レッドアロー号にて

今年初の所沢へ。幼少期から高校生の頃にかけては良く行っていたものの、ここ数年は縁遠いものとなっていた。

今回は西武新宿線で西武新宿駅からのアプローチ。本来は急行で向かう予定だったが、駅に着くと、ちょうどレッドアローが止まっていたので、急遽ホームにて特急券を購入し、乗車した。たまには、特急に乗るのもいいよね?そんな感じだ。

西武線の特急に最後に乗ったのはいつだろうか?クロスシートなので、風景を楽しむにはうってつけだ。いつもなら、読書やスマホで過ごす時間も、今日は風景を楽しむのだ。しかも、進行方向左側。すれ違いがないのがまた良い。そんな相混ざった思いを乗せたまま、そろりと駅を出発。ここから所沢まで30分ほどの特急の旅だ。

駅を出てすぐの光景は、申し訳ないが新鮮味がない。それだけではない。大久保近辺の線路沿いにあるビルの外装がいささかボロい。これぞ雑居ビル、という体をなしている。都市部の風景を楽しめる環境とはほど遠い。
だが、幸運もある。たまたま乗った時間帯は、特急きぬがわ号の走る時間帯と重なっていたのだ。特徴的な赤い色、そして、何となく「有料特急」感のない前面。双方定時運行中とはいえ、ちょっとレアなものを見つけた気分だ。

高田馬場を出れば、早速ハイライト。急勾配&急カーブのコンビネーションだ。小さい頃は窓側から前または後ろに車両が見える光景を楽しんだ。懐かしい気分になる。ここから鷺宮付近までは先行する各駅停車との間隔を調整しながらの、ゆっくりとした走行だ。だが、ここもあまり見どころはない。線路の目の前まで迫りくる家、そして、野方~中井間の地下化工事による囲い。仕方ない。そして、この風景も将来地下化されてしまえば見られなくなる。ある意味貴重な光景だ。ゆっくり堪能するのみである。

都立家政を通過する頃からペースアップした。各停が次の鷺ノ宮に到着したのだろう。東村山までの高速巡幸の始まりだ。

上石神井に近づくと、旧2000系らしき車両が止まっている。方向幕が回転式だ。懐かしい。幼い頃、終着駅でこれの回転が止まるまで眺め続けていたのを思い出す。そして、現代は味気なく一瞬で変わってしまう行先がころころ変わる。それも、「こんな行先あるの?」「急行の終着駅はそこなの?」とツッコみたくなるような行先なんかもある。もはや記憶のかなたの存在なので、具体的な行先は覚えていない。だが、「次はどんな行先が出てくるのだろう?」というワクワク感は今でも忘れられない。それに比べると、電光掲示板の一瞬で変わる行先はなんと味気ないことか。

東伏見の大鳥居、西武柳沢(都バスでの最長路線「梅70」の終点だった)、田無駅南口のちょっとばかりごちゃっとした雰囲気。。。どれも懐かしいような初めて見るような光景だ。西武新宿線は何度も利用していたので、車窓から見たことあるはずなのだが。文字通りの「記憶にございません」だ。

そうこうしているうちに花小金井を過ぎる。ここから先、小平駅付近までは玉川上水沿いに広がる農園と公園の風景が楽しめる。一昔前に祖父が昭和病院に入院していた時に行ったことがあるが、なかなかにいい場所だ。この近くにはおいしい店も多い。いつか、玉川上水散策ついでに色々と寄ってみるのもいいかもしれない、そんなことを思っているうちに小平を通過。ここで西武拝島線と分岐する。拝島線はここから小川を過ぎるまで、急カーブの連続だ。キーキーという音を立てながら、ゆっくりとした速度で走る光景を思い出す。よくもまあ、この狭苦しい所に線路を引いたものだとつくづく思わされる。

東村山につく。この駅は利用していた頃と比べると大きく変わった。そして、また更なる変化を遂げようとしている。駅前のボウリング場にも何度も行った。自宅から自転車で行き、付近を散策したこともある。その思い出の風景は見る影もない、とまでは行かないが、相当に変化してしまっている。ミスチルの「ランニングハイ」の一節を思い出す。「…まぁ それもそうだなぁ」

所沢着。祖父母の家があるので、幼い頃から利用しているが、この駅の変化も著しい。西口から伸びていた路地はいずこへ?というレベルで再開発が進んでいる。もっとレトロな感じだったはずなのだが、もはや昔の話。その街並みの雰囲気はプロぺ通りや有楽町付近に残るのみ。そこも店はがらりと変わってしまった。友人らのなじみのゲーセンが残っていたり、かつて何度もおやつに買ってくれた団子屋、泳げるようになったスイミングスクール、まだまだ残っているが、そこもいつまで残っているのやら。だが、育ててくれた景色が金に変わっていく中でも、残っているものがある。そして、そこに懐かしさを感じられる。いつ来ても所沢は好きな街だ。

思い出話というデジタルタトゥーを残しながら書き記していたら、すでに2000字ほど。今回はそろそろお開きにしよう。

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