海外の自動車部品メーカー5社の技術を俯瞰的に比較する
VALUENEXで技術動向調査を担当している堀下です。
今回は、海外の自動車部品メーカー5社の特許情報を用いた俯瞰解析の事例をご紹介します。
なお、この内容は2022年11月に実施された特許情報フェアでの発表を再編したものとなります。
分析対象の企業について
この事例では、海外の主要な自動車部品メーカーであるBOSCH、Continental、MAGNA、Valeo、ZFの5社がそれぞれ権利を保有している特許を分析対象とします。
まず初めに、VALUENEXが提携しているPatSnap社の特許データベースを使って各社の特許をグループ傘下の企業まで含めて検索・取得し、若干のスクリーニングを行った上で、分析対象として約5万件(特許ファミリー単位)の特許データを整理しました。
なお、各企業の件数割合は下記の通り、BOSCHが半数以上と多くを占めています。
全体像を俯瞰する
この5社・5万件の特許データをVALUENEX独自のアルゴリズムに基づき一枚絵に可視化した技術俯瞰図がこちらになります。
ご覧の通り、ブレーキ、燃料供給、変速機、バッテリー、空調、車載ライト、ワイパーなど、自動車を構成する代表的な部位で分布する構図になっています。
加えて、通信やセンサー機器、生活家電なども今回の母集団に多く含まれていることがわかります。
特許価値を加重してみる
また、PatSnapの特許データベースでは各特許に"Patent Valuation"という独自算出の特許価値情報を有しています。
その評価値を用いて、先ほどの俯瞰図を件数×価値による加重ヒートマップにしてみました。
最初に示した件数密度ベースの図と比較して、特にブレーキやバッテリーといった技術領域で総合的な特許価値が高いことが推察できます。
各社の技術構図の違いをみる
次に、各社ごとにフィルタリングした図を用いて、技術分布の違いを見てみましょう。(これは件数密度ベースの図となります)
BOSCH
BOSCHはブレーキ、燃料供給、バッテリーの技術領域が特に目立ち、生活家電や電動工具も領域にも集中が見られます。
Continental
Continentalはタイヤメーカーとしての位置づけが明確に現れていますが、一方で燃料供給などエンジン周りの技術集中も目立っています。
Valeo
Valeoは車載ライトや空調・熱交換機の技術領域が特に目立ち、その他の箇所も広く分野横断的に技術集中が連なる構図となっています。
ZF
ZFは、上述の3社とは対照的に、変速機とその周辺に注力箇所が固まっています。自社の得意分野に集中する傾向がうかがえます。
MAGNA
MAGNAは他の4社と比較して件数が少ないですが、車載ミラー・カメラの技術領域などで集中が見られます。
各社のポジショニングをみる
続いて、俯瞰図上の「どの箇所でどの企業が最も強いか」を示す勢力図表現にて、各社の技術的な位置づけを見てみましょう。
1枚目は件数密度ベースで算定した勢力図となります。
2枚目はPatSnapの特許価値を加重して算定した勢力図です。
こうしてみると、件数の多さゆえにBOSCHの優位な箇所が目立ちますが、件数が比較的少ない企業も局地的に優位な技術領域が存在し、各社とも得意分野の住み分けがされていると考えられます。
また、特許価値で評価するとContinentalの優位性が燃料供給・排気ガス処理といったエンジン周りの技術で目立つことも注目に値します。
議論と検証の必要性
競合企業に対してBOSCHはどの部分を強化して優位性を高めていくのか、そして他社はどのように自身のポジションを守り拡大していくのか、といった点が気になるところですが、今回の分析では踏み込んだ考察まで行っていません。
分析の解像度を更に高めるには、こうした俯瞰的な情報を土台としつつ、関連業界の方々が持つ専門的な知見も交えた議論・検証を進めることが肝要と考えています。
この事例では自動車部品メーカー、いわゆるTier1企業を対象にしましたが、VALUENEXでは様々なテーマ・業界を対象に技術動向調査を行っておりますので、こうした分析や議論にご関心がある方は是非お知らせください。
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