現実に存在するアイドルを好きになるということ

 生身の人間を推す意味がよく分かりませんでした。いつか死んだり脱退したり炎上したりする現実世界の人間よりも、創作の世界にいるキャラクターを愛する方がよっぽど精神的に安定するだろうと思っているので、アイドルとかクラスメイトを推しと言う人は大変そうだなと思っていました。
 テレビを見たり曲の趣味が違う友達とカラオケに行ったりすることがないので、そもそもアイドルとの接点がありませんでした。Twitterでたまにアイドルのサバイバル番組に関するものを見るくらいでした。話題だし、暇になったら見てみるか、と思っていました。暇になることなんてないので、見ることはないだろうと思っていました。
 そんな昨年の冬、胃腸炎になり、ベッドで時間を潰すしかない状態が数日続きました。好きなコンテンツを消費しきり、暇になったので、サバイバル番組を見てみることにしました。
 面白かった。人間の人生がエンタメになれば、そりゃ面白いのだと理解しました。努力して、辛い思いをしている子が最後にはきらきらのパフォーマンスをするのが美しく、スカッとすると思いました。特に誰が好きというのはないですが、逆境にいる子が輝けば輝くほど素敵だと思いました。そして、配信済みの話は全て視聴し、最終発表はリアルタイムで見ました。番組は終わり、誰が生き残るか分からないハラハラしたコンテンツは終わりました。でも、何故か結成されたアイドルグループの動向を追ってしまう。
 自分でもよく分からないまま、アップされたYouTube動画を見て、インタビュー記事を読みました。成功する要因は運とか生まれ持ったカリスマが大事なのかと思っていたけれど、やっぱり全員努力しているんだなと思いました。そして、彼女らのコンテンツを見続けるうちに、繊細だけどそれを一切見せずにトップに立った女の子や、体調が悪い中でも踏ん張った女の子がいると知りました。
 彼女たちも苦労しているのだから、自分も頑張らなければ、と。今まで二次元のキャラクター相手では抱いたことのない感情でした。
 アイドルなんか関係なしに、周りにいる友人も毎日頑張っているのだと理屈では分かっています。でも、他人の頑張りは自分には見えないから、あの人が頑張っているから自分も頑張ろうとはなかなか思えませんでした。しかし、アイドルは分かりやすい苦労・努力とその成果があります。
 アーティストが生出演してパフォーマンスをする時、どんなに素晴らしい人でも失敗することがあります。どれだけ練習してもその可能性はあるけれど、できるかぎり練習をすることでその可能性を減らそうとしているのでしょう。それならいっそ、生出演せず録画したものを流せばいいのに、と今までは思っていました。生でパフォーマンスする意味がよく分かっていなかった。でも、今日何となくこう思いました。何回でも成功する様子から、その裏の努力の量が想像出来る。想像出来た努力から、自分も頑張ろうと思える。
 生身のアイドルを好きになるってこういうことなのかもしれない、と初めて思いました。

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