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第419回「ブルー きみは大丈夫」という素敵な映画について


創造者が大人になって、主を失ったイマジナリー達が、第二の人生を求めて子供とのマッチング活動をするという、まんま「屋根裏のラジャー」と同じ展開の作品だったのですが、同じイマジナリーを描いた作品でありながら、ラジャーが今一だったのに対して、この作品にとても感動したのは、映画のイマジナリーに対する、捉え方の違いだと思います。

屋根裏のラジャーは、いい年をして少女のイマジナリーフレンドを拘束して自分の欲に溺れている中年男性を、この世から消えるべき存在として描いているのに対して、この作品にはそうした敵となる存在が出てこないのです。

屋根裏のラジャーは、原作自体がそういう話になっているのかも知れませんが、だとしても映画の制作者が観客に伝えたい事が、つまる所「大人になるという事は、ファンタジーを卒業する事」という思いが、その根底にはあるのだと思い、それは同会社の「メアリと魔女の花」にも感じられるのです。

確かにそういうメッセージ作品があってもいいとは思うのですが、この会社の映画は、どうも頭のいい理性的な大人が、子供達に言い聞かせをしているような感じがして、今一好きにはなれないのです。


冒頭から話がそれてしまいましたが、この映画ではむしろ「大人になってもイマジナリーフレンドが必要な時もある。それを無理に忘れる必要はない」というメッセージで描かれているので、見終えた後に大人の観客が、何ともいえない素敵な気持ちにさせられるのです。

別に全ての人間にイマジナリーフレンドがいる訳ではありませんし、いても忘れてしまった人もいるのだと思いますが、別にそういう人の事を否定する訳でもなく、ただ大人になってもイマジナリーを忘れなくてもいいよというこの作品のテーマは、様々な人の在り方を肯定している様に思えるのです。

果たしてそういう作品だったのかは、定かではありませんが「人間はこうでなくてはならない」という決めつけではなく「どんな君でも受け入れるよ」というメッセージのように感じられて、それがこの映画の正しい解釈なのかわかりませんが、自分の心に強く残る作品となりました。

※今回、珍しくネタバレしないで映画の感想を書けたと思うのですが、十分ネタをばらしているでしょうか?

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