シンジケートローン契約の解説編1

今回のシリーズは、ローン契約が読めるようになるのが最終目標です。ここではシンジケートローン契約を取り扱っていますが、これはローン契約よりもシンジケートローン契約の方が難解なためです。

これまでローン契約の説明に入らせていただく前に、概要編としてシンジケートローンの考え方を3つの角度から説明しました。

概要編1: 概観を掴む
https://note.com/valuation/n/n0db761d1f89e
概要編2: 普通のローンとの違いを理解する
https://note.com/valuation/n/nbefb7eb414d8
概要編3: シンジケートローンの登場人物を知る
https://note.com/valuation/n/nbefb7eb414d8

ここからは、契約の解説編として、イメージを掴んでいただいた方を対象にシンジケートローンの契約解説を行います。

勉強で得られる効果

JSLAが公表するシンジケートローン契約の雛型が読めるようになる
融資契約書が得意になる

シンジケートローン契約の基本構造

それでは、シンジケートローン契約の解説に入ります。どういう形で契約書が作成されているかをお伝えします。まずシンジケートローン契約の基本構造ということでお話しします。ざっくり、シンジケートローン契約は何を書いてあるでしょうかということです。

概要編ではシンジケートローンの標準雛型がJSLAという協会から公表されているとお話ししました。以下のURLはコミットメントライン契約の雛型です。
https://www.jsla.org/file_dl.php?filename=3120190626125732.doc

シンジケートローンは複数の貸付人がいてそれぞれがお金を貸すわけなんですけど、シンジケートローン契約の中で定められている内容の一つ大事なことは、それぞれの貸付人と借入人の間の関係を規律する金銭消費貸借契約としての性質があるという点です

これは当たり前ですよね。ローン契約なんですから。ローン契約は法律上の金銭消費貸借契約そのものです。つまり、各貸付人と借入人との間で一つ一つ独立した金銭消費貸借契約としての性質を持っているということです。これを個別独立と言います。

金銭消費貸借契約としての性格を持っている他に、シンジケートローン契約の大きな性質は、貸付人と借入人との関係だけではなくて、貸付人同士の関係を規律する契約でもあるということです。つまり、つまり債権者間契約としての性格も持っているという点です。

金銭消費貸借はお金を貸しました/返しますという契約です。それだけなんですけども、ここに、貸付人の間の規律が加わるということなんです。

概要編のおさらい

概要編ではシンジケートローンは貸付人間の公平・平等公平を担保するということを説明してきました。これを実現する為に貸付人相互の規律も決められていうことなんです。これがシンジケートローン契約の大きな特徴です。原則は貸付人ごとに権利行使は個別独立としながらも、貸付人間の公平性への配慮から修正を加えるということです。

JSLAの標準雛型を見てみる

先程ご案内したURLをアクセスし見ていただいて、コミットライン契約の2条をご覧ください。

貸付人の権利義務のところに、(2)とか(3)をご覧になると分かるんですけども、権利ついても義務に付いても個別かつ独立と書いてあります。

原則はあくまで各貸付人はそれぞれ一つの独立した金銭消費貸借ですので、ここだけ見たら個別独立なんですが、一方でお互いの平等を図るために契約書のあちこちで色んな修正が加わっているんです。スローガンだけは個別独立という風に理解していただいて結構です。

例えば、貸付条件は同一でなければいけないとか、あるいは意思決定については全貸付人のコンセンサスが取れないと駄目ですよといった規定が入っています。あるいは、多数決で決めますとか、借入人からの返済金が足らなかった場合にもエージェントが平等に分けますといった規定が入っているんですね。そういった色んな形で貸付人間の平等を図るため、公平性の観点からの修正が加えられているです。

まとめ

・シンジケートローン契約は縦の関係と横の関係を規律する配慮がある
・縦の関係は、金銭消費貸借契約としての性格
・横の関係は、貸付人の関係を決める、債権者間契約としての性格

次回も契約解説編としてJSLAの雛型を深堀していきます。



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