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サマリー:就活共通テストについて(Futurist note第7回)


イントロダクション

こんにちは、VARIETASのFuturistのRentaです! VARIETASは、構造的な問題によって発生するひとりひとりを取り巻く摩擦(=フリクション)がゼロな社会(=Friction0)を実現することを目指すスタートアップ企業です。Futuristとは、目指すべき未来像を示す未来学者です。
今回は、Futurist note第7回のサマリーです。
今回は第6回で明らかになった平等フィット像を踏まえ、この度VARIETASよりリリースされる「就活共通テスト」との関係について述べるnoteです。

前回のnoteで明らかになった平等フィット像は以下の画像に示されています。

ミメーシスとは、個性を活かして周囲に貢献している人に出会うことで「この人のようになりたい」という選択の方向付けをすることです。これは「自分が取りたい選択が分からない」への解決策です。

自己信頼とは、「自分は何とかなる」という自信のことです。これは周囲からの信頼によって強めることが出来ます。自己信頼は「自分が取りたい選択を取れない」への解決策です。

ビジョンを掲げるとは、個人に特有の欲望が叶ったイメージを掲げ、それを叶えるために社会に参画することです。希少な機会自体を争うことにならないので、個性を実現するチャンスを多く見つけることが出来ます。これは「選択を取れたとしても、機会を得られるか分からない」への解決策です。

他者との出会いがこの3つの解決策に重要な意味を持っています。ミメーシスを引き起こしてくれる人に出会えるか・自分を信頼してくれる他者に出会えるか・自分のビジョンを掲げるきっかけを得られるかということです。
これを担保するためにスモールワールドの実現が大事になってきます。スモールワールドとは、世界中の人は平均6人の知り合いを介して高度に相互連結している現象」のことです。

まとめると、平等フィットとは「各々のビジョンを社会とフィットさせ実現するためのプロセスへの平等なアクセス権」ということです。

これを踏まえて、「就活共通テスト」について見ていきます。

就活における平等フィットと「就活共通テスト」の関係

「就活共通テスト」はスモールワールドを補強する

まずはスモールワールドからです。
「就活共通テスト」はスモールワールドの弱点を補強することが出来ます。
スモールワールドの弱点とは、個人のアイデンティティの種類によっては繋がりの格差がどうしても出てきてしまうということです。
例えば、とある実験では低所得層よりも高所得者層が、黒人よりも白人の方がよりスモールワールドネットワークを享受できたという結果が出ています。1)

就活における対人関係の豊富さとその効果について考えてみましょう。
また、他人とのつながりが多いと個人的達成経験も多くなりがちなので、自己効力感が上昇すると考えられます。これに対して、対人関係が弱いグループではコミュニケーション能力が必然的に下がり、自己効力感も低下すると考えられます。2)
以下の表は就活生のタイプと、就活に対する尺度の関連度(パス係数)を示しています。3)
※自主的勉強と大学の勉強の違いは、前者は大学の課題以外にも専門領域や資格取得のための自主勉強を行うのに対し、後者は大学で成績を残すための学習に専念しているということです。


この表から、「対人交際中心」というタイプが学生に就活に多くのポジティブな影響を与える一方、その他の性質はそこまで正の影響を就活生に与えないことが分かります。

対人関係が得意な人が社会に出て活躍することには何も問題はありません。しかし、企業も学生も互いに最適な相手に出会うために、すべてのタイプを同じ俎上に乗せて評価できる仕組みが必要です。現状の就活制度は統一的な評価基準がなく、早く動いた者勝ちなところがあるからです。
だから、「就活共通テスト」は平等フィットのスモールワールド性を補強する側面があります。
理由は以下の2つです。

  • ESとAI面接で済むので対人関係があまり多くない(人脈が少ない)人でも受験可能である

  • 複数回受けられるので、普段のコミュニケーションが少なくても練度を上げられる

これによって、様々な個性(タイプ)の学生が企業とのマッチングを果たすことが出来るので、思いもよらなかった出会いが発生する可能性があります。

「就活共通テスト」は自己信頼を養う

次に「就活共通テスト」は自己信頼を養う役割があるということを述べていきます。
そもそも就活における自己信頼はどのような構造になっているのか見ておきましょう。自己信頼はリクルートワークス研究所オリジナルの言葉ですが、似た言葉に自己効力があります。


ある研究では自己効力を以下の2つに分けて、就活という文脈で考察しています。

  • 課題特異的自己効力:行動に対して課題や場面に特異的に影響を及ぼす自己効力

  • 特性的自己効力とも:具 体的な個々の課題や状況に依存せずに,より長期的に, より一般化した日常場面における行動に影響する自己 効力

就活における自己効力の構造を表したのが以下の図(数字はパス係数)です。4)


就活前の特性的自己効力(図中のプレ特性的自己効力)は「自分が納得できる進路に進めるという自己効力」(図中の進路選択過程に対する自己効力)と就活後の自己効力(ポスト特性的自己効力)に強い正の影響力を示しています。

また、「自分が納得できる進路に進めるという自己効力」は志望明確化と、就活前の自己効力は就職活動の遂行に正の影響力を与えています。25)
ただし「自分が納得できる進路に進めるという自己効力」は、就職活動の遂行に影響を与えていません。これは、就活はこれまでの学業や受験と異なる環境だからだと考えられます。未知の状況では特定のスキルへの自信よりは、自分は大丈夫だと思える特性的自己効力の方が強い影響力を与えると考えられます。26)

「就活共通テスト」はここに切り込みます。就活における自己効力を高めることによって、就職活動の遂行を後押しすることが出来るのです。これは自己信頼を養うことに繋がります。

上記の通り、就職活動は学業や受験とは異なる未知の環境ですので、自分なりにやっていけるかということが重要になります。

「就活共通テスト」は一人一人のビジョンを作るプロセスとなる

就活において、個々人のビジョンはどのように達成されるのでしょうか?
それを示したのが以下の図です。7)

表中の現実自己は自分の現状を、理想自己はありたい姿(ビジョン)を、現実状況は自分が実際にいる環境の状況を指します。


就活生が理想自己を明確化するには、現実自己・理想自己・現実状況の吟味が必要です。そのためには理想自己と現実自己のギャップの認知・理想自己と現実状況のギャップ認知が必要になります。
同じ調査によると理想自己と現実状況のギャップ認知を行えた学生は54.5%に過ぎず、理想自己と現実状況のギャップ認知から現実状況吟味へのつながりも58.3%ほどです。

ただし、いったんこのギャップが認知されると理想自己・現実自己・現実状況の吟味が起こり理想自己が明確化していきます。8)
「就活共通テスト」は一人一人のビジョンを作るプロセスを担うことで平等フィットに寄与します。「就活共通テスト」は数多くの企業のデータベースをもとに、就活生のESや面接の内容にフィードバックを行うからです。
企業の現実の状況(採用数や人気)や現実自己(客観的に見た自分)を明示してくれるので、ギャップ認知と吟味の機会になります。

結論:「就活共通テスト」は平等フィットを就活において補強する

結論として、「就活共通テスト」は平等フィットを就活において補強することが出来ます。 様々な個性を持った就活生に準備と挑戦を提供することが出来るため、スモールワールドの弱点であるタイプによる偏りを防ぐことが出来ます。

また、複数回の受験が可能であるため就活に対する能力を高め自己信頼を醸成することが出来ます。最後に、客観的なフィードバックを通して個人のビジョンを吟味するきっかけを提供することが出来ます。よって、「就活共通テスト」は平等フィットの諸要素を補ったり醸成したりすることが可能です。

補足しておけば、平等フィットの1要素であるミメーシスは人と人との出会いによって発生するものです。だから、今回の「就活共通テスト」において関与する程度があまりなかったのです。
次回のnoteではミメーシスも含めた「就活共通テスト」の平等フィット的な拡張性について考察していきます。最後までお読みいただきありがとうございました!

参考文献

  1. 浮動点から世界を見つめる 2019 ’ネットワークの構造(2) スモ-ル・ワールド性、クラスター性’ https://shoyo3.hatenablog.com/entry/2019/05/20/193000

  2. 都筑学、宮崎伸一、村井剛、早川みどり、永井暁行、梁晋衡. 2016 大学生活の過ごし方のタイプとその心理的特徴についての検討.

  3. 同3

  4. 佐藤舞.2016.大学生の就職活動および自己効力の縦断的研究

  5. 同4

  6. 同5

  7. 梅 村 祐 子 ・ 金 井 篤 子. 2006. 就職活動 における理想 と現実の統合過程 に関する探索的研究 ― 理 想 自己 と現 実 自己 ・現 実状 況 の関 連 か ら―.

  8. 同7

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