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とくし丸と訪問キャンセル。

移動スーパーとくし丸は
訪問先を決めて、週1回もしくは週2回
お家の前まで行き、お店を広げます。

日々とくし丸をやっていると
訪問先が減ることもある。

そんな訪問キャンセル。
今までいくつもの訪問キャンセルを経験してきたが
印象的な訪問キャンセルがいくつかある。

Sさんのお宅は、かなりの奥地にある。
『本当にココ、入って行っていいの?』
っていうような木々が生い茂る砂利道の先に、数軒の家が有る場所に出る。
こんな不便なところ、移動スーパーが来たら嬉しいんじゃないかなぁ
と思って行ったら、Sさんほとんど買い物しない、近所も出てこない。
ここまで不便な場所だと、すでに自分達で買い物なり
食料調達の方法がガッチリ固まってしまっていて
いまさら移動スーパーが来ても入る余地が無かったみたい。

次は、元ふとん屋さんのKさん。
Kさん宅に移動スーパーが来るときは近所のTさん、Mさんも
合わせて買物に来てくれる見込みだった。
ちなみにこの、訪問場所の近所も合わせて来てくれることを
とくし丸では【集約】と言っている。
今回の場合、メインはKさん宅、集約でTさん、Mさんという感じに。

ここはとても思い出深い。
悪い意味で。

そもそも、Kさんの希望曜日が二転三転してなかなか決まらなかった。
何回も調整し直して、やっと初回訪問。
なぜかKさんは、他で買い物をしてきていて
欲しかったけど買い物してきた店に無かったギョーザだけ買ってくれた。

集約のTさんは、ニコニコした腰の曲がったおばあちゃん。
お店を広げたとくし丸を
『なんでもあるのねぇ~、無いものは無いぐらいねぇ~』
と目を細めて見て回ってくれたけど、結局何ひとつ買わず。

もう一人の集約Mさんは、なかなか来ないから家まで呼びに行ったら
旦那さんらしきおじいさんが出てきて
『移動スーパー!?そんなもんいらん!帰れ!』
と一喝された。
おばあさんが話してくれてないのか、覚えていないのか、詐欺だと思われたか分からないけど、話が全く通じない感じなので諦めた。
ここまで清々しいぐらいに訪問キャンセルさせてもらったのは
今の所ここぐらいだ。

そしてIさん。
Iさんの家は、住宅がギッシリ詰まった路地の奥にある。
しかもみんなけっこう年季が入った感じの住宅ばかり。
これはそうとう期待できるな、と思って行ったら
最初の何回かは、近所の人達もポツポツ来てくれたけど
徐々に出てこなくなってきた。
それでも環境的にいつか出てきてくれるだろうと
粘ってけっこう長期間通った。

ちなみにここは、お店を出発して1軒目の訪問先。
朝6時半からお店で準備して、車にビッシリ商品を積んで
もうより取り見取り、という状態。
にも関わらず、誰も来ない。
誰一人出てこない。

お店を広げて、誰も出てこなくて、またお店を閉じるときの
あの気持ちはけっこう精神的にズッシリくるものがある。
頑張ったけど誰にも必要とされていない、あの感じ。
正直、ちょっと泣きそうになる。
ここはキツかったなぁ。
続けて訪問していれば、そのうち誰か出てくるようになったのかもしれないけど、自分の心が持たなかった。

他にいくつも訪問キャンセルとなったところはあるけど
家が不便な場所にある、とか
歩いて行くのが大変そうなおばあちゃんだから、とか
年季の入った家が密集しているから、とか
そういう思惑はほとんど関係無かった。

とくし丸に合う人は、合う。
合わない人は、合わない。

これだけだった。

だから
あんまり期待せずに行ったところが
今では、いつもいっぱい買ってくれる超お得意さんになっていたり。

そして合う人達だけが残っていく。
だから、本当にありがたい、と心から思う。





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