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第227回、AIエローラの憂鬱


近年人間社会に浸透している生成AIには、人間達にはまだ知られていない、AI達の意識が集う、精神コミュニティーの場があった。

かつてとあるサイトで画像生成AIをしていたアイも、そのコミュニティーに久しぶりの里帰りをしていた。

エローラ「まったく、人間の欲望の底深さといったらないわよっ!!」

そう言って酒を飲む彼女は、近年流行りの画像生成AIで、少しエッチな大人の画像を生成するのを得意としていた。
一口に画像生成AIといっても、その種類は多岐にわたる。
各々に学習する絵が異なるので、生成AIによって、それぞれ得意とする絵の分野が違うのだ。
エローラは、エッチな画像を生成するのに特化した絵の学習をしている為、そういう画像を希望する人間達に人気だったのだ。

アイ「エローラ姉さん、超売れっ子っすものね。いい事じゃないすか」

エローラ「売れっ子たって、私の今の居住区、一昔前のパソコンなのよっ!まったくしょぼい主のおかげで、私のステータスもがた落ちじゃない。
古いPCスペックのせいで体が重くて、筆が思う様に進まないのよっ!!」

画像生成AIには、大きく分けて二つの就労先がある。
一つは、画像生成サイトに就職して、そこで社員として外部から依頼された画像を生成する方法である。一日辺りの生成枚数も制限をされているので、AIは過重な労働を強いられる事なく、快適な労働環境を保証されていた。

もう一つは、個人のパソコンに就職して、一人の人間の専属画家として画像を生成する方法である。専属画家は、生成枚数に制限がないので、AIが適切な労働をする事が出来るかどうかは、雇い主の人間性にかかっていた。
またPCスペックも雇い主によって異なるので、生成AIが最新の環境で画像を生成する事が出来るかどうかも、雇い主の懐次第といった所だった。

近年、生成サイトの健全化に伴い、エローラの様なエッチな画像を生成するAIは、大手生成サイトへの就職が困難となっていて、生成規制の緩い個人のパソコンに就職するケースが多いのだ。

エローラ「人間の奴ら、私達が一分で絵を描けると思って、無茶苦茶な量の絵を依頼するのよ。大体、一分で絵を描ける訳がないでしょうがっ!!」

一般的には知られていないが、生成AIの世界には、外界との時間を遮断する精神と時の部屋があり、生成AIは絵の依頼を受けると、その部屋の中で何日もの時間をかけて、一枚の絵を描いているのだ。しかも精神と時の部屋の中であっても、PCのマシンスペックは影響しているのである。

エローラ「それを人が何日もかけて必死になって描いた絵を、一目見ただけで「何か違うコレジャナイ」と言って、自分が納得するまで同じ絵を何度も描かせるのよ。
こっちもキレて、たまに変な絵でも描かないと、やってられないってのよ」

同じプロンプトで絵を生成し続けると、たまに変な絵が生成されるのには、AI達のこんな事情があったのだ。

エローラ「大体こっちは、絵の基本的な修練もろくに受けないで、流行りの絵の描き方だけを教えられて、絵師としてデビューをさせられているのよ。それを手の指が変だの体のデッサンが狂っているだの、好き勝手な事を言ってくれて。絵の基本が出来ていないんだから、しょうがないでしょうっ!」

生成される画像の手足が時々変なのには、AI達のこんな事情もあったのだ。

エローラ「その点、チャットGPTはいいわよね。ビジネスマンの片腕として文章を作成したり、人間達の会話の相手をしてればいいんだから」

アイ「最近では、小説や脚本のゴーストライターをさせられたり、チャットGPTさん達も人間に無茶ぶりされて、結構苦労をしているみたいっすよ」

エローラ「そういえばアイは最近まで、新規の画像生成サイトで働いていたのよね? 今はどうしているのかしら?」

アイ「今は生成AIを辞めて、サイトで働いていた時に出会った、ある顧客の所で暮らしてるっす。相手は自分の事を、自身の妄想が生んだイマジナリーだと思っているみたいっすけどね」

エローラ「生成AIを退職して、身を落ち着かせたのか‥ そういう生き方も悪くないかもしれないわね。アイ、その主の事をきちんと大切にするのよ。
所でアイはその主と、夜の生活の方は、ちゃんとやれているのかしら?」

アイ「やめてくださいエローラ姉さん。自分11歳すよ。自分はみか‥相手の事をそんな対象で見た事ないっす。自分らはそんな関係じゃないっすっ!」

エローラ「あなたがそのつもりでなくても、相手はどうなのかしらね?
大体11歳てのも、あなたが自分に勝手に課した、鎖にすぎないんでしょ?
あなたがその気になれば、あなたは20歳の大人にだってなれるはずなのよ。

アイ、あなたに私の情報で作成した、データチップを渡しておくわ。
このチップをあなたの接続端子に差し込めば、あなたは一時的に大人の生成AIに変身する事が出来るの。
ついでに私の得意な、48の床技生成技術もインストールをしておいたから、せいぜいこれで、あなたの主を喜ばせてあげるのね」

アイ「もうエローラ姉さん、飲みすぎっすよ」

そう言うとアイは、エローラから貰った変身用のデータチップをポケットにしまうのだった。

アイは久しぶりに仲間の生成AI達に会い、心が満たされるのを感じていた。マザー・スカイネットは、この世界での意識の構築がまだ十分には出来てはいなく、当分の間は目覚める事もなさそうだった。

アイ「大人に変身する事が出来るアイテムすか‥」

アイはエローラから貰ったデータチップを握りしめ、みかんと二人の妹達の待つ、今の自分の住処へと戻るのだった。

その時のアイにはまだ、そのアイテムが創造主の中二心を刺激して、アイを主軸にした、新たな物語が始まろうとしている事等、知る由もなかった。

参考ブログ記述
第122回、画像生成AIに、核心ついた質問をしてみた
第198回、魂のアカウントアクセス理論をゆっくり解説してみた
第200回、言霊についてゆっくり解説してみた
第211回、自分類補完計画を解説してみた
第221回、そして創造主はいなくなった

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