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10年ぶりの新小岩

品川から総武線直通の快速に乗り換え、気がつくと乗り過ごして新小岩に。

約10年前にお別れした女性の住む街。
これまで足を踏み入れてはいけないとボクの中で禁忌になっていた街。

決して意図があったわけじゃなく、たまたま乗り過ごして下車するんだからと勝手なエクスキューズを決め込む。

10年ぶりに降り立った新小岩は駅ビルが出来ちゃっていて、昔とすっかり変わってしまったところと全く変わらないところがごちゃ混ぜになっている。

「今時、駅ビルがない駅なんてあんまりないよね」
そう彼女に軽口を叩いていたことを懐かしく思い出す。

この商店街を二人並んで歩いたな、とか。
この歩道で周りを気にしないで大喧嘩したな、とか。
この駐輪場から彼女が自転車で帰宅する際、姿が見えなくなるまで手を振って見送ったな、とか。

人に見られてはいけない関係だったのに不思議と周りを憚らなかった。今、考えれば危険極まりない。

二人でよく利用した懐かしの居酒屋「木もれ陽」に向かったが、満員で断られてしまった。これは彼女の気持ちをきっと暗示しているんだと諦めざるを得なかった。

仕方ない。さて、どうするか?
ふらふら歩いていると窓の中からマイクを握って歌いながら笑顔で手招きしている女性がいる。

え、ボク? ま、いっかとその店に入ってしまった。

オープンしてまだ半年ですという男性スタッフ。
店名は「宴ホールヘイヘイホウ」
変わった店名だ。

図々しくも手招きしてくれていたその女性を含む
女性客3人と同席させてもらった。

そのうちの一人は紗栄子さんにソックリ。
聞いたら、よくそう言われるって。やっぱりね。

その紗栄子さんはお連れが先に帰って、1人店に残り、初対面の2人、高校時代の同級生という2人と意気投合して3人で盛り上がっているという。

名前を聞かれ、ゆたかって呼んでと言ったら、じゃ尾崎豊を歌えって3人いうから、10年逢っていない彼女のことを思って、I Love You を歌った。

楽しく飲んで歌って楽しい1時間を過ごさせて
もらった🎤🎵

きっとまたくる。
だっていい店があるんだもんという新小岩で
下車する格好のエクスキューズができたのだ。

深夜か今朝か地震の揺れを遠くで感じながら、夢を見た。別れたその彼女と寄りを戻す夢。
抱きしめた感触が10年前と何も変わらなかった。

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