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もしも転生して、「やりたいことがみつからない学生」に生まれ変わったら

20XX年、シュークリーム食べすぎて死ぬ

あっけなく死んで、ある日気づいたらスライムになっていたり、賢者になっていたりするのが転生シリーズの定番だ。


私はというと、「やりたいことが見つからない学生」になっていた。そしてやりたいことが見つからない人のまわりには、やりたいことがみつからない人が集まるものである。

みんなやりたいことがわからないとヒステリックになっていたが、前世で転職エージェントだった私は冷静だった。



第1章 「世の中は人が不足しているのではない」

Youtube、Instagramなど、SNSの世界では「やりたいことを見つけた人が勝ち組」かのような雰囲気を醸し出しているが、それは人生の一部であり、人生の全てではないことを私は悟っていた。もっと言うなら、企業は「やりたいことができる人」が欲しいのではなく、「使える人」が欲しいのだ。

前世で転職エージェントとして働いている際に上司から言われたことを、私は思い出した。

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上司
「2030年には労働人口が7000万から6400万に減少するが、転職で困る人たちは今以上に増えていくだろう。なぜだかわかるか?」


「完全な売り手市場になるので、困る企業は増えても、困る人は減少になるのでは?」

上司
「表面上はそうなるだろうな。しかしよく考えてみろ。人が足りなくなると言うことは労働生産性の課題が浮き彫りになるので、企業は今まで以上の労働生産性を意識して採用を行うことになる。そうすると企業の求める労働生産性基準をクリアできる人数は限られているので、ある一定の人間に需要が集中するんだ」


「確かに労働生産性は今以上に必要ですね」

上司
「そうだ。この世界は人が足りないのでなく、労働生産性をクリアして役割を果たすプロフェッショナルが不足しているんだ」

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私は知っていた。
世の中は「やりたいことがみつかっている人」が欲しいのではなく、「労働生産性をクリアして役割を果たすプロフェッショナル」が欲しいことを。



第2章 「やりたいことだから生産性が上がるのか?」

私の周りの「やりたいことが見つからない学生たち」はやりたいことの抽象度を上げることで自分の目指すべき方向性を決めていた。

・ワクワクすることに関わりたい
・なんかスポーツに関わりたい
・ゲームに関わりたい

など、人生の中でワクワクする瞬間と仕事を結びつけたいらしい。そして就職活動においては、そういったワクワクするようなことをやってる企業を中心に説明会に参加していた。学生時代にそんな大した努力もしていないのに、求めることだけは一人前だな、、、と冷ややかな目で私はそういった学生たちをみていた。

彼らの根本にある哲学はシンプルだ。
「好きなものじゃなきゃ頑張れない」
(好きなことに関わるからこそ、労働生産性も自然に上がっていく)


人生2週目の私は彼らと異なる哲学を持っていた。
「好きになるには努力が必要だ」


ラグビーのルールも知らないのに試合をみても、私には「ゴリラが動物園で戦っているだけ」にしか見えない。だけどルールを知るために時間を費やせば、同じラグビーでも景色が変わることを知っている。もっといえば、選手を知ったり、相手チームを知ったりすることでラグビーは面白さを増していく。好きになるには努力が必要だ。

余談ではあるが、海外留学に行った際に「日本文化」がテーマとなり相撲の動画を授業中にみることがあった。何も知らない外人たちは「デブが抱き合っている」と笑っていた。彼らにはその程度のレベルで楽しむぐらいの知識しかなかったからだ。


やりたいことがみつからないのではなく、好きになる努力が足りないだけ。そう言い聞かせて就職活動に集中することを決断した。


第3章 「問題を愛するということ」

私が密かに好意を抱いている奥野さんは、大手という理由で「TOYOTA」を志望しているが、自動車に興味がないので、どうしたら自動車を好きになれるかで悩んでいた。前世で女子がランチ中に、弱っている時に優しくされると好きになっちゃうよね〜と話していたことを私は思い出した。

悩める美女、奥野さんに私は金言をウインク付きでプレゼント。
「名詞を好きになるのではなく、動詞を好きになれるといいよ」

しかし人生1週目の奥野さんに私のアドバイスが届くことはなく、「こいついきなり何いってんだ?」みたいな顔をされる。脳内で私をやばいやつリストに登録した奥野さんは、そのまま走って逃げ出した。どんどん小さくなっていく奥野さんをみながら、恋愛よりも就活に集中しようと覚悟を決めた。


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「名詞を好きになるのではなく、動詞を好きになる」
〜転生した彼が、伝えたかったこと〜

自動車の役割変化について考える
時代によって自動車の役割は変わっていくが、その背景を知ることで自動車業界で働くことの面白さに気づける。

<自動車の役割変化例>
・馬よりはやく、目的地まで辿り着けること
・安心・安全に目的地まで辿り着けること
・人だけでなく、モノを目的地まで届ける
・ファッションのような機能を持ち、目的地まで辿り着く
・燃費よく、目的地まで辿り着ける
・環境に配慮して、目的地まで辿り着く
・運転手の人的ミスを減らして目的地まで辿り着く

自動車が普及する前は馬で人が移動していたわけだが、馬が1日に進める距離は約50〜60キロ程度だと言われている。自動車が発明されなかったことを考えてみてほしい。仮に日本では自動車が普及せず馬だった場合は、他国と比較して経済的にどのような影響があったのか? を考えてみてほしい。

・日本からコンビニという産業が消える
(ないしは、コンビニからお弁当が消える)
・日本にくる観光客が減る
(単純に交通が不便なので)
・AmazonのようなEC事業を展開できない

こう考えると、物や人が動くスピードが高まることが、どれだけ社会にインパクトを与えているかを改めて気づけるのではないだろうか。そして仕事を通じてこういった社会的インパクトを創造した人がいることを考えると、ワクワクしないだろうか。


上記の自動車の社会的ニーズの変化に対して、どのように生産体制を構築して供給ラインを整えてきたのかも自動車業界の面白さである。


今の「当たり前」に至るまでには、どのような問題があり、どのように解決してきたのか? そして未来にはどのような問題があり、新たな世代としてどのように解決していくべきなのか? 自動車(名詞)を好きになるのではなく、自動車の社会的役割を考え、現在と未来のギャップに存在する課題(動詞)を好きになれることの重要性に気づいてもらえたら嬉しい。

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転生した私が自動車業界を受けるなら「EV」というホットワードを軸にしながら、今後どのような戦略を自動車メーカーとしてとっていくのかを調べてから選考を受けるだろう。

【動詞を好きになるために、何を調べるのか?】
・世界のEV普及率および未来予想
・なぜEVが注目されているのか?
・EV普及率が高まることによる、サプライヤー需要の変化
(エンジンやトランスミッションが不要となり、モーターとバッテリーの需要が高まる。ガソリン車からEVにシフトする際の部品数の変化)
・発電電力量構成比と排出について
(電気を生み出す際の、CO2排出量)
・EVのサプライチェーンは赤字だが、黒字化する上で必要なのは?
(テスラのようなトップ層を対象とする場合は別)

上記のような最低限の自動車業界における知識を入れることで生まれる、自分の「新たな問い(生まれる興味)」を大切にする。


きっと人生2週目なら、こんな風に就活と向き合うのだろう。(現実的にできるかどうかは別として)

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