ここから先に光は〜難病からの帰還目指して〜その13
朝食とって暫くしたらいつものように父が。ペーパー差し出す。
ミトコンドリア脳筋症の疑い
みとこんどりあ?
また病気か、今度は何だろう。それにしてもここでは主治医がとんと顔を見せない、みんな父が情報持ってくる。前に入院してた大病院では朝と夕に必ず主治医が声掛けしてくれた、ここではそれがないというのはどうなんだろう。
スマホでミトコンドリアうんぬんを調べた、
「5,6歳頃に発症・・・」
何これ間違ってるんじゃ、とすぐに削除した。暫く忘れていた。
また変わったのが来た。がばっと布団を引き剥がすと、やあとかおうとか言って足を揉み始めた。え何、やあって言われてもどこかで会いましたっけ? とかとぼけていると裏返しにされて腹ばいにされて背中からゆっくり下へ揉み、揉みし始めた。妙に気持ちがいい。慣れている。と思うと引っ張り起こしてダンスのような腕の組み方で廊下へ、以前入っていた病室前を通過しどんどん奥へ。看護婦が通り過ぎる、何も言わない、突き当りを曲がって浴室前を通過。廊下はさらに何処かへ繋がってるけどそこで引き返した。どうやらウォーキングのつもりらしい。病室に戻るとまた来るね〜みたいなことを言い残して去っていった。
来なくていいけど・・・。
緑を眺める。開放厳禁の窓を開けて仕切りに足を、ばっと羽撃く、背中には大きな羽が、飛び立つと見物人がああっとかおうっとか叫ぶ、旧約聖書の出エジプト記みたいだ、大海が真っ二つに割れたがごとき陸地中央をゆうゆうと歩みゆく、行く手には光、まばゆい光が、そこから先にこそ未来は、此処から先に光は、月は星は光りぬ、燦然と輝く光の中を、輝く光に向かって導かれて。
もうすぐ退院
やった、やっとだ。やっと退院できる。お顔を剃ってもらう。シェービングフォームも塗らずに剃刀が当てられる。爪を切ってもらう。鼻毛を切る。はい一丁上がり。若返った。
看護婦やら医師やらやってきた。血圧はきちんと測るようにと念を押される。どこかで一度見かけた医師、メガネをかけた初老の男性、どこで見たんだっけ、確か父と2,3会話しているのを見かけたことがある、のが宣う、はい立って、天付き体操やってみよう~はいいっちに! あれ? 体が動かない。屈むことは出来るが一気に立ち上がれない。ショック。じきに慣れてくるから続けてみて、立ち去る。以後神経内科の担当医として診てもらうことになる医師だと知ったのは後の話。
退院の日。またよく眠れず。枕元には着替。結局入院していた日数は自分の年齢と同じくらいだった。