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読書#21「脱・失敗学宣言」著:中尾政之
どんな本?
本書では、「ICT活用の失敗学」の上述の三つの問題点、「違和感不足」「議論不足」「リソース不足」の解決策を、しつこく手を変え、品を変えて述べる。
まず失敗学とは何かを教えてほしい。
この本を読む前に想像していた構成は、これまで提唱されてきた失敗学の概説、失敗学の問題点の指摘、そして新しい思考法の提案および実証例のようなもの。
しかしながら、私の読解力の問題もあると思うが、どうにも上記のような構成になっていない。まず失敗学とは何かが中盤に至るまでわからない。というより、予め知っている前提で話が進む。
おそらく著者の前作を読んでいることを前提に書かれているのだろう。私の失敗を繰り返さないために、この本を読む前に以下の本を読んだ方がよいかもしれない。ちなみに私は読んでいないので、ちゃんと前説になっているかはわからないが。
何か半分くらいコラムで埋め尽くされているし、私としては読みにくかったのだけど、中身はいいことが書かれている気がする。
いいかんじの読み方があったら教えていただきたい。
気づきは?
自論を持つことが大事
そういえば、筆者も研究室の学生には「自論を持て」といつも言っている。
間違っていてもいいから自分の意見を持てと著者は述べている。これを私なりに解釈すると、仮説を立てろということだ。
これは大学で研究を行ったことのある者ならば身に染みているだろうが、研究とは過去の文献を読み込んだうえで、仮説を立てることから始まる。
その後に、理論を立てて、実験して検証する。実験してみたら、うまくいかないこともある。けれども、間違っていたら間違っていたでそれも知見となる。そういう論文もよく見かける。
失敗学とは
片端から組織内の失敗の情報を集めて、その中から共通的・一般的・反復的な上位概念を知識として抽出し、それを構成員に教育し、安全装置を設計した。
たぶんこれが従来の失敗学を説明したものだと思うのだけど、つまり、失敗の情報をちゃんと集めて一般化したもの、である。
失敗集ではないことが肝要だ。ただの失敗の寄せ集めではなく、個々の失敗について考察し、抽象化する。そうすることによって、今までになかったけれども似たような失敗を未然に防ぐことができる。
違和感に気づくことが大事
何か他人の失敗を聴いたら、そこに違和感を覚えて、自分のリスクを想定してみるとよい
さて、この本でなぜ失敗学を脱しようとしているかというと、失敗学が現代の問題に対応できないと考えるからだ。その理由は、科学技術の進化のスピードが速くから。
失敗学とは先に説明した通り、過去の失敗のデータを蓄積して一般化したものだ。しかし、変化が激し過ぎて過去の失敗のデータを参照する意味がなくなった。
では、これからどうやって失敗を回避するか。その方法が違和感に気づくこと、だという。注意を払うことにより違和感(失敗の片鱗)に素早く気づき、自論(仮説)を持つことによって失敗を予防する。この本では、さらに検証まで行うとよいと書かれている。
研究のメゾッドを失敗防止に当てはめているように思える。
11章のQAがいちばんおもしろい
「なぜ人間は同じ失敗を繰り返すのか?」(中略)筆者の答え:似ている失敗を想定できないから。失敗を抽象化して上位概念を抽出できていないから
最後の方に、講演後のよくある質問に答えたもの、というQAが載っている。ここに書かれている内容が端的でわかりやすかった。
内容というよりも書き方の問題なのだけど、この本はただでさえコラムがめちゃくちゃ多いのに、本文もコラムみたいな書きぶりになっている。そのため、何が言いたいのかよくわからない。
ただ、11章は質問に対する答えとして、端的にメッセージが書かれている。私個人の要望としては、ここをもっと膨らませてほしかった。
引用の内容は、ここまで述べてきたことの繰り返しであるが、おそらくもっとも端的に失敗学の内容を表している。まぁ、この本はここから一歩先に進もうという内容なんだけど。いやー、難しかったな。
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