オーディオの塗装に関して

楽器塗料とオーディオに使用する塗料の関係については、まず全く公開された資料もサイトもありません。この17年間仕事の性質上、オーディオに適する塗料についてのお問い合わせと、情報は数多くはありました。
エンクロージャーに塗装するだけではなく、他の部品にも塗装する実験が密かに行われていました。その最も秘密にしていて世間からすると奇妙な手法が「スピーカー・コーン紙に塗装」する方法でした。これについては前置きの後で詳しく説明します。
しかし、これもまた「秘密」の話で試作を以来した方と私の間の口約束ですが、機密保持の道義的な義務がありました。今回公表できるのは、それらの方々が関係する仕事から離れ、また撤退することで秘密保持の義務は無くなったことにあります。

エンクロージャーの要件
スピーカーシステムは駆動する回路の先に、箱にユニットを備えた「エンクロージャー」型スピーカーがあります。これは誰でも知っています。その他音を聴く手段としては、平面バッフルやヘッドホン、イヤホンがあります。
ここでエンクロージャーについて説明します。
1.箱は四角いのが普通です。しかし正解ではありません。要件としては、音を伝える空気が漏れることが最悪で、これだけは防止しなければなりません。従って一枚板を組み合わせて箱を作る方法はあまり使用しません。ベニヤ板の厚い板を組み合わせ、表面に化粧の意味で「突き板」と呼ばれる薄いベニヤを貼ります。ベニヤとは元々薄い板を指します。15世紀ぐらいのヴィオラダガンバの指板もベニヤ貼りです。この手法はベストではありませんが、ベニヤ板と一枚板の音の差は決定的なほどの差はありません。グランドピアノの側面は全てベニヤ板でウレタン塗装という最悪な構造です。
2.四角い楽器が無いのは何故か。スピーカーの箱が四角いのは何故かという話です。
ヴァイオリンの内部構造に平らな平行面と垂直面はほとんどなく、ほとんど局面です。また内部を仕切る補強板(バスバー)やライニング(淵の部分を補強する細い板)の角は全て角が丸く削られています。つまり「平行面と垂直面は作らない」原則があります。スピーカーはそうではありません。多くは四角い外観どおりの構造です。ここは、細工のコストや加工のミスから致命的な音漏れを防ぐ方に集中していると善意には解釈できます。事実を言えば、良くないことを知らないで行っている。としかいえません。
3.塗装は外側ですので(実際は内側も塗装した経験もあり、その製品も見たことがあります。)「美観」が大切にされます。木目を強調したり鏡面にしたり様々な塗装があります。ウレタン塗装は堅牢で美しく簡単に塗装でき工業的には完璧なものです。しかし音に関してはエントロピー弾性を持ち、つまりゴムです。音の伝達には不向きです。位相のずれとその弊害については、以前述べました。私は不幸か幸運かウレタン塗装のヴァイオリンを聴きました。音の悪さは言うまでもありません。2台ありましたがどちらも楽器メーカーとしては世界2大メーカーのそれぞれでした。なぜヴァイオリンの塗料だけが太古の原始的な塗料をそのまま継承していて、今では原料の入手すら難しいかは「音」の質としてその方法しかないからです。

まとめて言いますと。
音の位相のズレは塗料のようなミクロのサイズのズレでもかなり影響するので、塗料の要素は大きいということ。スピーカーの形状は立方体が正解ではないということです。垂直、平行、割り切れる比率で作ってはいけないという楽器の原則を応用したいところです。

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