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新パッチ・フェイド登場後のVCT Japan Stage 2でのメタはどう変化したか?データを用いて北米・EMEAと比較

先日書いた以下の記事ではMastersを経て日本・北米でどのようにメタが変化したかを見ました。Masters後はチェンバー・KAY/Oメタの傾向が特に日本で鮮明に現れ、ネオンやキルジョイの運用などに日米で差が出ました。

https://note.com/valorant/n/n0459e0220cb6

その後パッチ4.08でフェイドの追加、4.09でチェンバーのナーフなどが加わりましたが、どう変化したのでしょうか?

まずはマップ・エージェントごとの勝率とピック率を見てみます。新エージェントのフェイドは、日本地域ではすでにかなりピック率の高いエージェントとなっています。特にアイスボックスとスプリットでは勝率が高い一方で、ブリーズとフラクチャーでは低い勝率です。チェンバーは完全にメタキャラとなったため勝率も落ち着いてます。

日本

以下の図は現在進行中のEMEAと北米で同様の図を作ったものです。まず、フェイドはアセントとヘイヴンで共通して使われています。この図には計上していませんが、韓国のDRXもDK戦でアセント・ヘイヴンでフェイドを使ってエリア取りをうまく進めていました。相変わらず北米はヘイヴンでキルジョイを使いませんね。

EMEA
北米

次に、もう少し情報を丸めて「各エージェントがどのぐらい勝利に貢献しているか」をざっくりと見ていきます。次のグラフは日本のStage 2のデータから、各エージェントのピックとラウンド数の差との関係を探ったものです。正の方向に高ければ高いほど、そのエージェントのピックが勝利に貢献していることになり、0だと無関係、負の方向に高いと敗北に繋がる傾向が高いことになります。

上のグラフを見るとブリム、レイナ、ネオンがかなり高くなっており、サイファーとアストラは非常に低くなっています(一番右は無視してください)。確かにひとつ前の図を見てみると、これらのキャラはピックされたマップでの勝利傾向/敗北傾向が高いことがわかります。

一方でこのグラフをみるときに注意が必要なのは、この数値は頻繁にピックされているエージェントほど0、つまりラウンド差との関係が無くなるということです。これは例えば、「全マップ全チームがジェットをピックする」ような極端な場合を考えるとわかります。そのような場合、勝者も敗者も必ずジェットをピックしているので、上の方式で計算した勝利への貢献度は必ず0になるからです。

これでは面白くない(?)ので、次に、グラフを作るモチベーションを少し変えて、「他のエージェントの成績を固定した場合に、あるエージェントの成果がどれだけ勝利に貢献するか?」という指標を考えることにしてみます。この問題であれば、仮に全チームが全マップでジェットをピックしているような極端な場合だとしても、成績は必ず異なるので、上で生じた問題は起きません。

以下のグラフは、実際に上のような指標を可視化してみたものです。作り方についてはグラフの後に簡単に記載しますが、このグラフは横軸に"そのエージェントのKASTが"勝利に貢献する度合いを表しています。ヴァイパー、KAY/O、スカイ、ブリーチ、チェンバーといったエージェントが最も高く、レイナが最も低くなっています(ヨルとフェニックスは忘れてください)。すなわち、チェンバーの活躍は他のエージェントと無関係に勝利に貢献し、レイナがいくら活躍してもあまり勝利に貢献していない結果を示します。


上ではKASTのみについてグラフを作りましたが、これはKASTが指標として最も有用だったからです。ADRとFKについてまとめたものは以下のグラフとなりますが、FKだとジェット、チェンバーが上位に登場します。これはすなわち両エージェントのワンピック能力が、その他の要因とは独立に勝利に貢献するということですが、一方でその価値はヴァイパーのKASTの5分の1程度です。


この結果をどう解釈すればいいでしょうか?あり得ない話ではありますが、仮にチームメンバー5名全員が、個々人の平均的な実力は違う一方で、全エージェントが同じぐらいに得意な万能型プレイヤーだったとしましょう。その場合、一番平均的に上手なメンバーをヴァイパーに、次をKAY/Oに、次をスカイ・ブリーチ・チェンバーに、、、と割り当てていくのが最適ということを示しています。

上のグラフと同じことを北米のデータで作ってみたらどうなったかというと、以下の図のようにチェンバーが圧倒的な結果となりました。一方で、ここでもヴァイパーが登場しているので、筋肉コントローラーメタと言われている状況はあながち間違いではないという気がします。


作り方について説明する前に1点だけ重要な注意点ですが、上の説明以外のもう一つの説明として、「エージェントの実力差は実はそんなにないが、各チームがヴァイパーにたまたま実力者を割り当てていた」場合も当てはまります。なので、隠れた強エージェントが今後見つかる可能性(ヨルとかフェニックスとか・・・)はあるかと思います。

最後に簡単に作り方について説明します。少し統計的な話が入るので、退屈な人はここまでで。

まず、全試合のデータを用意した後に、各試合について全エージェント・マッチの各指標(キル、デス、アシスト、HS%、KASTなど)との交互作用項のデータを作り、これを説明変数とします。次に、そのマッチのラウンド数の差を符号付きでチームごとに被説明変数として用意します。すなわち、1サンプルは5エージェント分の1ゲームの結果となります。結果として、各試合の各マップごとに2サンプル(2チーム分)が得られることになり、これを全試合連結してデータセットとします。最後に、それらを用いてランダムフォレストを行い、そのモデルを対象にeli5を用いてパーミュテーションインポータンスを計算しました。(文字で書くとややこしいですが、Colab上だととても短いコードです)。上のグラフではまずKASTとの交互作用項の重要度のみを載せていますが、その他の指標よりも基本的にKASTの方が説明力が圧倒的に高かったです。


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