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「死神トーナメント」第2話

死神トーナメント 1回戦から一夜が明け、シンは魂が抜けたように無気力だった。
学校も休み、ミコトとの思い出が詰まった河原でただただ時間が過ぎるのを感じていた。

メルメラ「おい」
シン「………」

メルメラ「おい!」
シン「……………」

メルメラ「おい!!」
シン「…………………なんだよ」

メルメラ「聞こえてんなら返事ぐらいしろってんだ。こうしてる間にも2回戦の相手が襲ってくるかも知れねえってのに」

シン「やめてくれ、お前を見ると人を殺したのが現実だって認めざるを得なくなる…」

メルメラ「まだそんな腑抜けたこと言ってんのか?お前は人を殺したんだよ!! 自分の願いを叶える為にな!!」

シン「………」

メルメラ「死神トーナメントが何回戦まであるかは俺様にもわからん。優勝する為にはあと何回も勝ち上がらなきゃならねぇってのに、最初からこの調子じゃ早々に殺されちまうぞ?」

「わかってるよ、もう後戻りができないってことぐらい…」
シンは悔しそうに、そして哀しそうに答えた。

シン「なぁ、お前たち死神はなんで自分の命をかけてまでこんなトーナメントを開催してるんだ?死神だって死ぬのは嫌なんだろ?」

メルメラ「死神おれたちの好物は人間が最も生きたいと願う時、そして大きな希望が絶望に変わる瞬間の魂だ。それが最も旨く、価値がある。
我々死神にとって1つの命を渡すという優勝商品は大したものではない。それよりも何試合も行って人間の極上の魂を食べられる方が価値が高いんだよ」

シン「なるほどね……そう言えば、あの死神を喰ってお前の能力はどう変わったんだ?死神を喰う度に強くなるんだろ?」

メルメラ「あいつは所詮雑魚ざこ。大した力は得られなかったな…」

シン「いいから言えよ、お互い隠し事はナシだ」

シンが言い終わるかどうかの瞬間、何かが彼の頬をかすめ、うっすらと血が出た。

メルメラ「言葉遣いには気をつけな、シン…俺はあくまでお前を利用させてもらってるだけだってことを忘れるな?」

メルメラを睨むシンは、同時に自分の背後に飛んだものの正体を確認した。

シン「これは…?!ウロコ…??飛び道具か…??」

メルメラ「そーだ、もっとも、威力はネズミを殺せる程度だがな。防御に使えないこともなさそうだ。」

シン「いや、十分だよ、遠距離から牽制けんせいができるようになったのはデカい」

メルメラ「やっぱり変わった野郎だなお前は」


舞台は変わり、とある真夜中の病院

高校一年生のマモルは数日前に不治の病で余命宣告をされていた。

医者の言葉を聞き、泣き崩れる両親の顔が忘れられない。
彼は自分の命が残り少ないことを感じながら、病室から呆然と夜空の星を眺めていた。

「何で僕ばっかりこんな目に…」

幼い頃から身体が小さく、虐められてきたマモルは絶望を感じていた。
思い返せば自分の人生でいい思い出なんて一つも無かった…
せめて平穏に暮らしたかったのにそれすら叶わないなんて…

「悔しいよ…」
マモルが涙を流した瞬間___
目の前に異形のモノが現れた…!

「オマエ…死ぬのが怖いんダロ?」

ゾクッ…!
マモルは異形のモノのオーラに圧倒され、恐怖とパニックで動けなくなった。

「コノママ死ぬのと、生きるタメに足掻くのと、ドッチがイイ?」

なぜかはわからないが、マモルは目の前で起こっていることが現実だと信じられる確信があった。
「生きたい…!僕は生きたい!!まだやりたいことが山ほどあるんだ!死にたくないよ!!」
マモルは魂を震わせて答えた

「イイだろう…」


それから数日後

とある高校の不良グループが針で刺されたような傷跡を残し、死体で見つかかった。マスコミは大々的に恐怖を煽る報道を行なっている。

シン「メルメラ…これって…」

メルメラ「間違いない、死神トーナメントの参加者だ」

シン「死体が死神に喰われず残ってるってことは、被害者はトーナメント参加者じゃない。死神の力を私怨で使ったってことだな…」

ニュースを見ているとシンとメルメラに衝撃が走った

次の対戦相手が映っている…!

クラスメイトへのインタビュー映像が流れる中、背後に映る生徒の集団の中に対戦相手の顔を確認することができた。
映像にはモザイクがかかっていたが、二人にはそれが次の対戦相手だとはっきりと感じ取ることができた。

シン「この学校の生徒ってことか…!」

メルメラ「そのようだな」

報道ではプライバシーの観点から各種実名は公開されていない

シンはスマホを取り出し、SNSで一斉に検索をかけた

シン「あったぞ…!事件があったのは私立農東のうとう高校ってとこみたいだ!生徒の一人がつぶやいている!」

メルメラ「難儀なもんだな…」

シン「場所は…ここから電車で一時間もかからない…!行くぞ!」

農東高校にて

マモル(やってやった。僕のことを虐めていた奴らを皆殺しにしてやった。どうせ僕も何もしなきゃこのまま死ぬんだ。復讐ぐらいしたってバチは当たらないよね…?
それにこの死神トーナメントってやつで優勝すれば一つの命を自由にすることができる。僕は優勝してその命を自分に使う…!昨日戦った1回戦の相手も大したこと無かった…やれるぞ、僕は生まれ変わったんだ!!)

マモルは復讐のため、そして生き延びた際に普通の学園生活を送るため、親に無理を言って通学を再開していた。

帰宅するために正門を出ると、異様な気配を感じ、一人の男と目が合った。

シン「お前が2回戦の相手か…」

マモル「ゴクリ…」

二人の間に静寂が流れるが、お互いの利害が一致していることは直感でわかった。

シン「ここだと人目が多い。俺もお前も日常生活を壊したくなないはずだ。場所を変えよう」

廃墟となった団地

マモル「ここなら誰も来ないよ、老朽化して取り壊す予定だからね」

シン「助かるぜ……念の為聞くが、お前の高校の生徒が殺された事件…あれはお前の仕業だよな?」

「だったらどうした?!!正義の味方にでもなったつもりか!!?」
マモルは怒りを吐き出しながら答えた。

シン「いや、俺も自分の願いを叶える為に人を殺した。ただ、トーナメントに無関係の人間を殺すのはどうかと思ってな」

マモル「うるさいんだよッ!! 誰も僕の苦しみをわかってくれなかったくせに…! 僕のことをわかった風に語るなァ!!!」

マモルは怒りの咆哮ほうこうを放つと死神と同化し、背中から無数の針を伸ばした。
「ここでお前も倒して僕は次のステージに行く…」
マモルは冷たい目を光らせ、針をゆっくりと動かしながら言った。

メルメラ「さぁ、死神トーナメント 2回戦のはじまりだ…」


死神トーナメント
第2話
終わり

#創作大賞2024 #漫画原作部門

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