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中島みゆき 夜会「リトル・トーキョー」本編

 2023年7月時点で最新の夜会「リトル・トーキョー」。おそらく当人の体力ペース配分を鑑み、ヘルプで「共演者」すなわち歌唱と演技が出来る人を招くのがここ数年の傾向だった。今回の共演者は渡辺真知子。かもめが飛びまくるのかどうかはさておき、舞台は北海道?営む旅館、小さな舞台「リトル・トーキョー」。「ウィンター・ガーデン」を彷彿とさせる雪とか寒さを取り入れたシナリオ。クリスマスも近い。
 ここはトーキョー リトル・トーキョー
 東京にはないトーキョー
 世界中によくある 幻の場所
 夢見て上京して叶って大人気バンドマンになったが家の事情で帰ってきた近所のおいちゃん。ステージに上がっては見事な歌声を披露。主人公(中島みゆき)の姉で、世界をあちこちエンタメ放浪していたが、ワケアリで久々に帰ってきた姉が渡辺真知子。姉もステージに上がれば派手に歌える。
 今回は十数年振りに既出曲を数曲採用。全部新曲だと歌詞を追うのに必死になるので、既存曲はそのメモリを他にさけるのがよい。中島みゆきは・・・とすると主語が大きすぎるので、考え直し、夜会はざっくり「ファンタジー」と「バリ現実」に分けられると思う。今回はそのハイブリッドで、バランスがちょうどいい。また、中島みゆきの全力が来るぞ来るぞとこちらもずーーーーっと守備を固めっ放しでは疲れるので、息を抜ける箇所を入れてくれる作りになっていると思うのだが、その緩急のバランスもちょうどいい。
 この世界では、山に山犬が生息しているようで、主人公は「つらら」という雌犬を可愛がっていた。それが3匹の子犬を産んで、末っ子が「こゆき」と名付けた女の子。クリスマスの飾り付けも進んだある雪の夜、山に入った密猟者が山犬を狩った。主人公は慌てて雪の中を飛び出していく。雪崩れが起きて、主人公は数日経てども帰ってこない。姉もおいちゃんも近所の人々も心配で旅館に集まっている。そんな中、つららが撃たれたと嘆いて帰ってくる主人公。そして、拾った女の子「こゆき」をしばらく育てたいと言う。所作からして他にもいろいろ定かでないこゆきは人々からそれぞれ歌や踊りを習い、だいぶ様になってくる。言葉遣いもずいぶん上達する。みんな一緒に明るくコミカルに歌い上げる「リトル・トーキョー」。
 そこに捜索隊から速報が入る。雪崩れを発掘していたら、密猟者の遺体、撃たれた山犬の遺体、そして主人公の遺体が見つかったと言う。
 「ばれたか〜」
 そう、こゆきを連れて帰ってきた主人公は幽霊的なサムシングだった。そこに山犬の遠吠えが響き渡る。父さんが迎えに来た!と山犬鳴きするこゆき。そう、予想通りこゆきは、ファンタジー的な何某かの力で人間の姿をしているが、あの山犬の末っ娘「こゆき」だったのだ。遠吠えを返すこゆき。こゆきを送り出す本編ラス曲「放生」が力強く、素晴らしい。
 さあ旅立ちなさい もう歩いてゆけるわ
 さあ悲しみを越えて ゆくべき世界へ
 命あるもの全て終わりはある 別れもある
 解き放て解き放て 輝いていてくれるように
 主人公は玄関ドアを開け、こゆきを山に送り出す。・・・が、曲の途中でこゆきが慌てて返ってくる。www
 「あらら、戻って来ちゃったよ〜」緩急のフェイントくらってσ(・_・)、爆笑。
山犬父さんの報せで、間もなく大きな山崩れが起こるから、大きな家に居てはいけない、リトル・トーキョーに避難しなさいと主人公達に伝言を告げる。そして改めてこゆきは主人公にお礼して、お別れを惜しむ。
 轟音が響き、暗転。照明が復活すると、無事助かった人々が互いの無事をなだめ合う。それを眺めた主人公はもう心残りはないのであろう、最後にもう1度「放生」を歌い上げ、ロングトーンを放ってキラキラになって天に召される。
 さあ旅立ちなさい もうすべて変わるとき
 さあ踏み出してごらん 行くべき世界へ

 今回の夜会は輪廻転生を歌っていない。ようやっとその長い長いループから解放されたのだろうか。上記の通り「リトル・トーキョー」は、幽霊も人の姿を借りた山犬も、ワケアリで逃げ帰ってきた姉も、土地を手に入れるべく黒幕(泉谷しげる:声のみの出演)が差し向けた刺客も、その刺客を心配して身分を偽って近所に追って来た愛人も、楽しく踊って歌っている。黒幕はさておき、みんなそれぞれにこの居場所にいるのが楽しいのだろう。

 夜会がここで停まっているので、今後どうなのかは一切わからない。いつか近い未来、吉報が入るのを楽しみにしているファンのうちの1人である。


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