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【観劇日記】Catch me if you can

※これはレポートではなく、観劇日記です

岩本照さんの出演ミュージカル、キャッチミーイフユーキャンを見てきた。
岩本さんについては特に感情がなかったためFC先行は申し込まずチケット未所持。ただし人生の伏線回収というばかりに直近の金髪ひーくんが良すぎたためどうにかできないかと思案した末、"主に"当日券で3回観劇してきました。なんかわたしこんなことばかりしている。特に最初のチケット入手に関してはちょっと面白いこともあったので話を聞いてほしいです。


チケット入手の経緯とか

キョードー東京の当日券受付は初めてだったが、内容はこうだ。前日12時に先着受付で翌日公演の整理券を取得→当日番号順に並ばされてチケットが確保された順に入場。詳しくは書かないが毎公演ほぼほぼ入場が可能なある程度の当確番号ラインはある。それ以降は開演10分前に「確保できたら入れる」。
わたしの当日券受付はまず2回チャレンジして敗退、3日目で取得成功した。しかしやっととれた整理券は先の当確ラインと照らすにかなり見込み薄の番号であった。そのためこの番号での入場は難しいことを前提として次の日更に翌日分の受付に挑戦したところ、今度は当落線ギリギリの番号を得ることができた。
整理券のとれている2公演のうち1日目は見込み薄、2日目はワンチャンある番号ということから1日目は並びに行かずそのまま整理券を流すという選択肢もあったが、その日銀座に買い物がありなおかつ当日券取得の雰囲気と流れを見ておきたかったので結論見込み薄の方も流さなかった。この選択が良かった。

整理番号順に整列するとやはりわたしは当確枠には含まれず、前に4、5人いる状況で列を切られた。ここから先は第二弾で入れるか入れないかであり、「入れても見切れになる可能性が高い」そうだ。ここまで説明を聞いて明日もあるからいいかなあ、と思って係員に抜けますと声掛け。買い物をしてさっさと帰ることにする。

そしてわたしが会場を出ようとしたところで見知らぬ女性に声をかけられた。いまキャンセル待ちの列に並んでいましたよねと。
彼女が言ったのはこうだ、「事情があって今日の観劇を見送ろうと思う。よかったら私からチケットを買わないか。」

こんなことがあるか。話を聞くと女性は休演中の仙名彩世さんのファンの方で「見られる精神状態ではない」とのこと。それはそう。ネットで捌くにしても機を逃してしまったそう。
たまたま用事があって珍しく多額の現金をおろしていた財布を開く。ここにきて直近発行開始になった新札を見て「もしかしたら釣りに偽札をつかまされるんじゃないか」ということをまだ考えるが、まあその時はその時だと思ってお札とチケットを交換する。譲り受けたチケットは1階の前方一桁列、代金を上乗せされることはなかった。

ちなみにキャッチミー本編では主人公が偽の銀行小切手の釣銭として現金を受け取るシーンがある。あとで該当シーンを目の当たりにした際、さきほどまで自分が危惧していたことじゃんとばかりにバカウケした。ここでも何かの伏線を回収していく。

この時だいぶパニックであり、どうお礼をするのか適切か咄嗟の判断ができなかったわたしは「絶対にいいことがありますよ!」と繰り返し伝えて頭を深く下げ、その場を後にする女性を見送った。わたしの足元に、ばかでかくて真っ黒なゴキブリが走っていくのが見えたがそれすらあまり気にならなかった。この日の経験を思い返すたびにあの黒い塊が脳裏に浮かぶのはシンプルに最悪だ。
そしてキャッチミー本編ではコーヒーミルに落ちたゴキブリの歌が出てくる。これもまた人生。

そんなこんなでパニックのまま着席。この時もまだ自分に起きたことを受け入れられていなかったためもし偽造チケットであれば座席重複で追い出されるし、仕方ないとかまだ考えている。すると女性に声をかけられる。ああやはり偽造チケットであったか、と思ったら自分が普通に座る席をひとつ間違えていただけであった。バカが代。正しい席に座りようやく先の女性が真の善きひとであることを理解する。
そしてなにひとつ落ち着くことなく、パニック開演。

感想など

実は何も予習することなく詐欺師の話とだけ情報を入れて臨んだのだが内容はこうだ。幸せに見える家庭で育ったフランクJr(以下フランク)は両親の離婚で家出する。ハンサムで頭の良い彼は銀行小切手と身分証を偽装して学校の先生から始まり飛行機のパイロット、医者、弁護士…と様々な顔と名前で生きていく。実話が元になっているブロードウェイミュージカルである。
わたしの知っているブロードウェイ作品は中学の時にLLの授業で見たシカゴだけだ。楽しいことも嬉しいことも、そして全ての不幸を、不運を色鮮やかな視覚と音楽でエンタメに昇華していく。

岩本照さんが演じたフランクは10代ということで、少年の演技のために声を2トーンくらい高く作っていた。岩本照さんは、31歳である。ベースは若きフランクの演技だが、「役」によってはしっかり大人の彼も垣間見えるのでドキドキした。ひーくん様、かっけ〜。

実はこの2日前に京本大我出演回のモーツァルト!を1階A列センターブロックとかいう意味のわからない場所で観劇しており、一幕の最中ずっと「芸能人のひとだ…」という感覚に支配されて全く集中できない、という経験をした。しかしながらこの日のわたしは芸能人が目の前にいることより自分がチケットを掴んだ経緯の方がやばかったので芸能人の発作には襲われなかった。パニックになりながらも、目の前で繰り広げられるものをちゃんと楽しめていたと思う。

まず出てくる女の子すべてが可愛かった。身体のラインが強調された衣装のスカートはインナーが見えるほど短く、ポップな色合いのセクシーが可愛いらしい。なんならちょっと下品まである。男女の絡みが度々登場する本作だが、どこもそのちょっと下品なくらいの「女」を派手に明るく健康的に表現する。女の子が可愛いだけでだいぶ幸せ。
そしてフランクのパパ、シニアの役は我らが新テニの監督役の岸さんである。この舞台の上にのっている人とは全員初対面かと思ったら、新テニを支えていた貫禄と歌唱力で実家のような安心感に包まれてしまう。もう国際フォーラムホールCの椅子はリビングのソファかというくらいの気持ち。息子が成長していく傍ら、一人の男がプライドを持ったまま落ちぶれていく渋い演技。親はなくとも子は育つのはその血が確かに受け継がれたものであるからだ。特にこの作品に関しては。

代役の清水彩花さん。わたしが初めて見たブレンダは彼女の演技となった。病院でいちばん若いナースとしてフランクと出会う彼女は、パワフルな魅力が全身から溢れるチャーミングな女の子だった。彼女の初登場シーンの「Drコナーズ!」が忘れられないくらいかわいい。フランクの目線で舞い降りた天使ってこういう感じなんだろうな、と。喜びも悲しみも戸惑いも、全ての感情が若く瑞々しくてきらきら輝いている。

ひーくんは本当におでこにシワを寄せて喋るし、ふにゃーんって笑う。背が高く身体も大きいはずだが服を着ていると細身の男性のように見える。ダンスは大きな身体をダイナミックに…ではなく、とてもシャープに踊るように見える。動きに無駄が見当たらない。身体を小さく見せないようひとつひとつの動作をはっきりさせてダイナミックに踊る佐久間とは対局にいる感じ。必要以上に身体を大きく見せない、見せる必要のない、ただそのままで背丈の大きな人からしか出てこないナチュラルな迫力みたいなものを目の当たりにしてこのダンスも好きだなあ、と思った。わたしの好きなスノーマンのダンスは佐久間と舘様だけれど、キャッチミーを見てそこにひーくんも加わってしまった。
てか今でこそそもそも橋本涼だの佐久間大介だのをやっているが、わたしは本来公称178cm以上とされるような高身長のシュッとした男が好きなことを、ひーくんを見ることで改めて思い出す。
ふにゃーん。

そして吉田栄作さん、これがめちゃくちゃよかった。
わたしはこの作品を全く知らなかったのでこの作品のヒロインは見たままの通りブレンダだと思っていたが、間違っていた。この作品の本当のヒーローは吉田さん演じるハンラティで、ヒロインはフランクだったと思う。
そもそもブレンダが二幕からしか登場しないというのもまあ納得である。全編を通して伏線を張り、ひとつずつ丁寧に回収していき、自分の信念のままにフランキーを追う彼は最終的に手錠をかけることでフランクの孤独を救う。クリスマスにフランキーと電話するシーンで「奴は子どもだ」と気付きを得るところにしびれた。

わたしはSnow Manのコンサートにまだ行ったことがないが、おそらく全編生歌唱とはならないその機会を前に、最初から最後までごまかしのきかない実力で勝負する場で岩本照さんを見ることができてよかったと思う。

便宜的に比較するような書き方になるが、先の通りこの時は2日前にきょものヴォルフガングを見たばかりというタイミングだった。グランドミュージカルを意識した歌唱で一本立ちしている"京本さん"に対して、本作の岩本照さんは周りに支えられて立っていると感じる要素を多分に感じた。それは決して下手とかじゃないが。
そもそも歌も舞台も性質が全く異なるし、両者最大の武器としているものも違うことは大前提としてだ。あと実は舞台仕事も多い旧J事務所所属のタレントやファンたちがその舞台仕事をどのように捉えているものなのかわたしはまだ知らないし。

あの底抜けに明るくユーモアに溢れたキャッチミーイフユーキャンを中途半端なキャストでやると、うまく言語化できないが本当に陳腐で面白みのないものに一瞬でなりかわってしまう。それを絶対に防ぐためには経験も実力もある強力な布陣で舞台の土台を構築しておかなければならない。
ひーくんはそんな舞台にのるのが上手い。たぶんそれってアイドルだからだ。
ただ用意された舞台にのっかる…というと悪口のように聞こえるかもしれないが、主演からアンサンブルまでただただ上手いだけの人を集めると整った作品にはなるけど、ひとりひとりをただただ平等な作中の登場人物としか扱えない。それは一冊の本や物語としては成功なのかもしれないが、わたしが見たいのは0番の人を文字通り真ん中に置いた役の人生だ。主役はとにもかくにも目立たなければならない。
この異物感と、元々もっているアイドルとしての華…何かあった時に華という言葉に責任を負わせたくないのだけれども、そのようなものが主役としてのパワーと説得力を持たせる。
逆に主役だけが爆裂上手いと脇を固めるキャストは本当にモブにしか見えなくなるだろう。主役が支えられることで全体が輝く、全体の調和がとれる、そんな良さを感じた。だからわたしはスチュワーデスから警官からクリスマスシンガーや空港にいる人々まで、出てくる登場人物全てをこんなに愛おしく思う。

その後の2回は先のキャンセル待ち当日券で入ることができた。1階17列の車椅子席スペースに椅子を置いたS席と、6列最下手の注釈S席であり、どちらも非常に快適。注釈Sについては見切れるかもと事前に案内があったが結果として下手の端が少し見えないだけで全く問題がなかった。初日同様にただただ舞台が近く、人を人として観測できる距離で見られることは良いことだ。

3回目にして出会うことができた仙名彩世さんのブレンダももちろん素敵だった。驚くべきは代役を務めた清水さんと仙名さんは同い年であるのに役の見え方がここまで違うのか、ということ。清水さんのブレンダは病院で一番若いナースであり、若さゆえのパワフルさを感じる役に見える。対して仙名さんはフランキーに逃げられる時の複雑な思い、ここまでの人生においてコンプレックスであったどことなく自信のない感じ、憂いが作り込まれた大人のブレンダであった。実際フランクは相当若くしてさまざまな顔を演じて生きているのだから、ブレンダが病院で一番若くてもフランクよりは若干年上の女性であってもおかしくないはずなのだ。(原作で年齢に言及あったらごめんなさい)
先の仙名さん贔屓の方からチケットをもらった手前このようなことを言うのは憚られるが、わたしは結果としてどちらの方が良いということもなく、ただどちらも見ることができてよかった。

その他、わたしが2.5次元を主戦場にしているオタクだからこそ思うことがある。役ではなくキャストそのもの、つまるところ中の人が垣間見えるようなことをあえて舞台上で、推定ファンサービスとして披露し、客はそれをキャッキャして喜ぶ、みたいなものにあまり慣れない。病院のシーンで「寝る間も惜しんで●●筋を鍛える〜」くらいのネタはユーモアとして楽しめるが、カテコでSASUKEのアレを披露するのはちょっとなし。
それはこの舞台が岩本照さんだけの舞台じゃなくて脇を固める強いキャストたちあってのものだからという意識が強いということもあると思う。公演が中止になった際に「ここにいるのはほとんどひーくんのファンなんだから」というような言葉をどこかで見た。事実ではあるしなんならわたしも同じような悔しい思いをしてきたから気持ちもわかる。わかっていてもただあまりにも傲慢だと反発したくもなる。わかるんだけどね。

おしまい

今年はなぜだかここまでとにかく一般発売や先着に強い。きょモ!も朗読劇もキャッチミーもドリボも全部行きたいと思った時に画面を叩いてとった。反面抽選に関しては、特に昨日発表のツアー当落なんかはもはややる気を削がれるというかシンプルに落ち込む結果。行きたい時に行けないってまあまあしんどい。
ただしわたしもまたミルクからバターを作るねずみなので頑張ろうと思う。とりあえず最近変わったばかりの仕事などを。

次回予告案
さくま朗読劇(宿題)
日本のトップアイドル(宿題)
モーツァルト!きょモと古川モを見て

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