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第259回、予言の書ノート


199X年、日本に稀代の超能力少年と呼ばれた、一人の子供がいた。
彼は10歳で予知能力に目覚め、様々な事を予言した。
彼の予言は100%的中し、彼が予言する出来事は、必ず実現するのだった。

彼は自分の死も、予言をしていた。
彼は自分が死ぬ前に、可能な限りのありとあらゆる未来の出来事を、一つのノートに書き残した。
数年後、彼は自分の予言通りに死を迎えたのだった。

彼の書き残したそのノートは「予言の書」と呼ばれ、彼の死後、彼の能力を知る世界中の国々や謎の組織が、必死になってノートのありかを探したが、そのノートが見つかる事はなかった。

20XX、少年が死んで数十年後、予言の書は思わぬ形で発見される事となる。
彼の通っていた小学校のタイムカプセルの中から、それは出て来たのだ。

日本政府は、あらゆる事よりも優先してそのノートを確保し、そのノートは超重要国家機密事項として扱われる事となった。

そして今、そのノートが、総理の目の前にあるのだ。

総理は、緊張の余り唾を飲み込んで、恐る恐るノートのページを開く。
そこには10歳の少年が書いた年齢相応の字で、しかしながらノート全体に、びっしりとした文章が、隙間なく書かれていた。

そこに書かれている事のどれもが、驚くべき内容だった。
誰もが知る有名な事件や事故から、日本を襲ったあの未曽有の大災害まで、ありとあらゆる事が、時系列に沿って、事細かく書かれているのだ。
10歳の少年が書いたとは思えないような、株価の動きや経済の変動に、当時まだ存在すらしていなかった、スマートフォンの登場さえも、このノートは予言をしていた。

このノートを手にした物は、世界を掌握する事が出来る。

決して大げさな表現等ではなく、このノートにそれだけの価値がある事は、誰の目にも明らかだった。

それはもはや、十戒や死海文書に匹敵する、いやそれ以上の人類にとっての重要遺産である事は、間違いがなかった。

総理もそのあまりの価値の重さに、ノートをめくる手が震え始めていた。

このノートがあれば、私は現代の神になる事が出来る。

総理の心には、自分自身も気が付かなかった、心の奥底に眠っているそんな野望をも思い起こさせていたのだ。

読み進めていく中で、総理は予言の書のある一節に、目が釘付けとなる。
そこには自分の、総理大臣就任の事も書かれていたからである。

私は、神に選ばれし人間だったのだ。

そう思わずにいられない程、総理はこの予言の書に完全に魅了されていた。

予言ノートには、その後も総理の事が度々書かれていた。
その中には、総理にしか知り得ない様な内容も、含まれていた。

「神、私のそんな所まで、お覗きになられて‥」

もはや総理の中で、予知能力少年は、神にも等しい存在となっていた。

そして長きに渡る予言の書は、その一節を持って、終了するのだった。


「20XX年、このノートは日本政府の手に渡り、総理に読まれる」

そのノートは、的中率100%の、正に脅威の予言書だったのである。

書き始める前はオチに自信があったのですが、意味が伝わるのか、少し不安になって来ました。
ちなみにベースとなっているアイデアは、20世紀少年です。
映画版しか見ていないですけどね。

おまけ
そのノートの最終ページには、明らかに子供が手作りしたとわかるビニールテープで貼られた、袋とじが付いていた。
総理は期待と不安に気持ちをドキドキさせながら、ハサミで切って袋とじを開封する。
こんな気持ちは、青年期にグラビア雑誌の袋とじを開封して以来だった。

神の作りし袋とじとは、一体いかなる物なのか?
肌のあらわな天女の姿人類の命運に関わる、重大な記述が書かれているのを思い浮かべていた総理は、袋とじの中に入っていた紙を見て驚愕する。

そこには、10歳の少年が一生懸命描いたのであろう、大人の女性の裸の絵が描かれていたのである。

総理「神‥」

神は当時、思春期真っ盛りだったのである。

「子供の落書きのような大人の女性の絵」と指示したのに、AIがこんな絵を生成して来ました。
っていうか、AIにこんな表現があったのを、今まで知りませんでした。
落書きだと言っているのに、上手く描きすぎです。
上手すぎて、絵が実体化しているみたいに見えます。
っていうか、実体化しているのでしょうか?
絵なのか実体なのか、どちらなのか、自分にはもうわかりません。

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