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「死神トーナメント」第1話

あらすじ

死神トーナメントとは…

死神と人間が手を組み、戦うトーナメント。
死神は自らの能力を人間に貸し、人間は命を担保に死神の力を借りる。

優勝者は1つの命を自由に使うことができるが
敗者は相手の死神に命を奪われる。

高校2年生の主人公『シン』には最愛の彼女、ミコトがいた。
ある日、二人は殺人鬼に遭遇し、ミコトだけが殺されてしまう。

「私の分も生きてね…」

強く生きたい、そしてミコトを生き返らせたいと願ったシンの前にメルメラと名乗る死神が現れる。

「小僧…俺と組め。お前の恋人の命を奪ったのは、死神トーナメントの参加者だ」

ミコトを生き返らせるため
シンは死神トーナメントに足を踏み入れていくこととなる…

第1話:「死神トーナメント」

高校の道場。夕陽が差し込み、部員たちの竹刀が交錯する。
怒号の声が響く中、中心に立つのは剣道部のエースであり、この物語の主人公『シン』。高校二年生である。
彼の竹刀さばきは風のように軽やかだが、攻撃は鉛のように重い。
普段は温厚な性格だが、試合となると鬼神のごとき攻めを行うので、部員からは一目置かれていた。

練習を終え、正門に向かう彼に声をかける女性が一人
「シンちゃん、今日もお疲れ様♪」
シンの幼馴染であり恋人の『ミコト』だった。
吹奏楽部の練習を終えたミコトはシンと一緒に帰る約束をしていた。

すっかり日も暮れた道を並んで歩くシンとミコト。

「今日の英語のテスト、どうだった?」
ミコトが尋ねると、シンは少し苦笑いを浮かべた。

「まあ、なんとかね。練習で時間取られちゃってさ。でも、次はもっと頑張るよ。」

「うん、シンなら大丈夫だよ。でも、勉強も大事だからね」
とミコトが優しく言うと、シンは頷いた。

「ミコトには心配かけないようにするよ。」

「そういえば、今度の土曜日、一緒に図書館行かない?新しい本が入ったって聞いたんだ。」

「いいね、それ楽しみだな。ミコトと一緒ならどこでも楽しいよ」
とシンが微笑むと、ミコトも笑顔になった。

二人は手を繋ぎ、夜道を歩いていく。まだ高校生だが、これからの未来を見据えて歩む姿が、街灯の照らす街並みに溶け込んでいた。

二人が人通りの無い道に入った瞬間、突如ミコトは全身を切り刻まれる。

「何が起こった??ミコトーー!!?」

目を凝らすと、ミコトの後ろにフードを被った男が立っているのが確認できる。

《ウーウーウー》
たまたま出動していたパトカーの音に気付き、男は逃げていった。

目の前のミコトが助からないのは明らかだった…
「何だろこれ…ヤダ…もっとシンちゃんと楽しい思い出いっぱい作りたかったのに…シンちゃん…………私の分も生きてね…」
それが最期の言葉だった。

「うわぁぁぁぁあああ!!!」

なぜ自分だけ生き残ったのか?
なぜ彼女は殺されなければならなかったのか?

混乱と絶望のシンの前に、突如異形のモノが現れた。
両腕には筋肉と同化した剣のようなものがあり、人間にはあり得ないキバと、爬虫類のような鱗がまばらに付いている。

「小僧…俺と組め。お前の恋人の命を奪ったのは、死神トーナメントの参加者だ」

理解の追いつかないシンに異形のモノは続ける。

「警察があの男を捕まえるのは無理だ。俺様と一緒に来い、復讐をさせてやる。しかも、上手くいけばお前の恋人を生き返らせることもできるぞ」

異形のモノは更に続ける。
「俺はメルメラ、死神だ。本日をもって、お前らの世界は死神トーナメントの舞台に選ばれた。トーナメントは死神と人間が手を組み、戦う。
俺たち死神は自らの能力を人間に貸し、人間は命を担保に死神の力を借りる。優勝した人間は1つの命を自由に使うことができるが、敗者は敵の死神に命を奪われる。やるか?」

理解の追いつかないシンだが、何故か異形のモノが発する言葉を疑うことはなかった。
腕の中のミコトの感覚があまりにリアルで、夢だと疑う思考が消え失せていたのだ。
「やつを殺せるなら何だってやってやるよ。それに、優勝すればミコトを生き返らせることもできるんだな?」
「交渉成立だな」

メルメラと名乗る死神はつるぎのような両腕で突如シンに斬りかかった…!
「何ッ…!?」
反射神経抜群のシンも一瞬何が起こったかわからなかった。

身体にダメージは無い。メルメラの腕の先を見ると青白い光のようなものが串刺しにされている。
「これはお前の魂、そしてこっちが俺様の魂だ。俺たちはこれから一心同体。お互いの魂を契約の鎖で結ぶ。裏切りは決して許されない。お前が死ぬ時は俺様が死ぬ時。俺様が死ぬ時はお前が死ぬ時だ」

そう言い終えるとメルメラは、光る鎖のようなものでお互いの魂を結び、各々の身体へ戻した。

「よろしくな、相棒」
「ああ、よろしく…」

ミコトの葬儀にて

最愛の恋人を失ったシンの目に涙は無かった。ミコトの両親から最後に顔を見てあげてと言われ棺桶を覗き込む。

(待ってろよミコト…絶対に生き返らせてやるからな…)

そう誓ったシンは火葬には参加せず、足早に帰路についた。
「彼女は生き返るんだから火葬まで見る必要はない」
誰に聞かせるでもなく、自分に言い聞かせるようにシンはつぶやいた。

ミコトの死から数日、死神トーナメントの全容がわからないシンはメルメラにいくつかの質問をし、答えを得ていた。

  • 優勝商品で死者を生き返らせる場合、遺体がなくても復活が可能。

  • 死神トーナメントは5000年以上前から何度か行われてきた。

  • 優勝者はほとんどの場合、時の権力者となっている。

  • トーナメント表の全体は見れないが、次の対戦相手である人間の顔は知ることができる。

  • 無差別にミコトの命を奪った男のように、死神の力を得て殺人鬼になる者もいる。

  • トーナメント参加に選ばれるのは"生"への執着が強い者。

  • 負けた人間と死神は相手の死神に魂ごと喰われる。

  • 死神は参加者の魂を喰えば喰うほど、より強力な力が使えるようになる。

シン「なるほど、勝ち進めば勝ち進むほど、敵も強くなっていくってわけか」

メルメラ「理解が早くて助かるよ。無いとは思うが、このトーナメントから降りようなんてもんなら俺がお前を喰うからな。生き残る方法は優勝する、それ以外には無い」

シン「わかってるよ。そんなことはしない。もう後戻りができないことはわかってる。俺はミコトを生き返らせるために他人の命を奪う覚悟を決めた」

メルメラ「安心したぜ」


それから数日、シンは街に出ては一回戦の対戦相手を探していた。
お互いに顔は知っている状態、不意打ちに合えばそこで即終了してしまう可能性もある。
シンは周りの友人も心配になるくらい、日々殺気立っていた。

次の対戦相手はミコトの命を奪った相手ではないかも知れない。だがシンはその男と対峙さえすれば必ずわかるという確信があった。

一日中街を歩き、気がつくと今日も日が暮れていた。

「なぁメルメラ、相手の顔は見せてもらったけど、こんな情報だけでお互いを見つけるって不可能じゃないか?」

「心配するな、対戦相手とは運命に導かれ、必ず会う日が来る」

「そうは言っても、ずっと神経を張ってるのって結構疲れるんだぜ…?」

そう言い終わろうとした瞬間、シンの肩に激痛が走った…!

「痛ッ…!!?」

「来たぞ、集中しろシン」

振り返ると、目に焼き付けた顔の男がこちらを睨んで立っていた。
場所は路地裏。
相手もこちらを探していたということか。

対戦相手は中年の痩せ型の男で、ヒゲを生やしていた。
焦点はどこか定まっておらず、背中からクモの脚のような触手を何本も生やしている。どうやら相手の死神の力はその触手で戦うものらしい。

瞬間、シンはメルメラの剣のような腕を自分に同化させ、男に切り掛かった。

メルメラ「死神トーナメント 一回戦の始まりだ」

月の光が二人の異形を浮かび上がらせ、究極の緊張感が空気を支配している。

「不意打ちとは卑怯な野郎だ!」
シンは叫び、剣を振った。

「卑怯?俺たちは命のやり取りをしてるんだぜ?卑怯もへったくれもあるか!!」
クモ男は冷笑し、脚を広げた。動きは異様に素早く、瞬時にシンに襲いかかる。

シンは一瞬で横に跳んで攻撃を避け、鋭い剣でクモ男に斬りかかった。しかし、クモ男もまた素早い動きでそれを回避し、反撃の一撃を繰り出す。蜘蛛の脚がシンの腹部を狙い、串刺しにしようとする。

シンはその攻撃を避けきれず、辛うじて剣で受け止めたが、衝撃で体が後方へ弾き飛ばされる。シンはすぐに体勢を立て直し、再びクモ男に向かって突進した。

「お前に恨みはないが、お互い様だからな!!」
シンは叫び、両腕の剣を交差させてクモ男に斬りかかった。クモ男は脚を器用に使い、シンの攻撃を防ぎながら反撃を試みる。その動きはまるで舞踊のように滑らかだが、狂気的な鋭さを持っていた。

クモ男は次々と脚を繰り出し、シンを包囲するように攻撃を仕掛ける。シンはその連続攻撃を受け流しながら、隙を見つけようと必死だった。
彼の剣は一瞬も休まずに動き続け、蜘蛛の脚と剣の激しいぶつかり合いが夜の静寂を破る。

「こんなものか、一回戦の対戦相手は!!」
クモ男は嘲笑し、さらに激しく攻撃を繰り出した。蜘蛛の脚がシンの背後から襲いかかる。シンはその攻撃を避けるために体を捻ったが、全てを避け切ることはできなかった。

「ぐっッ…!まだまだだ!!」
シンは叫び、両腕の剣を一閃させ、油断したクモ男の脚を一本斬り裂いた。しかし、クモ男は怯むことなく次々と攻撃を繰り出し、その圧倒的な速さでシンを追い詰めていく。

シンは激しい攻防の中で体力が削られていくのを感じながらも、決して諦めることなく戦い続けた。クモ男の脚もまた傷つきながら攻撃を続ける。

「お前をここで倒さないと、ミコトが生き返れないんだよぉぉおお!!」
シンは力強く叫び、最後の力を振り絞ってクモ男に突撃した。両腕の剣が一つの閃光となり、クモ男の心臓を狙って突き進んだ。しかし、クモ男もまたその動きを見抜き、脚を防御に使って攻撃を防いだ。

「誰だか知らんが、くだらん理由のためにトーナメントに参加したんだな!この力を使って人を殺す快楽を知れなかったキサマが不憫だ!!」

「は?」
シンは怒りを感じると共にどこかで安堵した。
「一回戦の相手がお前のようなクズで良かったよ!!これで罪悪感なく戦える!!」

二人の激しい攻防は続き、夜の静寂が再び彼らを包み込む中、異形の戦士達は息を切らしながら戦い続ける。月光が再び彼らの姿を照らし、お互いの体力を奪っていく。

壮絶な斬り合いの果て、一瞬の隙をついてシンがクモ男の頭を貫く…!!
その瞬間、男の身体が固まった

メルメラ「ニンゲンの生命力は底を尽き、死神の魂は負けを認めた!
よってこの勝負、俺たちの勝ちだ」
敵の死神「待ってくれ、俺はm…」

バクゥッ!!!


突如メルメラの口が大きく開き、男を死神ごと丸呑みした。



雨が降ってきた。
シンは人を殺したことが夢ではないと悟り、恐怖と自責の念に駆られ、狂ったように泣き叫び、そのまま気絶した。

夢の中でミコトとの楽しかった思い出が蘇る。
もう一度彼女に会いたい…

「もう後戻りはできない…
待ってろよミコト…絶対に生き返らせてやるからな…」


死神トーナメント
第1話
終わり


死神トーナメント 第2話
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死神トーナメント 第3話
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補足説明:4話以降の展開

参加者との出会い、そしてトーナメントを勝ち進んでいくことがストーリーの軸になります。

徐々に明らかになる設定

死神について:

死神は基本的に生物と武器の中間のような外見をしている。身体が弓や斧のような形をしていたり、タコの触手のようなものを持つものもいる。
中には重力や熱を操ったりと、特殊能力を持つものもいる。

実は死神は元々人間で、中盤でメルメラも愛する人を助けるために死神になったと判明する。

今後現れる対戦相手:

優勝商品の命で第二の人生を謳歌しようとするもの。
シンと同じく、大切な誰かを生き返らせようとする者。
人の命を奪うことに快感を覚える者。
etc…

主人公、シンの葛藤:

様々な背景を持つ敵と戦い、命の重みを痛感するシン。

これまで自分が命を奪ってきた対戦相手のことを思い出し、
本当にミコトを生き返らせるのが最善の選択なのかと葛藤する。

トーナメントを降りることはできない。
優勝したとしても、与えられる命はたった一つ。
シンは戦いを通じて生き返らせたい人が大勢できてしまった。

その他の主な展開:

・"時の死神"の能力で過去に遡り、メルメラが死神になる切っ掛けとなった出来事に立ち会うシン。愛する者のために死神となったメルメラの罪と葛藤を知り、シンは過去を変えるか、現在を受け入れるかの選択に迫られる。
更に、5000年前の第一回死神トーナメント開催の瞬間も目撃する。

・死神の反乱
死神も一枚岩ではなく、トーナメントに参加できなかった者や、現在の主催者に不満があるものなどが反乱を起こす。反乱により死後の世界と人間界のバランスが崩れそうになり、シンとメルメラは他の参加者や死神と時に協力し反乱を鎮めようとする。

・古代死神
トーナメント外で死亡する参加者が続出。
古代から存在する伝説の死神が蘇り、多くの参加者は場外戦を仕掛けられていた。

・運命の死神
メルメラは運命の死神と出会い、自分とシンの運命を知る。
何故かシンには詳細を話さず、メルメラは一人葛藤することになる。


物語の終盤:

準決勝:シンはミコトの命を奪った男と準決勝で戦うことになり、奇しくも勝利を収める。

決勝戦:相手はなんと1000年前に行われた前回の死神トーナメント優勝者。
彼は優勝商品の命を、次の死神トーナメント開催時に自分自身に使うよう、相棒の死神に指示していた。
2回分のトーナメントを勝ち上がってきた敵は並大抵の強さではない。
何より命を奪うことにあまりにも躊躇ちゅうちょがない。

戦いの終盤、シンは敵の毒を浴びてしまい、24時間後の死が確定してしまう。
勝っても救えるのは自分の命か、他の1人の命のみ…

シンとメルメラは最強の敵に勝利し、命を手に入れることができるのか?

そして優勝者が選択する命とは…?

#創作大賞2024 #漫画原作部門


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