シンジケートローン 担保付ローン編3

前回は普通担保と根担保ということでシンジケートローンでなくても関係あるところでしたが、今回は「同順位(どうじゅんい)」と「準共有(じゅんきょうゆう)」というお話をします。

どんなお話か

どういうお話かと言うと、シンジケートローンでは貸付人が複数いるですからその複数いる貸付人、複数ある被担保債権のために、どの担保を付けるのか、どう平等に担保を付けるのかというお話です。これが同順位と準共有というお話になってきます。

複数の貸付人のために担保権を設定し、しかもその一つ一つが平等でないといけないですよね。どうするかというと実務上二つの方法があって、同順位と準共有と言うのが使われています。

同順位とは

同順位というのは何かと言うと各担保権者がそれぞれ別々に第一順位の担保権を持つんです。例えば、「レンダーAとBとCと借入人がいて、それぞれ貸付債権があります、借入人は不動産を一つだけ持っています」というときを考えてみます。

同順位はどうするかというと、Aはこの債権を担保する時に抵当権を付けます。Bもこの債権を担保するために抵当権の設定を受けます。Cも自分の持っている債権を担保するために抵当権の設定を受けます。それぞれ抵当権は順位を付けられますけど、第一順位で抵当権を付けます。これが同順位です。

つまり、同順位では同じ目的物に同じ順位の担保権が貸付人の数だけ設定されている状態となっています。これはローン自体は別個独立なので、そして抵当権も別個独立なので、これをせいので実行して実行手取金(じっこうてどりきん)を分けようねというためには、別途「担保権者間協定書」が要ります。

失期が一遍に起こったとしても、次の担保実行も一遍にやらないと皆で仲良く分けられません。そのため、皆で例えば「担保権者のケツが取れたら、皆で担保実行しましょう、担保実行の手続きはエージェントにお任せしようね」とか、担保権者間協定書を巻くことによって担保の実行とか担保権者間の平等が確保されます。

準共有とは

上記が同順位です。準共有は、Aも貸付契約があり、Bも貸付契約があり、Cも貸付契約があるときに、みんなで担保を一つだけ持つんです。これを皆で共有する。そういう風にするものが準共有です。同順位の場合には貸付人の数だけ持って皆同順位でしたけど、準共有は一つだけしかない担保権を皆で共有します。

民法で「共有」と言うのは、物について共有というのがあるんですけど、物じゃない、単なる権利の場合には準共有と言う言葉が使われます。考え方は同じです。

準共有された担保権の実行には法律上当然に準共有者全員の同意が必要と考えられています。その範囲では確保されるんですけど、そうすると今度は多数決で決めたらいいということにはならないので結局債権者間協定書をとっておいて、こういう場合には担保実行しようよという合意することになります。

どんな担保権を設定できるのか

じゃあ、あと、どんな担保権を設定出来るのかと言う話をちょっとしたいと思います。

不動産の場合

まず、不動産の場合には普通、「抵当権か根抵当権」を使います。対抗要件は登記です。

金銭債権の場合

金銭債権、売掛債権とかそういうものは質権か譲渡担保権です。どっちもありうるんですが、預金だったら質権ですかね。売掛だったら譲渡担保権が多い気がします。金銭債権の場合には対抗要件は通知書だけ。通知の場合には、要は担保設定者が確定日付がある通知書を送付して、承諾書を貰います。あるいは債権譲渡登記という方法で対抗します。債務者に対して知られたくないものであれば債権譲渡登記をやります。内緒でやれるのがメリットです。預金だと譲渡禁止が付いているので難しいのですが、売掛債権であれば債権譲渡登記も可能です。

動産の場合

あとは動産だと譲渡担保権にするのが普通です。質権にはしません。なんでかというと動産の質権というのは質権者がその動産を占有しないといけなくて、質権の設定者が第一占有できないんです。それだと無効になっちゃいます。機械設備だと出来ないじゃないですか。借入人のもとにないといけないので。譲渡担保にした上で占有が対抗要件なので占有改定とか指図をして占有を移します。占有改定というのは、担保権の設定者が元々持っているものについて、これからは担保権者のために保管しますということが占有改定です。

同順位と準共有をどう使い分けるのか

先程の同順位とか準共有をどっちにするかというのは、ルールがありまして、抵当権の場合、同順位にします。実は準共有って登記を受け付けてくれないので、設定の段階ではできないんです。

法務局が受け付けてくれない理由は、被担保債権、このローン契約の債権の持主と担保権の持主は一緒でないといけないので。「準共有にすると担保権の持主はその人のものだけにならないからです」と言うような感じで、最初の設定の段階でこうすると受け付けてくれないんです。

と言うような感じで、話しだすと切りがないので、この話をすると、もう基礎ではなくなってしまうものですから、ここから先は個別に勉強して頂くなりいただいたほうがいいかなと思います。

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