男と女と会計と
女性と食事したときの会計のやりとりって、柔道の乱取りに近いと思う。
僕もいい大人なので、女の人と食事したときなんかは、「ここは俺が…!」とかやることが多い。
まだ若き10代や20代の前半のころなんかは、「こういうのは男女で平等にした方がいいんじゃないか」とか、「わざわざ奢るなんて、なんか見栄っぽくてやだ!」とか、いろいろ思うことが多かった。
でも30代になると、もうね、そういうことで討論できるほど若くない。
おっさんは社会通念に巻かれるものなのだ(´・ω・`) メンドクセェンダヨ
で、会計のときなんだが。
このとき、さらっと払えると、一本! という感じがする。
相手に有無を言わさず、さっと一瞬で襟首をつかみ、パァン!と音高くきれいに投げて、ダメージを与えずに勝利する。
俺スマート。カッコイイ。そんな感じだ。
「私も払います…」といってくれる人に、サラッ! と躱しつつ一本を取る。これぞ柔道家の本懐というものであろう。
……なのだが、うまくいかないことも多い。
相手の気迫が予想外に強かったりすると、
(奢られると気を遣っちゃっていやなタイプ? そういうタイプにあまり強引にいくのも良くない…でもそうみせかけて儀礼的に言ってるだけかもしれない…どっちだ?)
と、踏み込めずにタイミングを逸してしまう。
これはもう、投げようとしたところを踏みとどまられた、柔道家の気分に近い。
こうなるとやばい。
「いやいや僕の方が歳上なので…!」
「いえいえ、ほんとに…!」
「いやいや、ほんとに…!」
「けど…!」
柔道の試合は泥仕合と化す。
出足払いを決められないと、もうダメだ。
足腰の強い相手に、なかなか次のチャンスはあらわれない。
投げるに投げられず袖を取り合って……
最後はこうなる。
……もうぜえぜえですよ。
絞め落とさせないでくれよ。
たまに若い男女やサラリーマンたちが会計伝票の取り合いをしているのをみると、繰り広げられる熱いファイトに思わず手に汗にぎってしまう。
韓国旅行にいったときにみたサラリーマンたちなんかは、「俺に会計を出させないなら……全力をもって貴様を殺す…ッ!」という気迫が感じられてとてもよかった。気迫大事だよね。
ちなみに最近は編集さんとしか会ってないので、奢ってもらうばかりだ。柔道家はもう引退かもしれない。
全国の柔道家のみなさんの健闘を祈ります。