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第325回、最弱ヒーロー:ヘルズン


街中に、突如として現れた怪人の前に、一人のヒーローが立ちはだかった。

「お前の事は、知っているぞ、ヘルズン。ヒーローの中で一番弱い、最弱のヒーローだって事もな」

「だったら何だって言うんだ。ヒーローに必要なのは、強さだけではないって事を、お前にきっちり教えてやるぜっ!!」

「戦う前から負け惜しみを言うとは、とんだヒーローだな。言っておくが、俺の価値観は勝つ事だけだっ! 正義も悪も、戦いに勝たなければ、意味がない。戦いに勝てない奴に、意見を言う資格なんてないんだっ!!」

「それは俺も、同感だっ!!」


十分後、ボロボロになっているのは、怪人の方だった。

「おかしい‥俺は、怪人の中でもかなりの上位ランクにいる。それに対してあいつは、最弱のヒーロー‥ それなのになぜ、俺の方が一方的にやられているんだ‥」

「お前さ、さっきから俺の事を、最弱最弱って言うけど、それはあくまでもヒーローの中での話なんだぜ。お前、ヒーローになるのが、どれほど大変かわかってないだろ。ヒーローになるには、SからZまである、異能力ランクの中でも、A級以上の必要があるんだ。

確かに俺は、ヒーローの中では最弱だ。だが異能力ランクは、Aなんだぜ。
お前が怪人の中で、どれだけ強いのかは知らないけど、Aランク能力を持つ俺に、何でお前が勝てると思っているんだ?

お前は、その辺のアスリートが、オリンピックで最下位の選手に、勝てると思っているのか? 大学のお笑いサークルで一番面白いと言われている奴がMー1決勝で最下位の芸人よりも、面白いと思っているのか?」

今一あっているのかわかりにくい、微妙な例えをする、ヘルズンだった。

「ふっわかった、俺の負けだ。だが、ヒーローに必要な事が、強さだけではないと言っておきながら、結局はお前も、強さが全てではないかっ」

「お前は、全然わかってないな。俺は別に怪人が倒せればそれでいいんだ。
俺自身が強い必要はないと思っている。実際俺の強さは、普通の人並みだ。

だが俺の異能力は、相手の強さを赤子レベルにまで下げられる事なんだ。
お前は、今、自分の強さが、赤子レベルにまで下がっている事に、気づいていないのか?」

「く、なんて卑怯な能力なんだ‥」

「お前は、俺が何で、こんな大事な秘密を、敵であるお前にわざわざ話しているのだと思う? もし今、お前に逃げられたら、俺は大ピンチなんだぜ?

逃がさない為だよ。この秘密を知ったお前の事を、俺は絶対に逃がさない。
いや逃がせないんだ。だがそれだけでは、不十分だ。
この秘密を知っているお前を、俺は絶対に生かしておく訳にはいかない。

だってそうだよな? そうしなければ、今度は、俺がやられてしまうんだ。
だからこれは、仕方がないんだ。正当防衛ってやつさ。
お前にも、この俺の気持ちが、わかるだろ?

だから俺は、慈悲の心は持たない。この後にお前が、どんなに改心をしても俺は必ず、お前を殺さなければならないんだ。

お前は、俺がなぜ、ヘルズンと呼ばれているか、知っているか?
俺と戦った相手は、必ず地獄に行く事になるからだ。

当然、お前もだ。
と言っても、お前にはもう、俺の言葉は、聞き取れていないだろうがな。
お前の脳は、既に、生まれたての状態にまで、退化をしているのだから。

でも俺は、お前に手心は加えないぜ。最弱で非情なヒーロー、それが俺、
ヘルズンなんだ」

ヘルズンは、赤子同然にまで退化をした無抵抗な怪人に、とどめをさした。

「他の怪人達と、地獄で先に待っていてくれ。俺もいずれ、そこへ行く。
お前達との再戦は、そこでしてやるよ」

心の中でそうつぶやく、ヘルズンだった。

何がヘルズンらしさかわからなかったので、AI画像で、一番変態っぽい衣装を選んでみました。

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