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何の期待もなかった母の日の朝いちばんにかけられた言葉

そういえば母の日が近いらしいと、スーパーの母の日フェアを横目で見て何となく認知していたが、5月の第2日曜の今日であることは、特に意識していなかった。義母が存命の頃はアマゾンで買ったチョコを贈ったりしていたが、今はそれもない。夫は過去、母の日だからと特別なことをしてくれたことはなく、今回も特に言及のないまま、海外出張に出かけて行った。意識しなかったというより、期待しないようにしていた。

そんな今日の朝、少し早く起きてリビングで一人過ごしていると、5歳の長女が起きてきて、開口一番に言った。「おかあさん。いつも保育園に迎えにきてくれてありがとう」。え、どうしていきなりそんなこと言うの?「だって母の日だから」

なんだかいろいろ、突っ込みそうになりながら、苦笑して長女を抱き寄せた。

保育園に迎えに行くのは当たり前だけどね。

いやでも、確かに、終業時間を過ぎた瞬間に打刻して、まだ仕事をしている同僚に「お疲れ様です!」とさっそうを装って挨拶して、足早に職場を駆けだすのは、それが出来るから選んだ職場とはいえ、葛藤がないわけではない。残した仕事は夜中にやることになる。

帰宅ラッシュですし詰めの山手線には、息を止めるようにして乗り込んでいる。いつも、韓国・ソウルの梨泰院雑踏事故でみられたような圧死のリスクを思い浮かべる。

タッチの差で駅から出るバスに乗り遅れると、数千円の延長料金が、羽を付けて飛んでいく。保育園の入り口にあるタブレットで、18時59分59秒までに打刻するのは、決してそんなに簡単ではない。

突き詰めれば、その瞬間までに間違いなく打刻するために、転職したようなものだった。

そこまで考えていないだろう長女の言葉は、いつもしっちゃかめっちゃかな母親の、それでも最も大事にしている部分をよく見てくれているようで、驚かされた。

次女の幼い泣き声が聞こえて、寝室まで迎えに行って抱き上げた。

ありがとう。お母さんこそ、あなたたちが保育室から駆け出してくるのを見るのが、一番うれしくて楽しいよ。

母の日の今日は、肌寒さを訴える娘たちに、少し贅沢にミルクを沸かしたホットココアをつくって飲ませた。

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転職、共働き、子連れ様。キャリアのための学び直しと、本当にやりたいこととのギャップ。
転職して数か月。春が過ぎたことにやっと気づいたモグラがまっくらな地中からぼこっと顔を出すように、ときどき投稿していきます。




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