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朝のお茶会


私がまだ幼かった頃、お盆やお正月は親戚、家族みんなで会津にある父方の祖父母の家に集まる習慣があった。


夜になると女性陣が台所に立ち、食事をつくり、男性軍はテレビを見ながらお酒を飲む。

兄は男性軍に混ざりテレビを見ながら笑い、私や従姉妹は台所に立った。


寝る前になるとお風呂に入り、炬燵を囲んでトランプをしたり人生ゲームをしたり笑いの絶えない時間が流れた。


早朝、目がさめると隣の部屋から小さな声が聞こえてきた。
襖を開けると母や祖母、叔母が炬燵を囲んで何やら楽しそうにおしゃべりをしている。
「もう起きたの?こっちへいらっしゃい。」
母がそう言い私を隣に座らせた。
女性陣だけの秘密の集会のようだった。


それではお茶でもしましょうか。
誰かがそういうと、クッキーやお煎餅を棚から出してお茶の準備を始める。
緑茶の日もあれば、紅茶や珈琲の日もあった。
目覚めたばかりの身体にはよく沁みた。

私はこれを朝のお茶会とよんだ。

私は幼い頃、両親が共働きだったせいもあるのか、本を読んだり何か工作していたり絵を描いたり妄想に耽っている時間、一人でいる時間が多かった。そのせいか一緒に遊ぶ友達が少なく、こうしてお茶会を開き誰かとおしゃべりするということが新鮮に感じ高揚感を覚えた。


男性陣が起きてくるとお開きになり、また女性陣は台所に立ち朝食の準備を始める。


祖父が他界し、朝のお茶会はなくなってしまった。しかし、未だに一人で早起きをしてお茶会をすることがある。
珈琲を淹れる日もあればミルクティーやチャイを作ったり、紅茶を飲んだりもする。


窓を開けて、部屋に呼吸をさせて1日を始める。


それではお茶でもしましょうか。

#エッセイ #お茶