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怪談22「ある山の怪異と後輩」

 これは今から27年ほど前の話になります。
 その日はある山の麓にある友人の家でマージャンパーティーしてたんですね。
 雀卓を2台置いて、複数人で酒飲みなが夜な夜なマージャンしてたわけです。
 で、結構な人数集まってますから、遊びがてら後輩たちが顔見せなどにやってきます。
 そんなうちの一人がバイクで彼女とやってきました。
 「ども~っすどうっすか?調子は~」なんて言いながら差し入れのお酒を私たちに渡す。
 「お?すまんな~って、今日は彼女連れ?」なんて話してると「そうなんですよ。でも今日なんか暇つぶしなくてですね~それで先輩たちマージャンやってるって聞いたので顔見せにきたです」なんて答える。

 「そうか~、じゃ適当に遊んでけよ、ゲームとかもあるし~」と、後輩とその彼女を部屋の隅に座らせる。
 ですが、マージャンしてますからあんまり相手はしないんですね。

 そうこうしているうちに「なんか、彼女がつまんなそうなので、ドライブ行ってくるっす。山、走ってきますよ」と言う。

 私たちは「そうか、気をつけろよ~」なんてその時は気にも留めてなかったわけですが・・・。

 しばらくして、その後輩が真っ青で戻ってきたわけです。

 さすがに尋常じゃない感じだったんで、マージャンをしてる皆の手が止まる。
 「どうした?」って聞くと、
 「出た・・・出た!」って言うんですね。
 まあおちつけと、コーヒー出して座らせて事情を聞く。

 するとこういうことだったわけです。
 後輩は彼女を連れて山の中をバイクで飛ばしてたらしいです。
 そしてある場所(場所書くと特定されるので割愛します)を差し掛かった時に、後ろに乗せている彼女の感覚が、なんか変わったそうです。

 それは彼女ではない人の感覚だったらしく、ふとミラーで自分の後ろを確認したそうです。

 すると、乗っていた彼女はいなくなっており、代わりに白い髪の老婆がしがみついていたそうです。
 
 後輩は、パニックになり、振り払おうとするも老婆はしがみついたまま離れない。
 最後は、バイクを停め肘を数回入れると、老婆がバイクから転げ落ちたそうで、そのまま逃げてきたそうです。
 
 そしていま、私たちの前で話しているわけです。

 ・・・・彼女はどうした!となりますよね当然。

 すると「わからない」と答える後輩。

 もう、大慌てですよ。
 白髪のお婆さんなんてどうでもいいわけで、そんなものより、後輩が一人で帰ってきたということは、彼女は山の中の道路に置き去りになっている、しかも下手したら転げ落ちてケガしているかもしれないという、とんでもない話なわけです。

 しかも当時ですから電波なんて届かない。
 後輩の襟首を友人がつかんで「お前、どこに落としたか、どうなったかとかわからないのか!」と怒鳴りつける。
 すると後輩は「わからない」と言う。
 どこか心当たりは?というと、その老婆になったかもと思った場所の名前を言いました。
 「A峠かも・・・」
 (説明が難しいのでA峠とします)。
 そこで、私たちは「あ・・・」となったわけです。

 実は、そのA峠のある場所は「老婆が出る」で有名なんですね。
 もうかなり昔から出るらしく、白い着物を着た老婆が出るとのこと。

 それ聞いて、ほぼその付近だろうと思いつつ、車4台でそこに向かい、後輩の彼女を探すことにしました。

 結果としては、A峠のある場所から少し離れたところ(後から聞いたら、後輩が老婆に肘入れて落とした場所)の近くの道路わきで小さくなって震えながら泣いていたわけです。

 すぐ車に乗せ、マージャンしていた家に連れて帰る。
 肘撃ちをくらって少々顔が腫れていたが、それ以外はそんなに怪我はありませんでした。
 とりあえずその後、病院に連れていき、バイク二人乗りでこけたことにして診せることにしました。

 私たちはその後、彼女を家まで送り届けましたが、マージャンしていた家に残ってたやつらは後輩にブチ切れて、少々折檻したみたいでした。

 ・・・・まあ、もちろんその後輩と彼女は別れましたね。

 その後、だいぶ経って、たまたまその時の彼女と会ったので、お茶でも飲みながらその時の話を聞いたことがあります。
(もちろん、その時の事を聞くためだけにお茶に誘ったわけです。ごめんね)。

 その彼女はもちろん思い出したくない嫌な話だったらしいですが、しぶしぶ話してくれました。
 後輩が、A峠のある場所を通った後、急に「なにしがみついてんだババア!」って怒鳴り始めたそうです。
 まったく意味が分からないと思っていると、振り落とそうとするように蛇行運転し始める。
 必死でしがみついていると、バイクが停まり、鬼の形相で肘を何発も入れてきたそうです。
 で、痛みで手を離した時、またバイクを発進させたため、転げて落ちてしまったということでした。

 ・・・・・その場所は確かに昔から老婆が、特にバイクに乗ってると背中にしがみつくという幽霊話はあったんですよね~。

 でも、なぜ「特にバイク」なんでしょうか?
 そして、今でも「出る」そうですね~。

 ただ、なぜ老婆が出るのかの曰くなどはまったく無いため、本当に意味不明です。

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