋月龍珉著 勉誠社
 「“無字”の公案」の参究の仕方             171ページ

 老僧は還暦すぎてまだ見性(けんしょう)ができていなかった。そこで白隠に参じた、五、六年通ったが目は開けない。白隠は言った「あと三年“隻手音声”の公案を工夫せよ」その三年もすぎた。白隠は言った「もうあと三か月やってみよ」それでもだめだった。白隠はついに「おまえのような者は、もう死んでしまえ」とどなった。
 死んで師匠にわびるつもりで寺の門を出た。遠州への帰り道に有名な薩埵峠(さったとうげ)がある。断崖の上から夕方の眺めの美しさに、これが今生の見納めだと傍らの石の上に坐りこんで眺めているうちに三味境(174ページ)に入った。いつの間にか夜が白々とあけ初(そ)めていた。「あっ私は死ぬのだった」と崖から身を投げようとしたとたん、朝日の光りがきらりとさし初めた。それを見て、はっと多年の心中の暗雲が開けた。「無」が感覚の縁(ふち)にふれて爆発した。見性できた。
 すべては新しい、すべてが美しい。光っている!しかもふしぎなことにすべてが自己である。天地と我と同根、万物と我と一体である、我と仏と不二である。釈尊も明星を見て悟ったとき、きっと「私が光っている!」と叫ばれたことであろう。「あった!無ではなかった。あった、あった、私が光っている」。「無」がこうした体験でなく、まだ自己にとって概念であるあいだは、禅ではない。           178・179ページ

 あるがままですべての働きをする、このことは日本古来からの生活感情をあらわしている。

見性した時の場面が現代の画家廣木旺我氏の「アニマルランド」2013年で表現されています。「アニマルランド」は次の所で紹介。
*『お~い!お~ちやん』 自閉症の弟と私のハッピーデイズ 廣木佳蓮著廣木旺我著
*NHK WORLD2019年10月27日
  ロバート・キャンベル Face To Face #52 廣木道心

東洋思想と精神療法 東西精神文化の邂逅(かいこう)
 編者 川原隆造・選信夫・吉岡伸一 日本評論社
第一章 東洋思想史と内観  金光寿郎
 今から300年前にも内観法があった。300年ほど前には、禅宗に白隠禅師という人がいて、この白隠禅師の「内観の法」が大変有名であった。13ページ 

       
中国にあった内観の源流「天台止観」
 白隠禅師も自分が説いた「内観法」は、6世紀の中国の偉大な僧侶、天台大師智顗(538~598)が瞑想の方法について書いた、有名な「摩訶止観」の中にある「繋縁(けいえん)内観の秘訣」の大略を説いたものだと書いている「摩訶止観」の「摩訶」は偉大なという意味で、「止観」というのは釈尊が説いた瞑想の方法のうちサマータ(止)とヴィパッサナー(観)を中国語に翻訳したものである。         16ページ

 自分の心の「不可得」と仏教の「無」を現代風に言い換えると。
 松井先生(17ページ)は止観、坐禅の説明の中でよくつかわれる。「心不可得」という言葉について、「この場合の不可得は仏教でいう「無」の意味に使われているのだが、この「無」という言葉は、現代人に誤解されやすいので、<自他の区別>をすてて、永久不変で、絶対に偏見のない、宇宙の真理に<自己>をまったくまかせきってしまう意味に解釈した。」と述べておられる。                   19ページ

 このことは、宇宙と合一している、よって日本古来からの生活感情をあらわしている。

 2500年前に成立していた釈尊の内観法
 6世紀に日本に仏教が入ってたが、それから300年ほど経過した日本仏教に、内観の成果を日常生活に生かす言葉として「涅槃経」の「心の師となるとも、心を師とすることなかれ」という言葉が記録されている。「心の師となれ」という言葉は、9世紀から19世紀までの日本仏教では、宗派を超える著名な仏教者が引用している。私がきづいただけでも、平安時代の恵心僧都(942~1017)、鎌倉時代の鴨長明(1155~1216)、江戸時代後期の鈴木正三(1579~1655)、江戸時代中期の慈雲尊者(1718~1805)にこの言葉が見られる。
                            20ページ 
                         
 「無字の公案」のところで老僧が見性した時あるがままのすべての働きをする。このことは、日本古来の生活感情とおもわれる。


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